マツクイムシ病って知ってますか?
マツクイムシ病はマツを枯らすほど非常に強い被害をもたらす線虫がひきおこす病気で、北海道を除くほぼ全国的に、しかも暖かい地域ほど多く発生しています。
ここではマツクイムシ病の被害が地理的にどのように移り変わってきているのかお伝えします。
マツクイムシ病の被害が南に多い理由
「マツクイムシ病」は、「マツノマダラカミキリ」が「マツノザイセンチュウという線虫」をマツに運んで衰弱させ枯死させる強い伝染病です。
マツクイムシ病の被害が南の地域ほど多いのですが、それははなぜだと思います?
過去からの色々な資料を見ても、南の地域ほどマツノザイセンチュウによる被害は多いようですが、これはマツノザイセンチュウが高温で少雨の気候を好む性質にあるからです。
たとえば、高温で少雨の年はマツクイムシ病の被害が多く、逆に低温で多雨の場合は被害が少ないという研究結果あります。
そのため、南の地域ほど多大な被害が発生する傾向が強いです。
マツクイムシ病の被害が北ほど少ない理由
マツクイムシ病はマツノザイセンチュウが引き起こしますが、南の地域では「マツノマダラカミキリ」が1年目で羽化して「マツノザイセンチュウ」を運んで被害が発生する1齢型の形をとります。
しかし、北の地域では「マツノマダラカミキリ」の性質上、1年目で羽化しないで2年目で羽化する2齢型を取る場合もあります。
なので、北の地域では1年で大きな被害が現れるというわけではなく、2年越しで被害が現れる場合もあるということです。
そのようなこともあり、北の地域では被害率が低く抑えられているのかもしれませんね。
これはマツノザイセンチュウの性質が南ほど活動的で、北の寒い地域の気候にやや向いていないことことも伺えます。
マツクイムシ病の被害が北に移動してきた理由
マツノザイセンチュウが引き起こす被害が、年々確実に北の地域にも広がってきていて、今では本州の北限である青森や秋田まで被害が進行してきています。
なぜ北の地域まで被害が進んできているのでしょう?
その理由として、地球温暖化の影響と関係しており、北の地域の気候が南の地域の気候に近づいてきたことによると考えられます。
北の地域でも猛暑日と呼ばれる35度以上の日の割合が増えてきていることからも、マツクイムシ病は温暖化の影響が一番強いと考えられ、年々北へ北へと北上し被害を拡大してきています。
併せて、南の地域において被害を起こすマツの数が少なくなってきていることもあり、北に被害が移動してきていることも考えられるかもしれません。
マツクイムシ病が起こる時期はいつか?
マツクイムシ病によりマツが枯れる被害はいつでも起こるというわけではありません。
マツが枯れるまでの経緯として、まず枯れたマツに卵として潜んでいた「マツノマダラカミキリ」が羽化します。
そして「マツノザイセンチュウ」を被害を予定しているマツまで飛散して運びます。
「マツノマダラカミキリ」が飛散先のマツの新葉を食べると「マツノザイセンチュウ」がその噛んだ傷痕からマツの樹体内に侵入し、マツを侵すことでマツクイムシ病はおこり枯れていきます。
被害が発生する時期としては、マツノマダラカミキリが被害木のマツから羽化し飛び立つのが6月~7月頃なので、羽化後の7月8月頃から、地域によっては10月頃まで被害発生が続くと考えられます。
以上のように、マツクイムシ病の被害は以前は南の地域に被害が多かったですが、被害木のマツの減少と地球温暖化の影響により、北の地域に被害が移動してきている傾向にあります。
マツクイムシ病の観察
実は現在マツクイムシ病であるかもしれない被害木のマツを観察しています。
この「観察マツ」は8月頃に枝の一部が枯れはじめ徐々に1本づつ枯れていき、全部の枝ではありませんが数本の枝が枯れました。
私はマツクイムシ病を疑い観察を続けてます。
数か月後の1月に久々に現地に訪れてみました。
すると、、、
「観察マツ」には「マツノマダラカミキリ」による産卵根が見つかりましたが、このマツの枝葉は当時のまま数本枯れているだけです。
いわゆる、北の地域でおこる「マツノマダラカミキリ」の、1年目で羽化せず、2年目で羽化する「2齢型」を取る性質を確認するための観察です。
周辺のマツの状況は、マツクイムシ病による被害木が50mほど西側に10本程度あり放置されてあります。
「観察マツ」の西側10mにマツクイムシ病による被害木(全枯放置)が半年前までありましたが、いつの間にか伐採されていました。
伐採されたマツの処分はどうしたのかは不明です。
今回の「観察マツ」がマツクイムシ病であるのなら、おそらくこの被害マツからの侵入によるものかもしれません。
来年まで「観察マツ」がどのように変わっていくのか経過観察したいと思います。