
松の剪定作業は暖かい時にだけ行うものではありません。
冬支度として、来年の新芽の樹勢を助けるために冬にも作業を行わなければいけません。
ここでは冬に行なう「もみあげ」という松の剪定作業の具体的な方法についてわかりやすく説明します。
松のもみあげとはなにか?
松(マツ)の手入れで行う「もみあげ」という作業は、特に冬期に実施される松の手入れの一環です。
松の葉っぱは冬になると赤く枯れます。
放っておいてもいつかひとりでに落ちることはありますが、全て落ち切るという訳ではありません。
いつかひとりでに落ちるわけなのですが、下にあるどこかの枝に引っかかることが多いです。
いつも溜まるところはだいたい同じところになります。そうすると、松の芽が古葉に覆われてしまい、日が当たらずに通風が悪くなり、しだいに芽が枯れてしまいます。
しかもいつまでも枯れた古葉を放っておくと、だんだんと枯れ葉が湿ってそこから落ちにくくなります。
すると病害虫の溜まり場となってしまい、芽が枯れることでさらに樹勢も悪くなります。
そのようになる前に、冬に行なう松の剪定作業として、「もみあげ」といって、古くなった葉や不要な葉を取り除く作業を行ないます。
もみあげを行なうことで古い葉を除去でき、葉数が減ることで密集する部分が少なくなり、松全体がスッキリときれいに見えるようになります。
冬の松の「もみあげ」で一番ベストな剪定時期
このもみあげという作業は松の生育には意外と重要です。
もみあげの作業は、基本的には寒くなりかけたころの時期に、または葉が赤くなり枯れ始めたと思ったら行なうようにするとよいです。
「もみあげ」を行なう具体的な時期としては、地域にもよりますが、11月頃からが2月頃が良いです。
ただし、一般的な庭師さんは、頼まれたとき以外は、冬に特別時間を作ってもみあげだけを行なうという事はしないと思います。
なぜなら、夏でも秋でも、もみあげを同時に行ないながら剪定作業を行うからです。
一般的な書籍にはもみあげを行なう季節は冬間近のころと書かれているかもしれません。
でも、そんなことをしていたら、庭師さんは
・みどりつみ(新芽摘み)
・通常の剪定作業
・もみあげ
と、3回もお客様のところに出向いて作業しなければいけません。
その分の料金をいただければ問題はないのですが、普通はお客様もそんなことを考えてはいません。
1度で済ませてほしいわけです。
「みどりつみ」だの「もみあげ」と型にはまったことが書籍には書かれるので、何も知らずにそれを見た素人の方はそれらを「基本に忠実に行わなくてはいけない!」と思ってしまうのでしょうね。
でも、全然そんなことはありませんよ!
仕上がりが良くて、樹勢が良ければ問題はないのです。
逆に仕上がりが悪くて、樹勢も悪ければ問題ですが・・・
人生の時間は短いので、松の手入れに年3回も手を加えないで、なるべくなら、年1回で済ませる方法がよくないですか?
こちらのページでは、年1回で済ませる剪定方法について詳しく解説しておりますので参考にされてみて下さい。
松の剪定!1年を通した作業方法
↓ ↓ ↓
趣味でご自分でなされるのであれば、「みどりつみ」と「もみあげ」の年2回の作業。
あとは間引く剪定作業を行なうとよろしいかと思います。
年3回行っても誰も文句は言いませんので、楽しんで技術を学ばれて下さい。
「もみあげ」の具体的な剪定作業の手順
「もみあげ」を行なうには具体的な手順がありますが、その手順について解説します。
準備をする
■「もみあげ」を行なう時期としては、11月から2月頃が適期です。葉が黄色く変色するころが目安です。
■道具は、剪定バサミやゴム手袋を用意します。好みによっては皮手袋を用意します。軍手でも良いですが、滑るし葉がつきやすいので私はゴム手派です。
■松の確認をしますが、この時、樹形や健康状態を観察して全体のバランスを把握して作業に取り掛かるとよいです。
古葉を取り除く
幹の上部から下部に向かって進んでくると自然にきれいに仕上がります。
幹から分かれる太い枝を1つのブロックとして作業を行ないますが、 枝の混み具合を見て、ひとかたまりずつ順番にもみあげを行ないます。
実際に「もみあげ」の作業を行ないます。
古い葉を全てふるい落とします。または抜き取ります。
おおむね2年目以降の古い葉(主に黄色くなった葉など)を手で摘み取ります。
茶色に変色した葉は手でこするようにしごくと簡単に落とせます。
特に、枝の根元や密集した部分に注意を払いましょう。
古葉が固くなっている場合は、ゴム手袋を使うと取りやすいです。
不要な枝や芽の除去
ここで重要なのは、枝の下に向かって生えている枝や葉っぱです。
将来的にそこから芽が出てくる可能性もありますので、この葉は落としておかないと見栄えが悪くなります。
不要な枯れ枝や古い枝、不要な芽を確認して、適宜に切り除きます。
一つの枝に複数の芽が出ている場合、元気の良い芽を1~2本だけ残し、他は切り取ります。
芽を間引くことで、松のエネルギーが効率的に使われます。
全体のバランスを調整して仕上げる
もみあげを進めながら、全体の形を整えます。
枝が重なる部分や風通しが悪い部分は、不要な枝を剪定するとよいです。
最後に全体を見回し、切り残しや不自然な形がないか確認します。
仕上がりが、松を正面から、または 横から見た時に見栄えがよくなるようになればよいです。
混んでいる部分を空くようにして、仕上がりが均等に空く感じにしてもみあげ作業を終えます。
このような要領で剪定、もみあげを行うとよろしいです。
「もみあげ」を行う際のポイント
■密集した葉を取り除くことで風通しが良くなり、病害虫の発生を防ぎます。
■自然な樹形を残すことが美しい松の姿を作りますので、人工的な形になりすぎないよう注意しましょう。
■若い葉や芽は松の成長に必要なので、健康な葉や芽を残すようにして取りすぎないようにします。
「もみあげ」の効果
■松がスッキリと整い、美しい樹形が際立ちます。
■日当たりや風通しが良くなり、病害虫を防ぐ効果があります。
■エネルギーが効率的に配分され、健康的な成長を促します。
「もみあげ」は少し手間のかかる作業です。
しっかりと行うことで松の美しさが引き立ち、庭全体の風景が見違えるようになります。
焦らずとも丁寧に「もみあげ」作業を行なって、松と向き合う時間を楽しんでください!
真冬に松の剪定は行なってもよいか?
冬は落葉樹が休眠期ですが、常緑樹の松も休眠期です。
では、落葉樹は冬の剪定をすすめているので、もしかしたら常緑樹も冬に剪定を行なえるのではと思いませんか?
実は私は、厳冬(1月ころ)に樹高3mほどの赤松の剪定を行なったことはありますが、その時は剪定後の樹勢には問題はありませんでしたし、今でも元気よく生長しています。
ただし、その時は少し怖かったので、太い枝は切らないで、細い枝の剪定ともみあげを行ないました。
松は冬期は休眠時期なのでヤニは出にくく、人間にとってはやりやすい時期です。
しかし、松の立場からすると、ヤニは切った部分の殺菌保護をする役目もあります。
そのヤニが出ないということは、細菌が入って枯れる恐れもあるということです。
あんまり太い枝を切らない限り、真冬の剪定も大丈夫だとは思いますが、枯らしたくない松の場合は、7月頃、9月~10月ころに剪定を行なうのがよいです。