「10月桜」という桜の品種はあるので、秋頃に「10月桜」が咲くのはおかしくはありませんが、秋頃にソメイヨシノが咲いてちょっとした騒ぎになることがまれにあります。
4月頃に花が咲く「ソメイヨシノ」が秋に咲くとなるとちょっと不思議な感じがしませんか?
その「狂い咲き」とか「返り咲き」のような現象は「不時現象」と呼ぶそうなのですが、その原因はいったいなんなのでしょう。
ソメイヨシノの花が咲く通常のサイクル
ソメイヨシノが花を咲かせる頃には、お花見と呼ばれる日本全国的な行事のような催す会を開いたりされますので、地域によって違いはありますが、だいたい花の咲く時期が、3~4月ころということはご存知かと思われます。
通常であれば、3~4月ころに花を咲かせ、夏の間に葉が生い茂り、秋が過ぎると落葉することになります。
ソメイヨシノや、3~4月頃に咲く桜の花芽は、夏ごろまでに作られてから休眠に入ります。
この時花芽には、冬の低温に耐える為に、葉から休眠ホルモンを出し蕾に蓄えられ、来年の春まで、花芽を固くして咲かないようにしておき、蕾の中のホルモンが全て消費された時の春に、つぼみが成長して花を咲かせるサイクルになっています。
狂い咲きした桜は春にも咲くのか?
しかしそんなソメイヨシノでも「狂い咲き」や「返り咲き」と呼ばれ、秋に花が咲くことがあります。
「狂い咲き」や「返り咲き」の原因は、台風によって葉を失ったり、害虫により葉を食害される影響によって葉が急に無くなってしまうことで、そのシステムが狂わされて異常が発生したかのようになり、花が咲くことになります
これは急に葉を失い、せっかく貯めた休眠ホルモンが侵されて供給が止まってしまうことや、寒くなりかけた秋頃、急にまた春のような暖かい気温に戻った時が重り、桜が勘違いを起こすことで、花を咲かせてしまう狂い咲き状況になるのです。
その際、全ての蕾が花を咲かせることは少ないわけなので、おそらくは残りの花が次の年の春先に開花するはずです。
狂い咲きとは関係なく、秋から冬にかけて咲くサクラの品種もあり、十月桜などがそれにあたります。
毛虫による狂い咲き
毛虫などの害虫により葉が食害される影響で、狂い咲きをするケースがあります。
アメリカシロヒトリなどに葉を食害され、時期外れなのに一気になくなることと、気温の低い日が続いたと思ったら急に暖かい日が戻ってくるなど、狂い咲きに適した気象条件が合わさることによって、桜の木が春と勘違いして花が咲くことがあります。
毛虫に葉を食べられて失ってしまい、落葉して一度寒さに当たった後に暖かさが戻ることで、春が来たと勘違いして花を咲かせるくらいデリケートで生きていることを感じさせられますね。
台風による狂い咲き
桜の葉が台風の影響により、急に葉が落ちてなくなることで、葉で作られる休眠物質が不足してしまい狂い咲きをするケースが一番多いようです。
これも害虫により葉がなくなるのと同じで、狂い咲きは夏の終わりか秋の初めごろに、強い台風が来て葉が落ちて丸坊主になってしまう時に起こる可能性が高いです。
「それじゃぁ、秋の初めころに葉をきれいにむしり取ってしまえば花を咲かせるのでは?」と思うかもしれませんが、お察しのとおり、人工的に狂い咲きをおこさせることも可能なようです。
それが可能な証拠には、以前テレビ番組で、1本の桜の木を用いて一晩で葉をむしり取るという大掛かりな設定をして、桜の花を咲かせたのを見た記憶がありますので、あれがヤラセでなければ可能なはずです。
狂い咲きの開花!気象庁では呼び名がついている
季節外れにサクラの花が咲くことを気象庁では「不時(ふじ)現象」と称されており、気象台ではしっかりとその記録を取っているようです。
たとえば、春に咲く花が秋に咲けば「不時現象」に確実に当てはまるのですが、各気象台において、もっとも早い観測日より1ヶ月早く、最も遅い観測日より1ヶ月遅いことを1つの基準にして、不時現象を決めるという指針があるようです。
気象庁の見解によると不時現象の原因は様々あるようですが、季節外れに桜の花が咲く理由には、
1.何かの理由で葉が機能しなくなり、十分な休眠ホルモンが花芽に届かない
2.涼しい気候が続いた後に急に春のような暖かい日が続く
この2つの条件下で「不時現象」が生じるという見解のようです。
まさしく、今まで解説してきたことと一致するようです。
1本の木の一部で早咲きしてしまった桜のその部分には春に花は咲きません。
しかし、不時現象が起きた場合でも、全ての花芽が不時現象により花を咲かせるわけではないので、花の数は少なくなるかもしれませんが、その木の桜は次の春には花を楽しむことはできます。