最近よく「松の木が枯れるかも!」とか「枯れそう!」というご相談を受け、お客さんの元を訪れることが多くなりました。
ただ、その場合の多くは手遅れである可能性が高いです。
「なぜそんなに松が枯れるのか?」
「どんなことをすれば松は枯れるのか?」
重要なことですので、ここでは、松が枯れる失敗の原因ベスト3を緊急公開します。
松が枯れる一番の原因は高齢化かも
私が思うに、松が枯れることの最大の原因は、高齢化により松を剪定できる人が少なくなってきていることだと感じています。それは施主様、業者さん共にです。
昔はどこのお宅でも施主様自身で剪定作業を行なっていたと聞くことが多いです。
大きくて樹形や風貌が素晴らしい立派な松の存在ほど、家柄を自慢できる象徴とされてきました。
それだけ、競うようにどのお宅でも盛んに植えていたのでしょうね。
その施主様も歳をとって亡くなると、後継者は大きくなってしまった松の管理で大変な思いをします。
お金があれば信頼のおける庭師さんに剪定を頼めば済む話ではあります。
しかし、大きな松だと業者に剪定を頼めば、1本当たり数万円ほどかかることもあります。
10本もあれば数十万円です。
それが毎年続くのですから、後継者さんにはたまったものではありません!
たとえ昔から伝わる大事な松だとしても、後継者の方にとって、毎年そんなにお金が飛んで行くことは耐えきれないはずです。
もしも私が、松の存在に興味がなかった昔であれば、同じ状況なら伐採するかもしれません。
たとえ小さい松で自分で剪定できそうと思っても、やり方がわからないので「バッサバッサ」と刈り込みばさみで切って枯らしていると思います。
このようなことから「高齢化が起きて松を自分で剪定できなくなった」
これが、松が枯れる原因に繋がっている最重要項目だと思っています。
私としては、庭師などに頼むのがベストだと思っていますが、確かに料金は高いです。
しかも、最近では「にわか仕込みの庭師」が増えていますので、当たりが悪いと松を枯らされる心配も出てきます。
「松が枯れる原因は高齢化」だとお伝えしましたが、これは各々の興味や価値を感じる対物が時代背景とともに移り変わったことで起きていると感じます。
さて、時代背景を考慮しない場合では、どのようなことで、松が枯れるのでしょうか?
いよいよ、松が枯れる人為的におこる失敗の原因ベスト3を、第3位から順に公開します。
松が枯れる人為的な原因・第3位
【第3位】
剪定を怠った結果、枝が伸びすぎて太枝をバッサリスッキリ切ってしまう
松は剪定を毎年してあげないと樹形が乱れてきます。
松に興味がない方に多いのですが、毎年剪定をしてあげないで、数年も放っておくとドンドン太い枝が伸びてきます。
太い枝が伸びてきて、気になりだすとどうしても太枝を切りたくなります。
太枝を切ると松は結構な確率で樹勢が弱くなります。
もちろん松には全く興味がないので樹勢のことは知る由もありません。
どこをどう切ってよいのかも知るわけがありません。
そして切り始めたらスッキリするまで止まらなくなります。
キレイになればいいという感じなのでしょうね。
なんとなく幹と枝が樹形を残している感じですが、もはや松ではなく雑木のような扱いになっているかもしれません。
結果的に、その松は枯れる可能性の高い木になってしまうのです。
松の樹齢が若ければ生きるかもしれませんが、老木の場合は枯れる可能性が高くなります。
このように剪定を怠った結果、伸びた太枝をバッサリスッキリ切ることが、松が枯れる原因の 第3位 になります。
松が枯れる人為的な原因・第2位
【第2位】
時期を間違った強い剪定
ご自身で松の剪定ができない場合は誰かに頼むという行動に移すと思います。
この場合の事例は、ご依頼者様が松を枯らすという原因ではなく、依頼した業者が枯らしてしまう原因になります。
たとえば「にわか仕込みの庭師」には気を付けたいです。
「にわか仕込みの庭師」は、松が老木で樹勢が弱いとか、剪定時期の良し悪しとか、どのような剪定をするとか、現在の松の状態を把握することができません。
だから、樹勢とか剪定時期などいつもと変わらない同じ剪定作業をしてしまいます。
すると、どうなると思いますか?
↓ 樹勢が弱っている老木の松を間違った時期に強い剪定をすれば、次第に枯れる方向に向かっていきます。
この場所は、非常に風当たりが強く、冬は雪が多い地域です。
昨年の冬に強い剪定を施されたらしく、今春から徐々に上部から枯れてきたようです。
「かなり古い老木で、なんとか生かしたいけど、なんとかならない?」
と、治療を依頼された松です。
↓ 下の方は何とか枯れていない状態です。
枯れ枝や枯れ葉をとったり、栄養剤を与えたりしました。
上から徐々に枯れてきていますし、樹勢が弱くなってきているので、今後どうなるのかわかりません。様子見です。
【追記】
結局、残念ですが次の年すっかり枯れました。
この事例は「にわか仕込みの庭師」により、時期を間違った強い剪定が松が枯れる原因の 第2位 になりますが、素人さんにも同じように言えます。
これも、結構多い事例です。
松が枯れる人為的な原因・第1位
【第1位】
除草剤を根元周辺に撒く
これが、今まで出会った一番多い人為的な失敗事例で、相当な数を体験しました。
体験と言っても、私が除草剤を撒いた当事者ではなく、お客様自身で撒いて失敗した事例です。
松は根本付近だけに根があるわけではなく、根元からどこまで伸びているかわかりません。
根が伸びている場所に除草剤を撒いてしまうと、あっという間に松は枯れてしまいます。
特に、粒剤系の除草剤は強くジワジワと効いていきます。松すべてが枯れる場合もあります。
一部で留まる場合もありますが、その場合でも樹勢は弱くなるので、除草剤をどの程度撒いたかでも枯れ具合は変わります。
なので、松の状態にもよりますが、松が枯れた場合に一番初めにお客様に聞くことは、除草剤を撒いたかどうかです。
今まで枯れたお宅15件くらいに聞いたら、100%の確率で撒いたと言われました。
悲しいことに、そのくらい松の手入れ件数が少なくなったという事になります。
松が枯れる人為的な失敗の原因ベスト3 のまとめ
松が枯れる人為的な失敗の原因の3つをまとめますので、松の剪定・管理に役立てて下さい。
松が枯れる人為的な失敗の原因
1位.除草剤を根元周辺に撒く
2位.時期を間違った強い剪定
3位.剪定を怠り、伸びすぎた太枝をバッサリ切る
私の過去の失敗経験や、色々な失敗をした方から話を聞くと、このような原因で松が枯れる事例が多く発生しています。
大事な松を枯らしたくなかったら、最低でもこのようなことを行なわないことで、枯れを防げる可能性は高まります。
松が枯れる原因・番外編(具体例5つ)
まだまだ松が枯れる原因はあります。
松が枯れる原因はさまざまで、環境的な要因、生物的な要因、管理不足などが影響します。
以下に主な原因5つを具体的に詳しく説明します。
1.病気による枯れが原因
■マツ材線虫病(松枯れ病)
松枯れ病として一番大きな原因は、マツ材線虫病によります。
これは南から北へ向かって北上してきた全国的な規模で起こっている感染病です。
松枯れ病の原因は、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)という線虫が原因の病気です。
マツノザイセンチュウは、マツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)という昆虫により枯れた松から次の弱った松に向けて運ばれ、そこで媒介・増殖して感染が広がります。
松枯れ病の症状は、初期には黄化・赤化といった葉の変色がおこります。
病状がどんどん進行していくと全体的に葉が枯れ、最終的に確実に木が枯死します。
松枯れ病の対策として、マツノマダラカミキリの発生を防ぐために、ある決まった発生時期(夏)に薬剤散布します。
または、マツノマダラカミキリが羽化して飛び立つ前の幼虫期(冬期)のうちに、枯れた感染木を速やかに伐採して、すぐにチップ状に細かく粉砕や焼却処分をします。
枯れ木をそのままにしておくと、そこから夏場にマツノマダラカミキリが飛び立ち次の松へと向かい感染が広がっていきます。
2.虫害による枯れが原因
■マツノマダラカミキリ
マツノマダラカミキリの役割は、マツ材線虫病(松枯れ病)においてマツノザイセンチュウを媒介する運びやとして知られています。
マツノマダラカミキリが引き起こす症状は、松の葉をかじり食すことで、そこからマツノザイセンチュウが松の樹体内に参入します。
幹や枝に小さな陥没したような穴(穿孔)ができます。そこは卵を産み付けるためにかじった跡でその場所の内部で子孫が繁殖します。
マツノマダラカミキリの対策として、マツノマダラカミキリが飛び立つ行動に及ぶ前に予防や防除として薬剤散布をします。
被害を受け枯れた幹や枝は、マツノマダラカミキリが羽化して飛び立つ前の幼虫期(冬期)のうちに、枯れた感染木を速やかに伐採し、すぐにチップ状に細かく粉砕や焼却処分をします。
枯れ木をそのままにしておくと、そこから夏場になるとマツノマダラカミキリが飛び立ち次の松へと向かい感染が広がっていきます。
■その他の昆虫による害
・マツカレハによる被害内容
マツカレハは蛾ですがその幼虫が松の針葉を大量に食べます。
特に5月~8月にかけて被害が大きく、成長期の幼虫が活発に葉を食害します。
ひどい時では葉が丸裸になることもあり、光合成ができなくなり松の樹勢が大幅に衰えることもあります。
大量発生が続くと、数年以内に松が枯死する可能性もあります。
・マツノキクイムシは、松の幹や枝を食し物理的な損傷を与え健康に影響を与える場合があります。
それだけでなく、松への病気や他の害虫の侵入を助長するため、被害が広がる可能性があります。
早期発見と管理が重要で、定期的な観察と被害木の除去、薬剤散布による予防が最も効果的です。
3.栄養不足や環境ストレスが原因
■土壌条件の不適合
土壌不適合の原因では、窒素、リン、カリウムなどの栄養不足が土壌を悪化させます。水はけの悪さや過乾燥によっても土壌が劣悪になります。
土壌不適合の症状は、葉が黄変し元気を失います。すると生育が悪くなり、新芽が出にくくなります。
土壌不適合の対策として、適切な肥料を春と秋の適期に与えます。必要に応じて排水対策や灌水を行ないます。
■環境的要因
松は日光を好む木なので、日当たりの悪い場所に植えられた松は弱りやすいです。
強風や大雨、極端な寒暖差などが木にストレスを与えます。
4.管理不足が原因
適切に剪定されないと風通しが悪くなり、病害虫が発生しやすくなります。
古い枝が積み重なり放置されていると、樹勢が衰えることがあります。
5.人為的な影響が原因
人為的な影響の原因は、剪定だけで起こるわけではありません。
建築工事や掘削作業などで根が傷つくと、栄養吸収が妨げられ、松が弱ります。
除草剤の影響として、周囲の草木を除去するために使用された除草剤が、松に悪影響を与え枯れる場合が多いです。
根元に大きな石を置いたり、土盛りをしたり、アスファルトで覆いつくし駐車場にしたりすることで、根に相当な負担をかけ、窒息や損傷を起こすことにより、近年松枯れが頻繁におこっています。
早期発見と予防が重要
松が枯れる原因は複合的であるため、次のような早期対応と予防が重要です。
葉や幹に異常がないかを定期的に観察しながら確認をします。
剪定や肥料の施用を行い適切な管理をします。
病害虫の発生が疑われる場合は、植木医や造園業者等専門家に相談します。
松は環境ストレスに強い樹木ではあるのですが、適切な管理と早期対応で寿命伸ばすことにつながります。