【剪定小説】サクラの剪定:蒸気駆動式ノコギリと枯れ枝に眠る古代兵器の謎

第1章 異世界の巨大メカとズボラ庭師 ~「一発切りで楽したい」の罠~

この記事は、サクラ(桜)の剪定、とくに「太い枝の正しい切り方=三段切り(段切り)」を、退屈な説明抜きで、ワクワクするスチームパンク異世界の冒険物語として楽しく学べる21,000文字を超える記事です。

「太い枝って、どうやって切ればいいの?」「一気にノコギリで切っちゃダメなの?」「なんで幹の皮が剥がれると、そんなに大変なの?」という疑問をお持ちの方に、ぴったりの内容です。

物語を読み終わるころには、あなたも、太い枝を安全に、木を傷つけずに切る方法が、自然と頭に入っているはずです。それでは、煙と歯車の異世界へ、ご案内します。

① たった一回の切り方で、木が再起不能に

いきなりですが、庭仕事の初心者が、もっともやりがちで、もっとも取り返しのつかない失敗があります。それが、「太い枝を、上から一気に、切り落とす」ことです。

「え、太い枝を上から切るの、普通じゃないの?」と思った方も、いるかもしれません。実は、これが、大きな落とし穴なのです。

太い枝を、上から一気に切ると、枝が完全に切れる前に、その重みで、ボキッと折れてしまいます。そして、折れた枝が、幹の皮を、下へ、下へと、ベリベリッと、引っ張って剥がしてしまうのです。とくにサクラは、傷口から腐りやすい、デリケートな木です。皮が大きく剥がれると、そこから菌が入り込み、木が腐って、最悪の場合、木全体が、枯れてしまいます。たった一回の、間違った切り方で、大切な木を、再起不能にしてしまうことがあるのです。

② 「一発で済ませたい」ズボ太

さて、我らが主人公の登場です。現代の新人植木職人、「ズボ太」。相変わらずの、筋金入りのめんどくさがり屋です。

ある日、ズボ太は、親方から、サクラの太い枝を切るように、命じられていました。親方は、それはもう、こわい顔で、こう怒鳴りました。

「いいか、ズボ太! サクラの太い枝を切るときは、絶対に、いきなり上から切るな! 枝の重みで、幹の皮が、持っていかれるぞ! ちゃんと、順番を守って、切るんだ!」

ところが、ズボ太は、心の中で、こう思っていました。「えー……順番とか、めんどくさいなあ。太い枝なんて、上から、ノコギリで、一回、ガーッと切り落とせば、楽ちんじゃん。なんで、わざわざ、面倒なことするんだよ……」

親方の、大切な教えを、ズボ太は、またしても、聞き流していたのです。「一回で済ませたい」――その横着心が、このあと、とんでもない事態を、引き起こすことになるとは、思いもせずに。

③ その「楽したい」気持ち、分かります

実は、このズボ太の「一発で切っちゃいたい」という気持ち、多くの方が、共感するのではないでしょうか。

太い枝を切るのは、力もいるし、時間もかかる、大変な作業です。できることなら、ノコギリを、一回動かすだけで、サッと終わらせたい。何度も切り込みを入れるなんて、面倒に感じますよね。その気持ちは、とてもよく、分かります。

けれど、ここで、ちょっとだけ、立ち止まってほしいのです。その「一発切り」で、あなたの大切なサクラが、深い傷を負い、病気になって、枯れてしまうとしたら――。ほんの少しの手間を惜しんだことで、何年も育ててきた木を、失うことになったら、こんなに悲しいことは、ありません。太い枝には、太い枝の、正しい切り方があるのです。

④ 蒸気ポンプの、破裂

その日、ズボ太が、面倒くさそうに、庭の道具を片付けていたときのことでした。

庭の隅に、古い、蒸気で動くポンプが、置いてありました。ずいぶん昔のもので、あちこち、錆びついています。ズボ太が、そのそばを通りかかった、まさにそのとき――。

シュgoooooo……ボンッ!

突然、その古い蒸気ポンプが、ものすごい音を立てて、破裂したのです。あたりは、真っ白な蒸気で、包まれました。

「うわあっ!? なんだ!? 爆発!?」

ズボ太は、もうもうと立ちこめる蒸気に、飲み込まれました。視界が、真っ白になり、体が、ぐるぐると、回転するような、不思議な感覚。ズボ太は、そのまま、意識を、失ってしまったのです。

⑤ 目覚めたら、煙と歯車の街

「……ん……ここ、どこだ……?」

ズボ太が、ゆっくりと目を覚ますと、そこは、見たこともない、不思議な街でした。

空には、たくさんの煙突から、もくもくと、白い煙が立ちのぼっています。街のあちこちで、巨大な歯車が、ガチャンガチャンと、音を立てて回り、蒸気が、シューシューと、噴き出しています。建物は、銅や鉄で、できていて、パイプが、うねうねと、街中を、はいまわっていました。

「なんだ、この街……歯車だらけじゃんか……」ズボ太は、ぽかんと、口を開けました。

まるで、昔のSF漫画に出てくるような、蒸気機関で動く街。のちに、ズボ太が知ることになる、その街の名は――「スチームシティ」。蒸気と、歯車と、カラクリの、異世界だったのです。

⑥ 巨大な、樹木型兵器

呆然とするズボ太の目の前に、とてつもなく巨大な、「あるもの」が、そびえ立っていました。

それは、山のように大きな、一本の「木」の形をした、機械でした。幹も、枝も、すべてが、金属や、パイプや、歯車で、できています。まるで、巨大なサクラの木を、そっくりそのまま、機械で作ったような、異様な姿でした。

「なんだ、あのでっかい木……機械……? しかも、サクラの形、してるじゃんか……」

それは、古代の遺跡から発掘された、樹木型の巨大兵器――その名も「サクラ」でした。そして、この巨大兵器「サクラ」こそが、これから、ズボ太を、そして、この街全体を、巻き込む、大事件の、中心になるのです。

ズボ太が、その巨大な姿に、見とれていると、その足元で、誰かが、必死に、何かと格闘している姿が、目に入りました。ゴーグルをつけ、油まみれのツナギを着た、一人の人物。ズボ太の、これからの相棒となる、天才メカニックとの、出会いでした。

第2章 天才メカニック・ギアの手詰まり ~太枝が切れない~

① 油まみれの、天才エンジニア

ズボ太が近づいていくと、その人物は、巨大兵器「サクラ」の足元で、大きなレンチを片手に、必死に、何かを調整していました。

ゴーグルを額に上げ、顔じゅう油だらけ。着ているツナギも、油のしみで、真っ黒です。けれど、その目は、驚くほど、鋭く、そして、真剣でした。ひと目で、腕のいい職人だと分かる、そんな雰囲気を、まとっていました。

その人物こそ、スチームシティ一の、天才メカニック――「ギア」でした。頑固で、妥協を許さない、けれど、機械への愛情は、誰よりも深い。そんな、根っからのエンジニアだったのです。

ズボ太が、おそるおそる、声をかけました。「あの……すみません。ここ、どこっすか? 俺、なんか、変な蒸気に巻き込まれて、気づいたら、ここにいて……」

② 「邪魔だ、そこをどけ!」

けれど、ギアは、ズボ太のほうを、見向きもしませんでした。それどころか、いらいらした様子で、こう怒鳴ったのです。

「見て分からんのか! 今、それどころじゃないんだ! 邪魔だ、そこをどけ、坊主!」

ギアは、汗だくになりながら、巨大兵器「サクラ」を、見上げていました。その表情には、あせりと、いらだちが、はっきりと、にじんでいます。

「くそっ……どうすれば、この暴走を、止められるんだ……このままじゃ、街が……!」

ただならぬ様子に、ズボ太も、ごくりと、つばを飲みました。どうやら、この巨大な機械に、何か、とんでもない問題が、起きているようなのです。

③ 暴走する、巨大兵器

ズボ太は、あらためて、巨大兵器「サクラ」を、見上げました。

すると、その巨大な機械の、あちこちから、不気味な音が、聞こえてきます。ギシギシ、ゴゴゴ……と、まるで、体の内側で、何かが、暴れているような音です。ところどころから、黒い煙や、不穏な蒸気が、噴き出しています。

「なんか……この機械、様子が、おかしくないっすか?」ズボ太が、たずねました。

ギアは、ようやく、ズボ太のほうを、ちらりと見て、吐き捨てるように、言いました。「おかしいなんてもんじゃない。暴走してるんだ。この古代兵器『サクラ』の内部で、エネルギーの流れが、めちゃくちゃになっている。このまま放っておけば――」

ギアは、街全体を、見わたしました。「この機械は、過熱して、大爆発する。そうなれば、このスチームシティは、街ごと、吹き飛ぶ。何万人もの、命が、失われるんだ」

④ 暴走の原因は、一本の「太い枝」

「そんな……! 街ごと爆発って……!」ズボ太は、青ざめました。「で、でも、なんで、そんなことに、なってるんすか?」

ギアは、巨大兵器「サクラ」のある一点を、指さしました。「原因は、あれだ」

ズボ太が、見上げると、そこには、巨大兵器「サクラ」の幹から、一本、異様に太い「枝」が、突き出していました。他の枝とは違い、その太枝は、黒ずんで、ところどころ、腐ったように、崩れかけています。そして、その太枝から、暴走の原因らしき、黒い蒸気が、もれ出していたのです。

「あの、太い枝――我々は『枯れ枝動脈』と呼んでいる。あれが腐って詰まっているんだ」とギア。「あの腐った太枝が、エネルギーの流れをせき止めて、暴走を引き起こしている。あれさえ、切り取ってしまえば、暴走は、止まるはずなんだ」

⑤ 「切れない」天才の、苦悩

「なんだ、それなら、簡単じゃないっすか」とズボ太。「その腐った太い枝を切り落とせばいいんでしょ?」

ところが、ギアは、苦々しい顔で、首を横に振りました。「それが、簡単じゃ、ないんだ」

ギアは、巨大兵器「サクラ」の、幹を、そっと、なでました。「いいか。この古代兵器『サクラ』の、幹――我々は『メインフレーム』と呼んでいるが――これは、恐ろしく、デリケートな構造をしている。この幹の表面の『装甲(皮)』を、少しでも、大きく傷つけると、そこから、『腐朽菌(ふきゅうきん)』――蒸気漏れの原因になる菌が、入り込んでしまう」

「腐朽菌……?」

「そうだ。一度、その菌が、幹に入り込むと、兵器全体が、内側から、腐っていって、二度と、動かなくなる。永久に、破壊されるんだ」とギア。「つまり、あの太枝を切るとき、幹の装甲を、絶対に、傷つけてはならない。だが、あんなに、太くて重い枝を、幹を傷つけずに、切り落とすなんて……どうすれば、いいのか、分からないんだ……!」

天才メカニックのギアでさえ、太い枝の、正しい切り方を、知らなかったのです。

⑥ ズボ太、思わず口を出す

その、ギアの苦悩を聞いて、ズボ太は、あることに、気づきました。

「幹の皮を、傷つけずに、太い枝を、切り落とす……? それって、まさか……」

ズボ太の頭の中で、聞き流していたはずの、親方の言葉が、よみがえってきました。「サクラの太い枝を切るときは、いきなり上から切るな! 幹の皮が、持っていかれるぞ!」

「あれ……これ、もしかして、俺、知ってるやつじゃないか……?」

ズボ太は、思わず、口を開いていました。「あの、ギアさん。その太い枝の切り方なら……俺、知ってるかもしれないっす」

ギアが、勢いよく、振り返りました。その目には、驚きと、そして、かすかな、希望の光が、宿っていました。「なんだと……? 坊主、お前、今、何と言った?」

こうして、ズボラな新人庭師ズボ太と、天才メカニックのギア。この、意外なコンビが、巨大兵器の暴走を止め、街を救うため、力を合わせることになったのです。ズボ太が、親方から叩き込まれた「太い枝の切り方」が、いよいよ、その真価を、発揮するときが、やってきました。

腐った太い枝を切り落とせばいいんでしょとズボ太は言っている

第3章 一発切りの恐怖 ~皮がベリッと剥がれる瞬間~

① 「俺が、切り方を教えるっす」

「坊主、もう一度、言ってみろ。お前、あの太枝の切り方を、知っているのか?」ギアが、ズボ太に、詰め寄りました。

ズボ太は、こくりと、うなずきました。「たぶん、っすけど……俺、これでも、植木職人なんす。新人で、ズボラだけど……太い枝の切り方だけは、親方に、めちゃくちゃ厳しく、叩き込まれたんす。幹の皮を、傷つけずに、太い枝を、切り落とす方法……あるんすよ」

ギアの目が、大きく、見開かれました。「本当か……! もし、それが本当なら、この街を、救えるかもしれん……! 頼む、その方法を、教えてくれ!」

「まかせてくださいっす」とズボ太。「でも、その前に、ギアさん。今、ギアさんが、やろうとしてた切り方――あれ、絶対に、ダメなやつっすよ」

② ギアの、危険な「一発切り」

ズボ太が、指さした先。そこには、ギアが用意していた、巨大な「蒸気駆動式ノコギリ」が、ありました。蒸気の力で、刃が、高速で動く、すさまじい切断兵器です。

ギアは、その巨大ノコギリを、構えて、こう言いました。「俺は、こいつで、あの太枝を、上から、一気に、切り落とすつもりだった。これだけの、切れ味があれば、あんな枝、一発で、切断できるはずだ」

それを聞いた、ズボ太は、真っ青になって、叫びました。「待ってください、ギアさん! それだけは、絶対に、ダメっす!」

「なに……? なぜだ。この蒸気ノコギリなら、一撃で、切れるぞ」

「切れるけど、それがダメなんす!」ズボ太は、必死に、訴えました。「そんなふうに、上から、一気に切ったら、とんでもないことに、なるんすよ!」

③ なぜ、一発切りが危険なのか

ズボ太は、太枝を指さしながら、説明を始めました。

「いいっすか、ギアさん。あの太枝は、めちゃくちゃ、重いっすよね。あんな重い枝を、上から、ノコギリで切っていくと、どうなると思います?」

ギアは、首をかしげました。「どうなる、とは……普通に、切れていくんじゃないのか?」

「違うんす」とズボ太。「上から、切っていくと、刃が、枝を、半分くらいまで切ったところで、枝が、自分の重みに、耐えられなくなるんす。そして、まだ、完全に切れてないのに――ボキッ! って、途中で、折れちゃうんすよ」

「途中で、折れる……?」

「そうっす。しかも、ただ折れるだけじゃ、ないんす」ズボ太の声が、緊張しました。「折れた枝が、下に、ドサッと、落ちるとき、その重みで、幹に、まだくっついてる皮を、下へ、下へと、ベリベリベリッ! って、引っ張りながら、剥がしていくんす」

④ 皮が剥がれると、木は死ぬ

ズボ太は、身ぶり手ぶりを交えて、その恐ろしさを、説明しました。

「想像してみてください。バナナの皮を、上から、下に、むくでしょ? あんな感じで、枝が落ちるとき、幹の皮が、ビリーッて、大きく、めくれて、剥がれちゃうんす。ひどいときは、幹の、かなり下のほうまで、皮が、ごっそり、持っていかれるんすよ」

ギアが、はっと、息をのみました。「まさか……それは……」

「そうっす。ギアさんが、さっき言ってた、あれっす」とズボ太。「幹の皮が、大きく剥がれると、そこから、腐朽菌――ばい菌が、入り込む。とくにサクラは、傷口から、腐りやすい木なんす。皮が剥がれた傷口から、菌が入って、木が、内側から、腐っていって……最悪、木全体が、枯れて、死んじゃうんす」

ズボ太は、ギアを、まっすぐに見て、言いました。「つまり、あの太枝を、一発切りしたら――幹の皮が、ごっそり剥がれて、そこから菌が入って、この巨大兵器『サクラ』は、二度と、動かなくなる。ギアさんが、いちばん、恐れてた、永久破壊が、起きちゃうんすよ」

⑤ ギアの、驚がく

ズボ太の説明を聞いて、ギアは、握っていた蒸気ノコギリを、思わず、取り落としそうに、なりました。

「なんてことだ……! 俺は、この街を救うために、あの太枝を切ろうとして……その切り方で、逆に、兵器を、永久に、破壊するところだったのか……!」

ギアは、額の汗を、ぬぐいました。「危なかった……もし、お前が、止めてくれなかったら……俺は、自分の手で、この街を、終わらせるところだった……」

天才メカニックのギアでさえ、知らなかった、「一発切りの恐怖」。それを、ズボラな新人庭師のズボ太が、救ったのです。ギアは、あらためて、ズボ太を、見つめました。「坊主……いや、ズボ太。お前、ただの、坊主じゃ、なかったんだな」

⑥ 読者のあなたへ、一発切りの教訓

ここで、読んでいるあなたにも、この、とても大切な教訓を、お伝えします。

太い枝を切るとき、いちばん、やってはいけないのが、「上から、一気に、切り落とす」ことです。太い枝は、重いので、切っている途中で、自分の重みに耐えきれず、ボキッと、折れてしまいます。そして、折れた枝が落ちるとき、幹の皮を、下へと、ベリベリッと、大きく剥がしてしまうのです。

サクラは、とくに、傷口から腐りやすい、デリケートな木です。幹の皮が、大きく剥がれると、その傷口から、腐朽菌などの菌が入り込み、木が腐って、枯れる原因になります。せっかくのサクラを、たった一度の、間違った切り方で、だめにしてしまうのです。

では、どうすれば、幹の皮を傷つけずに、太い枝を、安全に切れるのでしょうか。その答えが、ズボ太が、これからギアに教える、「三段切り(段切り)」という、プロの技術なのです。次の章から、いよいよ、その具体的な方法を、一つずつ、見ていきましょう。

第4章 ステップ1・下からの切り込み ~皮を止めるブレーキ~

① 「三段階に分けて切るんす」

「じゃあ、ギアさん。これから、太い枝を、安全に切る方法を、教えるっすね」

ズボ太は、腕まくりをして、巨大兵器「サクラ」の、腐った太枝を、見上げました。「この切り方は、『三段切り』とか、『段切り』って、呼ばれてるんす。名前の通り、太い枝を、一発で切るんじゃなくて、三つの段階に、分けて、切っていくんすよ」

「三つの、段階……?」ギアが、首をかしげました。「一回で切るより、三回も切るのか。面倒じゃ、ないのか?」

「あはは、ギアさんも、そう思うっすよね」とズボ太は、苦笑いしました。実は、それは、まさに、以前のズボ太自身が、思っていたことだったからです。「でも、この、ちょっとの手間が、幹を、守るんす。急がば回れ、ってやつっすよ。まずは、ステップ1から、いくっす」

② ステップ1・幹から離れた場所に、下から切り込む

ズボ太は、太枝の、ある場所を、指さしました。「まず、ステップ1。切りたい枝の、幹から、少し離れた位置――だいたい、幹から、こぶし何個分か、離れたところに、ノコギリを、当てるっす」

「幹から、離れた場所に、だな」とギア。

「そうっす。そして、ここが、大事なんすけど――その場所で、枝の『下側』から、ノコギリを、入れるんす」ズボ太は、下から上へ、切り上げる動きを、してみせました。「枝の下側から、上に向かって、枝の太さの、三分の一くらいまで、切り込みを、入れるんす。全部は、切らないっすよ。三分の一、だけっす」

ギアは、けげんな顔をしました。「下側から、三分の一だけ……? なぜ、そんな、中途半端な切り方を、するんだ。しかも、下から、なんて」

③ この切り込みが「ブレーキ」になる

「それには、ちゃんとした、理由があるんす」とズボ太は、得意げに、説明しました。

「さっき、言ったっすよね。太い枝を、上から切ると、途中で折れて、皮が、下に、ベリベリッて、剥がれちゃうって。あの、皮が剥がれるのを、止めるための、『ブレーキ』が、この、下からの切り込み、なんすよ」

「ブレーキ……?」ギアが、身を乗り出しました。

「そうっす」とズボ太。「枝の下側に、あらかじめ、切り込みを入れておくと、どうなると思います? あとで、枝が、折れて落ちるとき、皮が、下に、剥がれていこうとしても――この、下の切り込みのところで、ピタッと、止まるんす。切り込みが、皮が裂けていくのを、せき止める、ストッパーの、役割を、するんすよ」

ズボ太は、続けました。「もし、この、下からの切り込みが、なかったら、皮は、どこまでも、下に、剥がれ続けちゃう。でも、切り込みが、あれば、皮の剥がれは、そこで、ストップする。だから、この、ステップ1が、いちばん、大事なんす」

④ なぜ「下から」で「三分の一」なのか

ギアは、感心しながらも、さらに、質問を、重ねました。「なるほど……だが、なぜ、三分の一、なんだ? もっと、深く、切り込んでは、いけないのか?」

「いい質問っすね」とズボ太。「それ以上、深く切ると、危ないんす。下から、半分以上、切り込んじゃうと、枝の重みで、切り込みの部分が、ぐっと、閉じてきて、ノコギリの刃が、枝に、はさまって、動かなくなっちゃうんす。これを『刃が噛む』って言うんすけど、そうなると、ノコギリが、抜けなくなって、作業が、できなくなるんすよ」

「刃が、はさまる……それは、困るな」とギア。

「だから、下からの切り込みは、三分の一くらいで、止めておくのが、ちょうどいいんす」とズボ太。「刃が、はさまらず、それでいて、皮の剥がれを止める、ブレーキとしては、十分に、効く。三分の一、っていうのは、そういう、絶妙な、深さなんすよ」

⑤ 読者のあなたへ、ステップ1のポイント

ここで、読んでいるあなたにも、ステップ1のポイントを、整理して、お伝えします。太い枝を切る、三段切りの、最初のステップです。

まず、切りたい枝の、幹から少し離れた位置で、枝の「下側」から、ノコギリを入れます。切り込む深さは、枝の太さの、三分の一くらいまでです。全部は、切りません。

この、下からの切り込みが、とても重要な役割を、果たします。あとで枝を切り落とすとき、枝の重みで、幹の皮が下へ剥がれていくのを、この切り込みが、せき止める「ブレーキ」に、なるのです。切り込みを、三分の一で止めるのは、それ以上深く切ると、枝の重みで、ノコギリの刃が、はさまって、動かなくなってしまうからです。「幹から離れた位置で、下から、三分の一」。これが、ステップ1の、合言葉です。

⑥ ギア、最初の切り込みへ

説明を聞き終えたギアは、大きく、うなずきました。

「よし、理解した。まず、幹から離れた位置で、枝の下側から、三分の一、切り込みを入れる。これが、皮の剥がれを止める、ブレーキになる、というわけだな」

「その通りっす、ギアさん!」とズボ太。「さすが、天才メカニック。飲み込みが、早いっす」

ギアは、巨大な蒸気駆動式ノコギリを、構え直しました。そして、腐った太枝の、幹から少し離れた位置の、下側に、刃を、当てました。

「いくぞ……ステップ1だ」

ブシュゥゥゥ……ッ! 蒸気ノコギリの刃が、高速で回転し、太枝の下側に、切り込みを、入れ始めました。ギアは、ズボ太の指示通り、三分の一の深さで、ぴたりと、刃を、止めました。

「よし、これで、ブレーキは、完成っす!」とズボ太。「でも、まだ、油断しちゃダメっすよ。ここからが、本番――ステップ2っす。この、下の切り込みを、活かすための、上からの、切り落としに、入るっす」

巨大兵器の暴走を止める、三段切り。その、最初の一歩が、いま、確かに、踏み出されたのです。

第5章 ステップ2・上からの切り落とし ~重い枝を安全に落とす~

① 「次は、上から、切り落とすっす」

下からの切り込みが、無事に、入りました。ズボ太は、額の汗を、ぬぐいながら、次の指示を、出しました。

「ギアさん、いよいよ、ステップ2っす。今度は、重い枝の、本体を、切り落とすっすよ」

ギアが、うなずきました。「今度は、どこを、切ればいいんだ?」

「今度は、上から、切るんす」とズボ太。「でも、ただ、上から切るんじゃ、ないっすよ。切る場所が、超・重要なんす。よーく、聞いてくださいね」

ギアは、真剣な表情で、ズボ太の言葉に、耳を、傾けました。ここを、間違えると、せっかくのステップ1が、無駄になってしまう。そんな、緊張感が、二人の間に、走りました。

② ステップ2・切り込みより「少し外側」の上から切る

「ステップ2で、切る場所は――さっき、下から切り込みを入れた場所より、ほんの少し、外側っす」ズボ太は、太枝の、先のほうを、指さしました。「外側、っていうのは、幹から見て、枝の先っぽに近いほう、っていう意味っす。下の切り込みより、ちょっとだけ、先のほうの、上から、ノコギリを、入れるんす」

「下の切り込みより、少し、先のほうの、上から……だな」とギア。

「そうっす。そこから、上から、下に向かって、バッサリと、切っていくんす」とズボ太。「今度は、三分の一とかじゃなくて、枝を、完全に、切り落とすつもりで、切るっす。そうすると、途中で、枝が、その重みで、ボキッと、折れるっすけど――それで、いいんす」

ギアが、驚いて、聞き返しました。「折れて、いいのか!? さっき、折れると、皮が剥がれるから、危険だと、言っていたじゃないか」

③ 下の切り込みが、皮の剥がれを止める

「そこが、この、三段切りの、すごいところなんす!」ズボ太は、目を輝かせて、言いました。

「たしかに、枝は、途中で、折れるっす。でも、思い出してください。さっき、ステップ1で、枝の下側に、切り込みを、入れましたよね。あの、下の切り込みが、あるおかげで、枝が折れて、皮が、下に、剥がれていこうとしても――下の切り込みのところで、ピタッと、止まるんす」

ズボ太は、身ぶりで、説明しました。「皮が、ベリベリッて、剥がれていっても、下の切り込みに、たどりついた瞬間、そこで、剥がれが、ストップする。それより先には、剥がれが、進まないんす。だから、幹の皮は、無事――全然、傷つかないんすよ」

ギアは、はっと、目を見開きました。「なるほど……! だから、先に、下から、切り込みを入れておいたのか……! あの切り込みが、皮の剥がれを、途中で、断ち切る、境界線に、なるんだな……!」

「その通りっす、ギアさん!」とズボ太。「これで、重くて、危ない枝の本体を、幹を傷つけずに、安全に、切り落とせるんす」

④ なぜ、切り込みより「外側」を切るのか

ギアは、深く感心しながらも、細かい点を、確認しました。「一つ、聞きたい。なぜ、上から切る場所は、下の切り込みより『少し外側』なんだ? 同じ場所を、切っては、いけないのか?」

「これも、大事なポイントっす」とズボ太。「もし、下の切り込みと、まったく同じ場所を、上から切ろうとすると、枝が折れるとき、刃が、下の切り込みと、ぶつかって、うまく、いかないことが、あるんす。それに、同じ場所だと、刃が、はさまりやすく、なるんすよ」

ズボ太は、続けました。「だから、下の切り込みより、ほんの少し、外側――先のほう、を、上から切る。そうすると、枝が折れたとき、折れる場所が、ちょうど、下の切り込みの、あたりに、なる。皮の剥がれが、下の切り込みで、きれいに、止まるんす。この、『少し外側』っていう、ズレが、大事なんすよ」

「少しの、ズレが、大事……奥が、深いな、剪定というのは」ギアは、しみじみと、つぶやきました。

⑤ 読者のあなたへ、ステップ2のポイント

ここで、読んでいるあなたにも、ステップ2のポイントを、整理して、お伝えします。

ステップ1で、枝の下側に、三分の一の切り込みを入れたら、次は、ステップ2です。今度は、その下の切り込みより、ほんの少し外側(枝の先のほう)の、上側から、ノコギリを入れて、枝を、切り落とします。

切っている途中で、枝が、その重みで、折れますが、それで、大丈夫です。ステップ1で入れた、下の切り込みが、あるおかげで、幹の皮が、下へ剥がれていくのを、その切り込みのところで、ピタリと、止めてくれます。だから、幹の皮は、傷つきません。上から切る場所を、下の切り込みより「少し外側」にするのは、枝が折れる位置を、下の切り込みのあたりに、うまく合わせて、皮の剥がれを、きれいに止めるためです。「下の切り込みより、少し外側の、上から、切り落とす」。これが、ステップ2です。

⑥ 巨大な枝が、落ちる

説明を聞き終えたギアは、力強く、うなずきました。「よし、分かった。下の切り込みより、少し外側の、上から、切り落とす。枝が折れても、下の切り込みが、皮の剥がれを、止めてくれる。……いくぞ!」

ギアは、蒸気駆動式ノコギリを、太枝の、下の切り込みより、少し外側の、上側に、当てました。そして、力を込めて、一気に、切り下げていきます。

ブシュゥゥゥ……メキメキメキ……ッ!

ノコギリが、枝の半分ほどまで、切り進んだところで、腐った巨大な太枝が、その重みに、耐えきれず――メキメキッ、ドオオオン! と、ものすごい音を立てて、折れ、落ちました。

地面が、大きく、揺れます。ズボ太も、ギアも、思わず、身構えました。そして――煙が、晴れたあと、二人が見たものは。

なんと、あれほど恐れていた、幹の皮の剥がれが、まったく、起きていなかったのです。下の切り込みのところで、皮の剥がれは、ぴたりと、止まっていました。幹の装甲は、一ミリも、傷ついていません。

「やった……! 幹が、無事だ……! 皮が、一切、剥がれていない……!」ギアが、感激の声を、上げました。

「でしょ? これが、三段切りの、力っす!」とズボ太。「でも、ギアさん、まだ、終わりじゃ、ないっすよ。仕上げの、ステップ3が、残ってるんす。ここを、ちゃんと、やらないと、木が、うまく、治らないんすよ」

重い枝の本体を、安全に、切り落とすことに、成功した二人。けれど、巨大兵器を、完全に、復活させるための、最後の、大切な仕上げが、まだ、残っていました。

第6章 ステップ3・元をきれいに切る ~切り口を最速で治す~

① 残った「切り株」の正体

巨大な太枝の本体が、落ちて、幹には、まだ、短い「切り株」のような部分が、残っていました。ステップ2で、幹から少し離れた位置を切ったので、その分の、枝の根元が、ちょこんと、突き出したままに、なっていたのです。

ギアは、それを見て、首をかしげました。「ズボ太、枝は、落とせたが……この、残った、出っ張りは、どうするんだ? このままでも、いいのか?」

「いや、ダメっす」とズボ太は、きっぱりと、言いました。「この、残った切り株――『元(もと)』って言うんすけど、これを、このまま、放っておくと、よくないんす。だから、最後の、ステップ3で、この、残った元を、きれいに、切るんす」

「なぜ、放っておくと、いけないんだ?」

「この出っ張りを、残したままだと、木が、切り口を、うまく、ふさげないんす」とズボ太。「そうすると、その部分から、枝が、枯れ込んだり、腐ったりして、結局、そこから、菌が入る原因に、なっちゃうんすよ。だから、仕上げが、大事なんす」

② ステップ3・「ブランチ・カラー」の外側で切る

「じゃあ、ステップ3、いくっす」ズボ太は、幹と、残った切り株の、つけ根の部分を、指さしました。「よーく、見てください、ギアさん。枝が、幹から、生えている、つけ根のところ。ここに、少し、ふくらんだ、輪っかみたいな部分が、ありますよね」

ギアが、目をこらしました。「ああ……たしかに。枝のつけ根が、少し、ふくらんで、輪のように、なっているな」

「それが、『ブランチ・カラー』って、呼ばれる、部分っす」とズボ太。「『カラー』は、襟(えり)、って意味っす。ちょうど、シャツの襟みたいに、枝のつけ根を、ぐるっと、囲んでる、ふくらみ、なんすよ。ここが、木が、傷を治すための、超・大事な、場所なんす」

ズボ太は、続けました。「ステップ3では、この、ブランチ・カラーの、すぐ、外側で、残った切り株を、切り落とすんす。カラーは、傷つけずに、残す。でも、切り株は、残さない。その、ギリギリのところで、切るのが、正解なんす」

③ なぜ、ブランチ・カラーを残すのか

「ブランチ・カラーを、傷つけちゃ、いけない……? なぜ、そんなに、大事なんだ?」ギアが、たずねました。

「そこが、木の、すごいところなんす」とズボ太は、少し、誇らしげに、説明しました。「このブランチ・カラーの中には、木が、傷を、治すための、特別な力が、詰まってるんす。木は、枝を切られると、この、カラーの部分から、『カルス』っていう、かさぶたみたいな、組織を、じわじわと、作り出して、切り口を、ふさいでいくんすよ」

「カルス……木の、かさぶた、か」

「そうっす」とズボ太。「人間が、けがをすると、かさぶたが、できて、傷が、治っていくでしょ? あれと、同じっす。木は、ブランチ・カラーから、カルスを、出して、切り口を、まわりから、だんだん、包み込んで、ふさいでいくんす。だから、このカラーを、傷つけずに、残しておくことが、切り口を、はやく、治すための、カギ、なんすよ」

④ 切りすぎても、残しすぎてもダメ

ズボ太は、注意点も、付け加えました。「ここで、大事なのは、切る位置っす。二つの、失敗パターンが、あるんす」

「一つ目は、切り株を、長く、残しすぎる失敗っす」とズボ太。「さっき言った、出っ張りを、残したまま、にする、パターンっすね。これだと、木が、カルスで、切り口を、ふさぎきれなくて、そこから、枯れ込んで、しまうんす」

「二つ目は、逆に、切りすぎる失敗っす」とズボ太は、続けました。「幹の、ギリギリを、狙いすぎて、ブランチ・カラーごと、ばっさり、切っちゃう、パターン。これだと、木の、傷を治す力の、大事な部分を、切り取っちゃうことに、なる。カラーが、なくなると、木は、カルスを、うまく、作れなくて、切り口が、いつまでも、ふさがらないんす」

「なるほど……残しすぎても、切りすぎても、いけない。ブランチ・カラーの、すぐ外側、という、ちょうどいい場所で、切ることが、大事なんだな」とギア。

⑤ 読者のあなたへ、ステップ3のポイント

ここで、読んでいるあなたにも、ステップ3のポイントを、整理して、お伝えします。三段切りの、仕上げの、ステップです。

ステップ2で、枝の本体を、切り落としたら、幹には、短い切り株が、残ります。ステップ3では、この、残った切り株を、きれいに、切り落とします。切る位置が、とても大切です。

枝のつけ根には、「ブランチ・カラー」という、少しふくらんだ、輪のような部分があります。ここには、木が傷を治すための、大切な力が詰まっています。木は、このカラーから「カルス」という、かさぶたのような組織を作って、切り口をふさいでいきます。ですから、切り株を切るときは、このブランチ・カラーを傷つけないよう、その「すぐ外側」で切ります。切り株を長く残しすぎると、切り口がふさがらず枯れ込み、逆にカラーごと切りすぎると、傷を治す力が失われます。「ブランチ・カラーの、すぐ外側で切る」。これが、切り口を最速で治す、ステップ3のコツです。

⑥ 三段切り、完成

説明を聞き終えたギアは、慎重に、蒸気駆動式ノコギリを、構えました。今度は、繊細な作業です。ギアは、ブランチ・カラーの位置を、しっかりと、見極めると、そのすぐ外側に、そっと、刃を、当てました。

「ブランチ・カラーの、すぐ外側……ここだな」

ブシュゥゥ……スパッ。

残っていた切り株が、なめらかに、切り落とされました。あとには、きれいで、まるい、なめらかな切り口だけが、残りました。ブランチ・カラーは、傷ひとつ、なく、無事です。これなら、木は、このカラーから、カルスを出して、はやく、切り口を、ふさいでいけるでしょう。

「完璧っす、ギアさん!」ズボ太が、歓声を、上げました。「下から切り込み、上から切り落とし、そして、最後に、元を、きれいに、整える。これで、三段切りの、完成っす! 幹は、無事、切り口も、きれい。腐った太枝を、安全に、取り除けたっすよ!」

ギアは、汗だくの顔で、にっと、笑いました。「やったな、ズボ太! お前の、教えてくれた、三段切り……見事、だった……!」

けれど、二人が、喜びを、かみしめる間もなく――巨大兵器「サクラ」の、内部から、これまでとは違う、不穏な音が、響いてきました。そして、蒸気圧を示す、巨大なメーターが、ついに、レッドゾーンへと、突入したのです。

「まずい……ズボ太! 蒸気圧が、限界だ! 急がないと、間に合わないぞ!」

腐った太枝は、取り除けました。けれど、それが、間に合ったのか、どうか。街の運命を、分ける、最後の、瞬間が、迫っていました。

第7章 決戦、蒸気圧レッドゾーン ~三段切り、実践のとき~

① レッドゾーンの、恐怖

巨大兵器「サクラ」の、蒸気圧メーター。その針が、ぐんぐんと、上がっていき、ついに、真っ赤な、レッドゾーンへと、突入しました。

キイイイイ……ンという、甲高い、警告音が、あたりに、鳴り響きます。巨大兵器の、あちこちから、これまで以上に、激しく、黒い蒸気が、噴き出し、機械全体が、ぐらぐらと、震え始めました。

「まずい……! 蒸気圧が、限界を、超えかけている!」ギアが、メーターを、見上げて、叫びました。「腐った太枝は、取り除いた! でも、たまりにたまった、蒸気圧が、まだ、下がっていない! このままじゃ、太枝を取り除いた意味が、なくなる……爆発するぞ!」

ズボ太も、青ざめました。「そんな……せっかく、三段切りが、成功したのに……!」

② ズボ太、最後まで、あきらめない

けれど、ズボ太は、ここで、あきらめませんでした。以前の、ズボラなズボ太なら、「もうダメだ」と、投げ出していたかもしれません。でも、今のズボ太は、違いました。

「ギアさん、落ち着いて、考えるっす!」ズボ太は、必死に、頭を、働かせました。「腐った太枝が、詰まって、エネルギーの流れを、せき止めてた、んすよね。その太枝を、今、取り除いた。ってことは、せき止められてた、エネルギーの、流れ道が、開いた、はずっす」

「流れ道が、開いた……?」

「そうっす!」とズボ太。「今まで、詰まってたせいで、たまってた、蒸気圧が、これから、その、開いた流れ道を、通って、一気に、正しい方向に、流れ出す、はずなんす。少しだけ、時間が、かかるかもしれないけど……信じて、待つしか、ないっす!」

ズボ太の言葉に、ギアも、はっと、しました。「そうか……詰まりが、取れたことで、圧が、正しく、循環し始める……なら、この、レッドゾーンは、爆発の前兆じゃなくて、圧が、抜けていく、途中の、山かもしれん……!」

③ 祈るような、数秒間

二人は、固唾をのんで、巨大兵器「サクラ」を、見守りました。

メーターの針は、レッドゾーンの、いちばん奥――「限界」を示す、線の、すぐ手前で、ぷるぷると、震えています。あと少しでも、上がれば、大爆発。街は、吹き飛んでしまう。永遠にも、思える、数秒間でした。

ギシギシ……ゴゴゴ……と、巨大兵器が、うなります。ズボ太は、思わず、両手を、握りしめ、祈りました。「頼む……流れてくれ……ちゃんと、循環してくれ……!」

その、瞬間でした。

④ ピンク色の、美しい蒸気

ズゴオオオオ……ンッ!

巨大兵器「サクラ」の、動力炉から、これまでの、黒く、不穏な蒸気とは、まったく違う――淡く、美しい、ピンク色の蒸気が、勢いよく、噴き出したのです。

まるで、満開のサクラの花びらが、風に舞うような、幻想的な、光景でした。そのピンク色の蒸気は、巨大兵器の、体じゅうの、パイプを、めぐり、詰まっていたエネルギーが、正しく、循環し始めた、証でした。

そして――レッドゾーンで、震えていた、蒸気圧メーターの針が、すうっと、下がり始めたのです。限界の線から、遠ざかり、やがて、安全な、青いゾーンへと、戻っていきました。

キイイイ……という、警告音も、ぴたりと、やみました。巨大兵器の、激しい震えも、おさまり、あたりに、静けさが、戻ってきました。

「と……止まった……」ギアが、信じられない、というように、つぶやきました。「暴走が……完全に、止まったんだ……!」

⑤ 街を、救った二人

「やった……やったっす、ギアさん! 街が、救われたっす!」ズボ太が、飛び上がって、喜びました。

腐った太枝――暴走の原因だった、枯れ枝動脈を、三段切りで、安全に、取り除いたこと。それによって、エネルギーの流れが、正しく、循環し始め、暴走は、完全に、停止したのです。スチームシティは、街ごと吹き飛ぶ、という、最悪の運命から、救われました。

動力炉から、噴き出す、ピンク色の、美しい蒸気は、まるで、満開のサクラのように、街全体を、優しく、包み込みました。街の人々が、次々と、外に出てきて、その、幻想的な、光景に、歓声を、上げています。

「見ろ、あの、ピンクの蒸気を……!」
「サクラが、正常に、動き出したぞ!」
「俺たちの街は、助かったんだ……!」

その、歓喜の中心で、ズボ太と、ギアは、固く、手を、握り合っていました。

⑥ 「お前は、最高の庭師だ」

ギアは、ズボ太の手を、強く、握りしめながら、感激で、声を、震わせました。

「すげぇや、ズボ太……! お前の、『三段切り』の技術が、なかったら、この街は、間違いなく、吹っ飛んでた……! 太い枝を、幹を傷つけずに、切り落とす。あの技術が、俺たちを、救ったんだ……!」

ギアは、ゴーグルを、外し、まっすぐに、ズボ太を、見つめました。その目には、うっすらと、涙が、にじんでいました。「お前は、最高の、メカニック……いや、最高の、庭師だ! 心から、礼を、言わせてくれ。ありがとう、ズボ太……!」

ズボ太は、照れくさそうに、頭を、かきました。「いやあ、俺、ただ、親方に、教わったことを、思い出しただけ、なんすけどね……」

けれど、その胸の内は、これまでに、感じたことのない、誇らしさで、いっぱいでした。あれほど「めんどくさい」「一発で切りたい」と、横着していた、太い枝の切り方。その、地道な技術が、いま、一つの街と、何万もの命を、救ったのです。

そのとき――役目を終えた、巨大兵器「サクラ」が、ひときわ大きく、ピンク色の蒸気を、噴き上げました。その、あたたかな蒸気の幕が、ズボ太の体を、ふわりと、包み込んでいきます。

「あれ……なんか、体が……」

ズボ太の意識は、その、美しいサクラ色の蒸気の中へと、優しく、溶けていきました。ギアが、笑顔で、手を振っているのが、見えます。「達者でな、ズボ太……! お前のこと、忘れないぜ……!」

こうして、ズボ太の、異世界での、大冒険は、幕を、閉じたのです。

第8章 日常への帰還 ~横着しない、ズボ太~

① 気がつけば、いつもの庭

「ズボ太! おい、ズボ太! 何を、ぼーっと、してるんだ!」

聞き慣れた、親方の声に、ズボ太は、はっと、我に返りました。

目を、こすって、あたりを見回すと、そこは、煙と歯車の街でも、巨大兵器の足元でも、ありませんでした。見慣れた、現代の庭。目の前には、剪定しかけの、サクラの木が、静かに、立っています。そして、ズボ太の手には、いつもの、ノコギリが、握られていました。

「あれ……俺……帰ってきた、のか……?」ズボ太は、きょとんと、しました。

あの、蒸気ポンプの破裂も、スチームシティも、天才メカニックのギアも、巨大兵器「サクラ」の暴走も――もしかして、全部、夢だったのでしょうか。それとも、本当に、あったことなのでしょうか。ズボ太自身にも、分かりませんでした。

② 手に残った、確かな技術

けれど、一つだけ、はっきりしていることが、ありました。

ズボ太が、目の前のサクラの、太い枝を、見上げると――その枝の、切り方が、頭の中に、はっきりと、浮かんできたのです。まるで、体が、覚えているかのように。

「太い枝は、一発切りしちゃ、ダメ。まず、幹から離れた位置で、下から、三分の一、切り込む。次に、その少し外側の、上から、切り落とす。最後に、ブランチ・カラーの、すぐ外側で、元を、きれいに、切る……」

ズボ太の頭の中で、三段切りの手順が、すらすらと、よみがえってきました。夢か、現実かは、分かりません。けれど、あの、命がけの経験は、確かに、ズボ太の中に、生きた技術として、刻まれていたのです。

③ 横着せずに、三段切り

ズボ太は、ノコギリを、握り直すと、サクラの太い枝に、向き合いました。

以前のズボ太なら、「めんどくせえ」と、上から、一発で、切り落とそうとしていたはずです。けれど、今のズボ太は、違いました。

まず、幹から少し離れた位置で、枝の下側から、ノコギリを入れ、三分の一まで、切り込みます。「これが、皮の剥がれを止める、ブレーキ……」次に、その少し外側の、上から、枝を、切り落とします。枝は、途中で、ボキッと折れましたが、下の切り込みのおかげで、幹の皮は、一ミリも、剥がれません。「よし、幹は、無事だ」そして、最後に、残った切り株を、ブランチ・カラーの、すぐ外側で、きれいに、切り落としました。

なめらかで、まるい、美しい切り口が、残りました。ズボ太は、手際よく、危なげなく、太い枝の剪定を、終えたのです。その手つきは、もう、あの、横着ばかりの、新人のものでは、ありませんでした。

④ 親方も、びっくり

その様子を、後ろで見ていた親方が、目を、丸くしました。

「へぇ……? ズボ太、お前……」親方は、ズボ太の仕上げた、サクラの切り口を、じっくりと、確認しました。幹の皮は、まったく剥がれておらず、切り口は、ブランチ・カラーを残して、きれいに、仕上がっています。「珍しく、横着しないで、ちゃんと、三段切りで、切ってるじゃねえか。しかも、切り口も、完璧だ。どうした、ズボ太? 何か、あったのか?」

いつもは、ズボ太の横着ぶりに、小言ばかりの親方が、めずらしく、感心した様子で、たずねました。「太い枝の、三段切りは、面倒がって、省くやつが、多いんだ。それを、こんなに、ていねいに……いったい、どういう、心境の変化だ?」

⑤ 遠い目で、つぶやくズボ太

親方に、聞かれて、ズボ太は、ふと、手を止めました。そして、遠くを見つめるような目で、しみじみと、つぶやいたのです。

「いやあ……太い枝を、一発切りしようとすると、蒸気機関が、暴走して、街が、吹っ飛びますからね……」

その言葉に、親方は、ぽかんと、口を、開けました。「は……? 蒸気機関……? 街が、吹っ飛ぶ……? おいおい、ズボ太、お前、何を、言ってるんだ。また、変な漫画の、読みすぎか?」

親方には、ズボ太の言葉の意味が、まったく、分かりませんでした。蒸気機関だの、暴走だの、街が吹っ飛ぶだの――いったい、何のことやら、さっぱりです。首を、かしげるばかりでした。

けれど、ズボ太の中には、あの、異世界での、大冒険の記憶が、そして、ギアという、頼もしい相棒との、忘れられない絆が、確かに、刻まれていました。夢だったのか、現実だったのか。それは、ズボ太にしか、分かりません。

⑥ ズボ太、一人前への一歩

ズボ太は、もう一度、きれいに剪定された、サクラの木を、見上げました。

その顔は、どこか、誇らしげでした。あれほど「一発で切りたい」「三段切りなんて面倒」と、横着していた、太い枝の切り方。それが、今では、ズボ太の、大切な、得意技になっていたのです。

「太い枝は、横着しちゃ、ダメ。下から切り込み、上から切り落とし、最後に、元を、きれいに整える。これで、木を傷つけずに、切れる。……よし、完璧だ」

ズボラな新人だったズボ太が、異世界での、命がけの経験を経て、また一つ、一人前の職人に、近づいた瞬間でした。庭には、正しく剪定された、サクラの木が、静かに、けれど、誇らしげに、立っています。

その、なめらかな切り口は、これから、ブランチ・カラーから、カルスを出して、ゆっくりと、ふさがっていくことでしょう。そして、来年の春には、このサクラも、きっと、あの巨大兵器が噴き出した蒸気のような、美しいピンク色の花を、満開に、咲かせるに、違いありません。

シャクッ、シャクッ――。ズボ太のノコギリが、次の枝に向かって、軽やかに、動き出しました。その音は、まるで、ズボ太の、これからの成長を、祝福しているかのようでした。

――おしまい。

まとめ:今回の物語に登場した剪定ノウハウ

物語を楽しんでいただけたでしょうか。ここからは、ズボ太とギアが教えてくれた、サクラの太い枝の剪定ノウハウを、もう一度わかりやすく整理してお伝えします。物語でイメージをつかんだうえで読むと、ぐっと頭に入りやすくなるはずです。

① 太い枝の「一発切り」は絶対にダメ

太い枝を、上から一気に切り落とすのは、いちばんやってはいけない切り方です。太い枝は重いので、切っている途中で、自分の重みに耐えきれず、ボキッと折れてしまいます。そのとき、折れた枝が、幹の皮を、下へとベリベリッと大きく剥がしてしまいます。とくにサクラは、傷口から腐りやすいデリケートな木なので、皮が剥がれた傷口から菌が入り、木が枯れる原因になります。

② ステップ1:幹から離れた位置で、下から三分の一切り込む

三段切りの最初のステップです。切りたい枝の、幹から少し離れた位置で、枝の下側から、ノコギリを入れ、枝の太さの三分の一くらいまで切り込みます。この切り込みが、あとで枝を切り落とすとき、幹の皮が下へ剥がれるのを止める「ブレーキ」になります。三分の一で止めるのは、深く切りすぎると、枝の重みでノコギリの刃がはさまってしまうからです。

③ ステップ2:少し外側の、上から切り落とす

次に、ステップ1で入れた下の切り込みより、少し外側(枝の先のほう)の、上側からノコギリを入れて、枝を切り落とします。途中で枝が折れても大丈夫です。下の切り込みが、皮の剥がれをそこで止めてくれるので、幹の皮は傷つきません。上から切る場所を「少し外側」にするのは、枝が折れる位置を、下の切り込みにうまく合わせるためです。

④ ステップ3:ブランチ・カラーのすぐ外側で、元を切る

枝の本体を落とすと、幹に短い切り株が残ります。これを、ブランチ・カラー(枝のつけ根の、少しふくらんだ輪のような部分)の、すぐ外側で、きれいに切り落とします。切り株を長く残すと切り口がふさがらず枯れ込み、逆にカラーごと切りすぎると傷を治す力が失われるので、その中間の、ちょうどよい位置で切ります。

⑤ 「ブランチ・カラー」が切り口を治す

ブランチ・カラーには、木が傷を治すための大切な力が詰まっています。木は、このカラーから「カルス」という、かさぶたのような組織を作り出し、切り口をまわりから包み込むようにふさいでいきます。だから、このカラーを傷つけずに残すことが、切り口を最も早く、きれいに治すためのカギになります。

⑥ ひと手間が、木の命を守る

三段切りは、一発切りに比べれば、たしかに手間がかかります。けれど、そのひと手間が、幹の皮を守り、木を病気や枯れから守るのです。急がば回れ。太い枝ほど、ていねいに、三段階に分けて切る。これが、サクラをはじめ、多くの木を、長く元気に育てるための、大切な基本です。

物語のズボ太のように、最初は「一発で切りたい」「面倒だ」と思うかもしれません。けれど、下から切り込み、上から切り落とし、最後に元をきれいに整える、この三段切りを覚えれば、あなたも、太い枝を、木を傷つけずに、安全に切れるようになります。ぜひ、あなたのお庭のサクラや、太い枝の剪定に、役立ててください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。