【剪定小説】生け垣レッドロビンの剪定と、ゾンビが侵入できない鉄壁の要塞都市

第1章 包囲された要塞都市サクラ ~「上だけ切ればいい」が招く絶望~

この記事は、生け垣レッドロビンの剪定の時期や、正しい切り方、密に茂らせるコツを、退屈な説明抜きで、手に汗握るゾンビサバイバル物語として楽しく学べる記事です。

「剪定の本を読んでもなかなか頭に入らない」
「専門用語が多くて、結局どう切ればいいのか分からない」
という方にこそ読んでほしい内容になっています。

物語を読み終わるころには、あなたの家の生け垣を、見違えるほど美しく、そして丈夫に育てるコツが、自然と頭に入っているはずです。それでは、ゾンビがあふれる世界へご案内します。

■① まさかの世界へようこそ

西暦20XX年。世界は、突然あらわれた謎のウイルスによって、見るも無残な姿に変わり果てていました。死んだはずの人間が起き上がり、生きている人間を襲う。いわゆる「ゾンビ」が、街中にあふれかえってしまったのです。

そんな絶望的な世界の中で、わずかに生き残った人々が身を寄せ合って暮らす場所がありました。その名も「要塞都市サクラ」。高い壁と緑の生け垣にぐるりと囲まれた、最後の楽園のような場所です。

しかし、その楽園も、決して安全ではありませんでした。壁の外には、いつだって腹を空かせたゾンビの群れがうろついています。一瞬でも気をゆるめれば、たちまち壁を乗り越えられ、都市は地獄に変わってしまう。そんなギリギリの毎日が続いていたのです。

■② 「めんどくさい」が口ぐせの新人

そんな要塞都市サクラに、一人の新人防衛隊員がいました。名前は「ズボ太」。

ズボ太は、とにかく面倒くさがり屋でした。「楽できるなら楽したい」「キツい仕事は誰かがやってくれればいい」が信条の、筋金入りのズボラ人間です。あなたの周りにも、一人くらいはこういう人がいるのではないでしょうか。あるいは、「実は自分もそうかも」と、ちょっとドキッとした方もいるかもしれません。

ズボ太は、防衛隊の中でも一番キツいと言われる「外壁管理班」に配属されていました。外壁管理班の仕事は、都市をぐるりと囲む生け垣、つまり「レッドロビン」のお手入れです。

レッドロビンというのは、春になると燃えるように真っ赤な新芽を出す、とても丈夫で美しい植物です。生け垣としては日本中でとても人気があり、あなたの家のお庭やご近所でも、きっと見たことがあるはずです。この都市では、その丈夫なレッドロビンが、ゾンビの侵入を防ぐ大切な「防衛壁」の役割を果たしていたのです。

■③ 雑な仕事が招いたもの

ところがズボ太は、この大切な生け垣のお手入れを、とにかく適当にこなしていました。

「生け垣の手入れなんて、上だけバツバツ切っておけばいいっしょ」

そう言って、脚立にも乗らず、手の届く上のほうだけを、ハサミでザクザクと雑に刈り込んでいたのです。下のほうの枝には目もくれません。だって、しゃがんだり、奥をのぞき込んだりするのは、面倒くさいですから。

その結果、ズボ太が担当する東側の生け垣は、上のほうこそ葉が茂っているものの、下のほうはスカスカで、向こう側が透けて見えるほどになっていました。まるで、頭は髪がふさふさなのに、足元はスースーしている、そんなアンバランスな状態だったのです。

■④ ここで知ってほしい大切なこと

実は、このズボ太のやり方、剪定の世界では「やってはいけない失敗の代表例」なのです。

植物には「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があります。難しい言葉ですが、簡単に言うと「植物は、てっぺんの芽を一番大事に育てようとする」という性質のことです。

上だけを刈り込んで放っておくと、植物はますますてっぺんばかりを茂らせようとします。すると、上の葉が日傘のように日光をさえぎってしまい、下のほうの枝には光が届かなくなります。光が届かない枝は、だんだん弱って、葉を落とし、スカスカになってしまうのです。これが、ズボ太の生け垣が下スカスカになった本当の理由でした。

■⑤ スカスカでも、まだ間に合う

「下がスカスカになっちゃった・・・もうこの生け垣はダメなのかな」

もし、あなたの家の生け垣が同じような状態でも、どうか安心してください。レッドロビンはとても生命力が強い植物です。正しい時期に、正しい方法で刈り込んであげれば、スカスカだった下のほうにも、ちゃんと新しい芽を吹かせて、密でぎっしりした美しい壁を取り戻すことができます。

物語の中で、ズボ太もこのあと、厳しくも頼れる司令官に出会い、本物の剪定の技術を学んでいくことになります。その技術は、そのままあなたの生け垣にも使える、本物のノウハウです。

■⑥ さあ、司令官のもとへ

その日も、ズボ太はいつものように、上だけをザクザクと刈り込んで、「よし、今日のノルマ終わり」と道具を片付けようとしていました。

ところが、その背後に、ゆっくりと近づいてくる足音があったのです。ピタリと止まる足音。そして、地の底から響くような、低い声。

「・・・ズボ太。貴様、その生け垣の下を見てみろ」

声の主は、防衛隊のトップであり、外壁管理班を束ねる、あの厳格な男――サナダ司令官でした。

ズボ太の運命が、そして、要塞都市サクラの運命が、ここから大きく動き始めます。

第2章 サナダ司令官の熱血剪定指導 ~スカスカの壁に潜む死の入り口~

■① 胸ぐらをつかまれて

「ひっ・・・!」

ズボ太がふり返ると、そこには鬼のような顔をしたサナダ司令官が立っていました。サナダは、戦争前は超一流の植木職人だったという、伝説の腕を持つ男です。その目は鋭く、まるで枝の一本一本まで見透かしているようでした。

「貴様、この生け垣を『手入れした』と言うつもりか」

サナダは、ズボ太の胸ぐらをぐいっとつかみ上げると、生け垣の下のほうへ、無理やり顔を近づけさせました。ズボ太の目の前には、葉が落ちてスカスカになり、向こう側の景色まで透けて見える、みじめな枝の姿がありました。

「下を見ろ。光が見えるだろう。向こう側が見えるということは、ゾンビにとっても、ここが『入り口』に見えているということだ」

■② その気持ち、分かります

ズボ太は、こわごわ言い返しました。

「で、でも司令官・・・生け垣の手入れなんて、見えてる上のほうをそろえれば、それでいいんじゃないっすか? 下のほうなんて、しゃがまないと見えないし・・・正直、めんどくさいっす」

実は、このズボ太の気持ち、とてもよく分かります。生け垣のお手入れというと、多くの方が「外から見える表面を、きれいにそろえること」だと思いがちです。下のほうや内側まで気を配る人は、なかなかいません。重いハサミを持って、しゃがんだり、奥に手を入れたりするのは、確かに骨が折れる作業です。

ですが、サナダ司令官は、まさにその「見えないところ」にこそ、命運がかかっていると知っていたのです。

■③ スカスカの正体は「光不足」

「いいか、ズボ太。よく聞け」

サナダは、ズボ太を地面に下ろすと、生け垣を指さしながら、ゆっくりと語り始めました。

「貴様が上だけ適当に刈り込むから、下枝に光が当たらず、スカスカになるんだ。植物はな、上の芽を一番に育てようとする『頂芽優勢』という性質を持っている。だから、上だけ伸ばし放題にすれば、上の葉が日光をすべて独り占めし、下の枝は日陰になって枯れていく。当たり前のことだ」

「そして、そのスカスカになった下の隙間から、何が入ってくると思う? ネズミだ。害虫だ。――この世界では、ゾンビだ。お前の『めんどくさい』の一言が、都市に死を招く入り口を作っているんだぞ!」

ズボ太は、ゴクリとつばを飲み込みました。たしかに、自分が刈り残した下の隙間は、小動物どころか、人ひとり通れそうなほど、ぽっかりと空いていたのです。

■④ 病気も「風通し」で防げるという新発見

「それに、だ」とサナダは続けます。

「枝葉が混み合って風通しが悪くなると、レッドロビンは恐ろしい病気にかかる。『ごま色斑点病(ごまいろはんてんびょう)』という病気だ」

サナダは、近くの葉を一枚むしり取って見せました。その葉には、ごまをまいたような、赤紫色の小さな斑点がいくつも浮かんでいました。

「この病気は、まるでウイルスのように葉から葉へ広がり、やがて木を丸裸にして枯らしてしまう。ゾンビウイルスと同じだ。一度はやり始めると、止まらない。そして、この病気が一気に広がる原因こそ――風通しの悪さ、つまり『剪定をサボること』なんだ」

ズボ太はハッとしました。混み合った枝を放っておくこと、めんどくさがって透かさないこと。それが、植物の世界では「病気を呼び込む行為」だったのです。風通しを良くするために、混んだ枝を間引いて透かしてあげること。それが、木を健康に保つ秘訣だったのです。

■⑤ サナダが見せた「正しい壁」

「希望はある。今ならまだ間に合う」

サナダは、自分が管理している隣の区画へ、ズボ太を連れて行きました。そこには、ズボ太のスカスカな生け垣とは、まるで別物の壁がありました。

上から下まで、隙間なくびっしりと葉が茂り、向こう側はまったく見えません。さらに、その表面は、燃えるように赤い新芽でおおわれ、まるで巨大な生き物のようにつややかに輝いていたのです。手を当ててみると、その壁は驚くほど硬く、密で、押してもびくともしませんでした。

「これが、正しく剪定されたレッドロビンの壁だ。上だけでなく、全体を均一に刈り込み、下まで光を届かせる。そうすれば、下の枝からも芽が吹き、上から下まで、隙間のない鉄壁になる。同じレッドロビンでも、手入れ次第で、これほど違うのだ」

■⑥ ズボ太、しぶしぶ動き出す

ズボ太は、自分の壁とサナダの壁を、何度も見比べました。

「・・・たしかに、全然ちがう。こんなに密だったら、ゾンビどころか、ネズミ一匹通れないっすね」

「分かったなら、やることは一つだ」とサナダは言いました。「明日から、貴様の壁を作り直す。上だけでなく、全体を、下まで光が届くように、均一に刈り込むんだ。やり方は、俺が一から仕込んでやる」

「えぇ・・・マジっすか。めんどくさ・・・」

口ではそう言いながらも、ズボ太の頭の中には、ある計算が浮かんでいました。「今サボって、あとでゾンビに襲われるほうが、よっぽどめんどくさいよな・・・」と。

ズボラな彼らしい、後ろ向きなやる気。けれど、それは確かに、ズボ太が初めて剪定と本気で向き合う、第一歩だったのです。

第3章 赤い新芽は最強の有刺鉄線 ~刈り込みが防御壁を変える瞬間~

■① なぜ「切る」と「強くなる」のか

翌朝、ズボ太はサナダ司令官に呼び出され、訓練場ならぬ「剪定実習場」に立っていました。

「司令官、一つ聞いていいっすか」とズボ太。「そもそも、なんで枝を切ると、壁が強くなるんすか? 切ったら、その分スカスカになるだけじゃ・・・」

サナダはニヤリと笑いました。「いい質問だ。多くの素人が、まさにそこを勘違いしている。だが、レッドロビンという植物は、切れば切るほど密になる――そういう仕組みを持っているんだ」

ズボ太は、きょとんとした顔をしました。切ったら減るのに、密になる。一見、矛盾しているように聞こえます。けれど、ここにこそ、レッドロビンを鉄壁に育てる最大の秘密が隠されていたのです。

■② 切られた枝は「倍」に増える

「植物の枝の先には、芽がある」とサナダは、一本の枝を手に取って説明を始めました。

「この枝の先を、ハサミでパチンと切る。すると植物は『大変だ、先っぽをやられた』と驚いて、切り口のすぐ下から、新しい芽を二つも三つも出そうとする。一本だった枝が、切られることで、二本、三本に枝分かれするんだ」

「ということは・・・」とズボ太。

「そうだ。刈り込むたびに、枝の数はどんどん増えていく。一本が二本、二本が四本、四本が八本だ。この枝分かれをくり返させることで、生け垣はだんだん密に、隙間なく茂っていく。だから、正しく刈り込めば刈り込むほど、壁は厚く、硬く、強くなるのだ」

ズボ太は思わず「おぉ・・・」と声をもらしました。切ることは、減らすことではなく、増やすこと。剪定の奥深さに、ズボラなズボ太も、少しだけ目を輝かせたのでした。

■③ 刈り込みは「年に三回」がねらい目

「では、いつ切ればいいのか。それが何より大事だ」

サナダは指を三本立てて見せました。

「レッドロビンの刈り込みは、年に三回が基本だ。一回目は春、五月から六月ごろ。二回目は夏、七月から八月ごろ。三回目は秋、九月から十月ごろ。この三回をきちんとやれば、レッドロビンは何度も新しい赤い芽を吹き、年じゅう密で美しい壁をたもつことができる」

「三回も・・・めんどくさ・・・」とズボ太がつぶやくと、サナダがじろりとにらみました。

「いいか、レッドロビンの美しさは、あの『赤い新芽』にある。新芽は、刈り込んだあとに出てくる。つまり、刈り込まなければ、あの赤は手に入らない。さぼれば、ただの地味な緑の木になり、しかも下がスカスカの、使い物にならない壁になる。年三回の手間が、鉄壁と赤い美しさを生むんだ」

ちなみに、刈り込む時期で一つだけ気をつけたいことがあります。あまり寒くなる秋の終わりや冬に強く刈り込むと、せっかく出た新芽が寒さで傷んでしまうことがあります。新芽を楽しみ、しっかり茂らせたいなら、暖かい季節の三回を守るのが、いちばんの近道です。

■④ 新芽は「赤いトゲ」になるという発想

「ここからが、本題だ」とサナダの声が、ぐっと低くなりました。

「貴様、あの赤い新芽を、ただ『きれいなだけのもの』だと思っているだろう。だが違う。あれは、最強の武器になる」

サナダは、刈り込んだばかりの枝の切り口を、ズボ太に触らせました。ズボ太が指でなぞると、「いてっ」と声をあげました。鋭いハサミでスパッと切られた枝の先は、まるで槍のようにとがって、硬くなっていたのです。

「分かるか。鋭いハサミで切った硬い枝の切り口は、こうしてとがった刃物になる。そして、刈り込みでぎっしり生えそろった若い赤葉と、この無数のとがった切り口――これらが組み合わさったとき、レッドロビンの壁は、ゾンビの皮膚をズタズタに切り裂く、最強の『生きた有刺鉄線』へと変わるのだ」

ズボ太は、ごくりとつばを飲みました。きれいな赤い生け垣が、急に恐ろしい防御兵器に見えてきたのです。

■⑤ ハサミ選びが、壁の強さを決める

「ただし」とサナダは、一本の道具を取り出しました。それは、よく手入れされた、銀色に光る刈り込みバサミでした。

「切り口をとがった刃物にするには、よく切れる鋭いハサミが必要だ。切れ味の悪いハサミで切ると、枝の切り口がつぶれ、ぐしゃぐしゃになる。そんな切り口は、武器にならないどころか、そこから雑菌が入って、木が病気になる原因にもなる」

サナダがズボ太に手渡したのは、「おの義」のしっかりとした刈り込みバサミでした。手になじむ柄と、吸いつくような切れ味。ズボ太が試しに枝を切ると、抵抗なくスパッと切れて、切り口は美しくとがっていました。

「いいか、ノコギリで太い枝をギコギコ切るような乱暴な真似はするな。生け垣の刈り込みは、よく切れる刈り込みバサミで、すばやく、なめらかに。道具をけちる者は、壁の強さもけちることになる。良い道具は、良い壁を作る。覚えておけ」

ちなみに、もしご家庭でレッドロビンを育てているなら、ノコギリでガリガリ切るのではなく、切れ味のよい刈り込みバサミを一本用意するだけで、仕上がりがぐっと変わります。切り口がきれいだと、見た目が美しいだけでなく、病気にも強くなるのです。

■⑥ いよいよ、壁づくりが始まる

ズボ太は、手の中の「おの義」のハサミを、じっと見つめました。ずっしりとした重みが、なぜか頼もしく感じられます。

「司令官。年に三回、全体を均一に、下まで光が届くように刈り込む。鋭いハサミで、切り口をとがらせる。それで、ゾンビも通さない鉄壁になるんすね」

「飲み込みが早いじゃないか」とサナダは、めずらしく口元をゆるめました。「あとは、貴様がそれを、実際にやり切れるかどうかだ。さあ、行くぞ。貴様のスカスカの壁を、本物の要塞に作り変える。今日からが、本番だ」

「うっす・・・!(やっぱめんどくさいけど、やるしかないか)」

こうしてズボ太は、生まれて初めて、本気で生け垣と向き合うことになりました。彼の刈り込みが、のちに都市の運命を救うことになるとは、このときはまだ、誰も知るよしもありませんでした。

第4章 ズボ太、壁と向き合う ~めんどくさがりの本気~

■① 「どこから切ればいいんすか」

実習場での説明が終わり、ズボ太はいよいよ、自分のスカスカな東側の生け垣の前に立ちました。「おの義」の刈り込みバサミを手に持ってはみたものの、いざ本物の壁を目の前にすると、どこから手をつけていいのか分かりません。

「司令官・・・正直、どこからどう切ればいいか、さっぱりっす」

サナダはうなずきました。「素直でよろしい。分からないのに知ったかぶりで切る奴が、いちばん壁を台無しにする。順番を教えてやる。その通りにやれば、貴様のような素人でも、ちゃんとした壁が作れる」

実は、これはとても大切なことです。剪定は、やみくもにハサミを動かしても、うまくいきません。正しい「順番」と「考え方」を知っているかどうかで、仕上がりがまるで変わってくるのです。

■② まずは「上を平らに、横をまっすぐ」

「最初にやるのは、全体の形を決めることだ」とサナダ。

「生け垣の理想の形は、上の面が平らで、横の面がまっすぐな、四角い形だ。まず、上の飛び出している枝を、水平に刈りそろえる。次に、横の面を、上から下まで、まっすぐ垂直に刈りそろえていく。このとき、ハサミを大きく動かして、面でなでるように刈ると、きれいにそろう」

ズボ太は、教わった通り、上の面を水平にそろえ始めました。「おの義」のハサミは、軽く動かすだけで枝をスパスパと切ってくれます。「お、なんか気持ちいいかも」と、ズボ太の手が少しずつなめらかになっていきました。

■③ 一番の難所「下まで光を届かせる」

ところが、ここでサナダから、特別な指示が飛びました。

「いいか、ここが一番大事だ。生け垣は、上の面より、下の面をほんの少し広くするんだ。つまり、横から見たときに、台形――富士山のような、すそ広がりの形にする」

「えっ、なんでっすか? 四角じゃダメなんすか」とズボ太。

「四角にすると、上の枝が日傘になって、下に光が届かない。だから、上を少しせまく、下を少し広くする。そうすれば、太陽の光が下の枝まで、すーっと届く。光が届けば、下からも芽が出て、下までびっしり茂る。スカスカの再発を防ぐ、たった一つの方法だ」

なるほど、と読んでいるあなたも思われたのではないでしょうか。生け垣を上から下まで密にしたいなら、形は「下すぼまり」ではなく「下広がり」。これは、プロの植木職人が必ず守る、とても大切なコツなのです。

■④ 「めんどくさい」が「ていねい」に変わる

ズボ太は、下を広めに残すよう意識しながら、しゃがみ込み、生け垣の下のほうにも、ていねいにハサミを入れていきました。これまでなら、絶対にやらなかった作業です。

「うわ、奥のほうに、枯れ枝めっちゃあるじゃん・・・」

下のほうをのぞき込んだズボ太は、内側に枯れた枝や、混み合った枝がたくさんあることに気づきました。サナダが言っていた「風通し」の話を思い出します。

「司令官、この枯れた枝とか、内側でごちゃごちゃしてる枝は、どうすればいいっすか」

「よく気づいた。それを抜くのが『透かし剪定』だ」とサナダ。「枯れた枝、内側に向かって伸びている枝、ほかの枝と交差している枝。そういう不要な枝を、根元から間引いて抜いてやる。すると風通しが良くなり、ごま色斑点病も防げる。表面をそろえるだけが剪定じゃない。内側を透かすことも、同じくらい大事なんだ」

ズボ太は、めんどくさいと思いつつも、一本ずつ、不要な枝を抜いていきました。気づけば、いつの間にか、ズボ太の作業は「雑」から「ていねい」へと変わっていたのです。

■⑤ 半日後、生まれ変わった壁

汗だくになりながら、ズボ太はついに、東側の生け垣をすべて刈り終えました。

顔を上げて、自分の仕事を見渡したズボ太は、思わず息をのみました。あれほどスカスカだった生け垣が、上は平らに、横はまっすぐにそろい、下のほうまで光が届く、すそ広がりの美しい形に生まれ変わっていたのです。内側の枯れ枝もなくなり、風がさわやかに通り抜けていきます。

「これ・・・俺がやったのか・・・」

数日後、刈り込まれた切り口の下から、いっせいに小さな芽が顔を出し始めました。そしてその芽は、日を追うごとに、燃えるような赤色に染まっていきました。ズボ太の壁は、真っ赤な新芽で、上から下まで隙間なくおおわれていったのです。

■⑥ ズボ太の中に芽生えたもの

「どうだ、ズボ太。自分で作った壁の感想は」

サナダに聞かれて、ズボ太は照れくさそうに頭をかきました。

「・・・正直、めちゃくちゃめんどくさかったっす。でも、なんか、悪くないっす。この赤い壁、ちょっとかっこいいっすね。俺が守ってる、って感じがして」

サナダは、満足そうにうなずきました。「それでいい。手をかけた壁には、愛着がわく。愛着がわけば、もっと守りたくなる。剪定とは、ただの作業じゃない。守るべきものと向き合う時間なんだ」

ズボラなズボ太が、初めて自分の手で作り上げた、真っ赤な鉄壁。それは、彼自身の成長の証でもありました。

そして――その壁の強さが試される夜は、すぐそこまで近づいていたのです。遠くの闇の向こうから、地ひびきのような、無数の足音が、ゆっくりと、しかし確実に、この都市へと迫っていました。

第5章 ホード襲来 ~東防衛壁、最大の危機~

■① 静かすぎる夜

その夜は、不気味なほど静かでした。

いつもなら、壁の外からゾンビのうめき声が、かすかに聞こえてくるものです。けれど、その夜は、それすらも聞こえません。まるで、嵐の前の静けさのようでした。

見張り台に立っていたズボ太は、なんとなく胸がざわつくのを感じていました。

「司令官・・・なんか、今夜、変じゃないっすか。静かすぎるっていうか」

サナダは、暗い闇の向こうを、鋭い目でじっと見つめていました。「・・・来るぞ。それも、今までにない規模だ。長年の勘が、そう言っている。総員、配置につけ」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、地面が、かすかに震え始めました。

■② 押し寄せる、ゾンビの大群

ドドド・・・ドドドドド・・・。

地ひびきは、みるみる大きくなっていきます。やがて、闇の向こうから、信じられない光景があらわれました。数えきれないほどのゾンビの群れ――「ホード」と呼ばれる大群が、津波のように、要塞都市サクラへと押し寄せてきたのです。

その数は、これまでの襲撃とは、けた違いでした。何百、何千というゾンビが、一つのかたまりとなって、都市の壁に向かって突進してきます。見張り台の生存者たちから、悲鳴があがりました。

「な、なんだあの数は・・・!」
「あんなの、防げるわけがない・・・!」

ズボ太も、足がすくみました。自分が刈り込んだあの赤い壁が、本当にこの大群を防げるのか。急に、不安が押し寄せてきます。

■③ 南門、まさかの陥落

ゾンビの大群は、まず、都市の南側に殺到しました。

南門は、都市の中でもっとも頑丈だと言われる、鉄柵で守られた門でした。「あそこなら大丈夫だ」と、誰もが信じていました。鉄は、植物よりずっと硬い。誰がどう見ても、生け垣より鉄柵のほうが頼もしく見えます。

ところが――。

ゾンビの大群が、いっせいに鉄柵に体当たりを始めました。一体や二体なら、びくともしない鉄柵です。けれど、何百体ものゾンビが、休むことなく、同じ場所に全体重をかけ続けると、どうなるでしょうか。

ギシ・・・ギシギシ・・・バキン!

ものすごい力に耐えきれず、鉄柵が、ついに根元から折れ曲がってしまったのです。

「南門が破られたぞ――!」

絶望の叫びが、夜空にこだましました。あれほど頑丈だと信じられていた鉄の壁が、数の力の前に、もろくも崩れ去ってしまったのです。

■④ 「東の生け垣なんて、一瞬だ」

南門が破られたことで、ゾンビの大群は、進路を変え始めました。次に狙われたのは――ズボ太が守る、東側の防衛壁でした。

東壁は、鉄柵ではありません。ズボ太が刈り込んだ、レッドロビンの生け垣です。

「終わりだ・・・鉄の南門でさえ破られたんだ。東なんて、ただの植木じゃないか」
「生け垣なんて、ゾンビに突っ込まれたら、一瞬で踏み倒される・・・!」

生存者たちは、口々に絶望をつぶやきました。たしかに、ふつうに考えれば、その通りです。硬い鉄が破られたのに、やわらかそうな植物の壁が、もつはずがない。誰もが、そう思いました。

ズボ太自身も、心臓が縮み上がる思いでした。「俺の壁・・・本当に大丈夫なのか・・・?」

■⑤ サナダの、ゆるがぬ確信

ところが、ただ一人、サナダ司令官だけは、まったくあわてていませんでした。それどころか、腕を組んで、堂々と東壁の前に立っているのです。

「司令官! 逃げないんすか!? ゾンビがこっちに来るっすよ!」とズボ太が叫びます。

サナダは、静かに答えました。「ズボ太。貴様は、自分の仕事を信じられんのか」

「え・・・」

「貴様は、俺の教えた通りに刈り込んだ。上から下まで均一に。下まで光を届かせ、すそ広がりに。鋭いハサミで、切り口をとがらせた。風通しのために、内側も透かした。――その壁が、ただの植木のはずがないだろう」

サナダの声には、ゆるぎない確信がありました。「鉄は、硬いが、しなりがない。だから、限界を超えれば、ポキッと折れる。だが、正しく茂ったレッドロビンは違う。やわらかく見えて、その実、何十本もの枝が複雑にからみ合った、生きた防御網だ。さあ、見ているがいい。貴様の壁の、本当の力を」

■⑥ 運命の、その瞬間

サナダがそう言い終えた、まさにその瞬間でした。

ゾンビの大群の第一波が、ついに東壁の、ズボ太が刈り込んだレッドロビンの生け垣へと、ものすごい勢いで突っ込んでいきました。

ドオオオオン・・・!

何百体ものゾンビが、真っ赤に茂った生け垣に、いっせいに激突します。生存者たちは、思わず目をつぶりました。「ああ、東壁も破られてしまう――」誰もが、その最悪の結末を覚悟しました。

ところが――。

突っ込んだはずのゾンビたちの動きが、次の瞬間、ピタリと止まったのです。

あれほどの勢いで殺到したゾンビの群れが、まるで巨大な手につかまれたかのように、生け垣の手前で、ぴくりとも動けなくなっていました。

「な・・・止まった・・・!?」

ズボ太の刈り込んだ赤い壁が、いま、その真の力を発揮しようとしていました。半日かけてズボ太が流した汗の、本当の意味が、ここで証明されようとしていたのです。

第6章 レッドロビンの鉄壁 ~密に茂った枝が見せた奇跡~

■① 動けなくなったゾンビたち

突っ込んだはずのゾンビたちが、生け垣の前で、ぴたりと止まっている。その不思議な光景に、生存者たちは目を見張りました。

ゾンビは、もがいていました。前に進もうと、必死に手足をばたつかせています。けれど、進めないのです。それどころか、もがけばもがくほど、深く生け垣にからみついて、ますます動けなくなっていきます。

「どうなってるんだ・・・ゾンビが、壁に捕まってる・・・!?」

ズボ太も、自分の目を疑いました。自分が刈り込んだ生け垣が、まるで生きた罠のように、ゾンビをガッチリととらえているのです。

■② 「密」が生んだ、絡め取る力

「見たか、ズボ太」とサナダが言いました。「あれが、正しく刈り込んだレッドロビンの力だ」

サナダは、もがくゾンビを指さしながら、解説を始めました。

「貴様は、上から下まで、隙間なく密に刈り込んだ。何度も刈り込んだから、枝は二本、四本、八本と枝分かれし、無数の細かい枝が、複雑にからみ合っている。その密度こそが、武器だ。ゾンビが突っ込んでも、その体を、何十本もの枝がいっせいにつかみ、からめ取る。一本一本の枝は細くても、何十本も束になれば、人間どころかゾンビすら逃さない、生きた網になるんだ」

たしかに、ゾンビの腕や脚、胴体には、レッドロビンの細かい枝が、びっしりとからみついていました。もがけばもがくほど、枝はゾンビをきつく締めつけ、決して離しません。

ズボ太は、ハッとしました。「下までちゃんと刈り込んだから・・・下に隙間がないから、足元からもぐり込むこともできないのか・・・!」

「その通りだ」とサナダ。「もし貴様が、以前のように上だけ刈って、下をスカスカにしていたら、ゾンビは下の隙間から、やすやすと侵入していただろう。下まで密にしたことが、この壁を完全な鉄壁にしたんだ」

■③ とがった切り口が、剣山に変わる

しかし、レッドロビンの真の恐ろしさは、それだけではありませんでした。

からみついたゾンビが、無理に前進しようとした、その瞬間です。「ブスッ」という鈍い音とともに、ゾンビの体に、何かが深々と突き刺さりました。

「あれは・・・枝の切り口だ」とサナダが、低い声で言いました。

ズボ太が鋭い「おの義」のハサミで刈り込んだ、無数の枝の切り口。スパッと切られて、槍のようにとがり、硬くなったその先端が、いま、まるで剣山のように、ゾンビの肉体に次々と突き刺さっていたのです。

「思い出せ、ズボ太。鋭いハサミで切った硬い切り口は、武器になると言ったな。密にからめ取られて動けなくなったゾンビの体に、無数のとがった切り口が突き刺さる。前に進もうとすればするほど、より深く刺さる。レッドロビンの壁は、ただの網じゃない。からめ取り、そして突き刺す、二重の罠なんだ」

生け垣全体が、まるで巨大な剣山と網を合わせたような、恐るべき防御兵器と化していました。ゾンビたちは、進むことも、引くこともできず、ただ赤い壁の中で、もがき続けるしかありませんでした。

■④ 「やわらかさ」こそが、最強だった

ズボ太は、ようやく理解しました。

南門の鉄柵は、硬かったけれど、しなりがありませんでした。だから、限界を超える力がかかったとき、ポキッと折れてしまったのです。

けれど、レッドロビンは違いました。やわらかく、しなやかだからこそ、ゾンビの突進の力を受け流し、その体にからみつき、決して折れることなく、相手を捕らえ続けたのです。

「やわらかいことは、弱いことじゃないんすね」とズボ太がつぶやくと、サナダがうなずきました。

「その通りだ。硬いだけのものは、ある日突然、ポキッと折れる。だが、しなやかなものは、力を受け流し、いなし、最後には相手を取り込んでしまう。手をかけて育てた、生きた壁の強さだ。これは、機械や鉄には、決して真似できない」

それは、植物という生き物だけが持つ、本物の強さでした。

■⑤ ズボ太の壁が、都市を救う

東壁のレッドロビンが、ゾンビの大群を完全に食い止めている――その知らせは、たちまち都市中に広がりました。

南門を破られて、もうダメだと絶望していた生存者たちが、続々と東壁に集まってきます。そして、赤い生け垣にとらわれて身動きの取れないゾンビの大群を見て、歓声をあげました。

「すごい・・・あの生け垣が、ゾンビを全部止めてる・・・!」
「これなら、戦える・・・! 俺たちは、まだ終わっていない!」

絶望に沈んでいた都市に、希望の光がさし込みました。そしてその希望は、ほかでもない、ズボラなズボ太が、半日かけてていねいに刈り込んだ、一枚の赤い壁から生まれたものだったのです。

■⑥ ズボ太、誇らしげに

「ズボ太。貴様の壁が、都市を救ったぞ」

サナダにそう言われて、ズボ太は、胸がいっぱいになりました。あれほど「めんどくさい」と文句を言っていた、生け垣の刈り込み。下までていねいに刈り、鋭いハサミで切り口をとがらせ、内側を透かした、あの地道な作業。その一つ一つが、いま、何百人もの命を救ったのです。

「俺の・・・俺の壁が、みんなを守ったんだ・・・」

ズボ太の目に、うっすらと涙がにじみました。ズボラな彼が、生まれて初めて、自分の仕事を心から誇らしいと思えた瞬間でした。

サナダは、そんなズボ太の肩に、そっと手を置きました。

「よくやった。これが、剪定の力だ。正しい知識と、ていねいな手間は、決して裏切らない。――だが、ズボ太。戦いは、まだ終わっていないぞ」

ズボ太は、涙をぬぐって顔を上げました。サナダの視線の先には、ゾンビをからめ取って、ボロボロに傷ついた、赤い生け垣の姿がありました。

戦いのあとには、必ず、次の手入れが待っている。それもまた、剪定という営みの、変わらぬ真実だったのです。

第7章 勝利、そして次の指令 ~戦いは剪定とともに続く~

■① 一網打尽の作戦

赤い生け垣にとらわれ、身動きの取れなくなったゾンビの大群。それは、防衛隊にとって、またとない好機でした。

「総員、聞け!」とサナダ司令官が、声を張り上げました。「東壁のゾンビは、すべてレッドロビンに捕らえられ、動けなくなっている! 今こそ反撃のときだ! 壁の内側から、安全に、一体ずつ確実に片づけていけ!」

防衛隊は、生け垣をはさんで安全な内側から、とらわれたゾンビたちを、次々と倒していきました。動けない相手を、安全な位置から仕留めるのですから、もう負ける要素はありません。あれほど絶望的だった大群が、一網打尽になっていったのです。

ズボ太も、仲間たちと肩を並べて戦いました。自分の刈り込んだ壁が、こんなにも頼もしい味方になるなんて。ハサミを握っていた手で、今度は都市を守る。ズボ太の胸は、不思議な誇らしさで満たされていました。

■② 夜明け、守り抜いた都市

長い夜が明けました。

東の空が白み始めるころには、押し寄せたゾンビの大群は、一体残らず片づけられていました。要塞都市サクラは、守り抜かれたのです。

破られた南門も、生存者たちが力を合わせて、応急処置を終えていました。けれど、誰もが口をそろえて、こう言いました。「次からは、南門も、東壁みたいなレッドロビンの生け垣にしよう」と。硬いだけの鉄よりも、しなやかで、手をかけて育てた生きた壁のほうが、ずっと頼もしい。そのことを、都市の全員が、身をもって学んだのです。

朝日に照らされた東壁のレッドロビンは、戦いでボロボロに傷つきながらも、その赤い葉を、誇らしげに輝かせていました。

■③ ボロボロの壁を前に

戦いが終わり、ズボ太とサナダは、傷ついた生け垣の前に並んで立っていました。

ゾンビをからめ取った枝は、あちこちが折れ、葉はちぎれ、せっかくの美しい赤い壁は、見るも無残な姿になっていました。

「司令官・・・俺の壁、ボロボロになっちゃったっす」とズボ太が、少しさみしそうに言いました。

サナダは、優しい目で生け垣を見つめました。「気にするな。これは、都市を守った、名誉の傷だ。それに――レッドロビンは、強い植物だ。正しく手入れしてやれば、必ずまた、元の美しい壁に戻る。いや、前よりもっと、強い壁になる」

「ほんとっすか!?」

「ああ。そのために、これからやるべきことがある」

■④ 次の指令は「透かし剪定」

サナダは、すっと背筋を伸ばすと、いつもの厳格な司令官の顔に戻って、こう言いました。

「よし、ズボ太。ここからは、戦後処理だ。傷ついた枝、折れた枝を、きれいに切り落とす。そして――来年の春に向けて、ごま色斑点病を予防するための、透かし剪定を行うぞ!」

「ごま色斑点病・・・あの、ゾンビウイルスみたいな病気っすね」とズボ太。

「そうだ。戦いで枝葉が混み合い、傷ついた今は、病気がもっとも広がりやすい。だからこそ、混み合った枝を間引いて、風通しを良くしてやる。傷ついた枝を放っておけば、そこから病気が入り、壁ごと枯れてしまう。それを防ぐのが、透かし剪定だ。手入れを終わらせてはならん。守った壁を、守り続けるんだ」

ここで、読んでいるあなたにも、一つ大切なことをお伝えします。レッドロビンを健康に保つには、刈り込みだけでなく、混み合った枝を間引く「透かし剪定」が欠かせません。風通しを良くすることが、ごま色斑点病などの病気を防ぎ、長く美しい生け垣をたもつ、いちばんの秘訣なのです。

■⑤ ズボ太、頭を抱える

サナダの「次の指令」を聞いて、ズボ太は、思わず大きな声をあげました。

「えぇ――っ!? やっと戦いが終わったと思ったのに、また剪定っすか!? 昨日あんなに頑張って刈り込んだのに、まだやることあるんすか!?」

頭を抱えて、その場にしゃがみ込むズボ太。けれど、その顔は、不思議と、以前のような「本気でいやがる」顔ではありませんでした。どこか、あきれながらも、楽しんでいるような表情だったのです。

サナダは、めずらしく声を出して笑いました。「はっはっは。当たり前だ。剪定に『終わり』はない。植物が生きている限り、手入れは続く。それが、生きた壁を持つということだ」

■⑥ 終わらない手入れ、終わらない物語

ズボ太は、しゃがんだまま、ボロボロの、けれど都市を守り抜いた赤い壁を見上げました。

最初は、ただただ「めんどくさい」だけだった生け垣の手入れ。けれど今は、その一つ一つの作業に、ちゃんと意味があることを、ズボ太は知っています。下まで刈ること。鋭いハサミを使うこと。内側を透かすこと。そのどれもが、大切な誰かを守る力になる。

「・・・まあ、しょうがないっすね。やりますか、透かし剪定」

ズボ太は、よっこいしょと立ち上がると、相棒の「おの義」のハサミを、ぎゅっと握りしめました。その横顔は、もう、あのズボラな新人のものではありませんでした。

こうして、要塞都市サクラの、終わらない手入れの日々は続いていきます。ズボ太とサナダ、凸凹コンビの、剪定をめぐる戦いの物語は、まだまだこれからも続いていくのでした。

――おしまい。

まとめ:今回の物語に登場した剪定ノウハウ

物語を楽しんでいただけたでしょうか。ここからは、ズボ太とサナダが教えてくれたレッドロビンの剪定ノウハウを、もう一度わかりやすく整理してお伝えします。物語でイメージをつかんだうえで読むと、ぐっと頭に入りやすくなるはずです。

■① 上だけ刈るのはNG。全体を均一に

植物には「頂芽優勢」という、てっぺんを優先して育てる性質があります。上だけを刈り込むと、上の葉が日傘になって下に光が届かず、下の枝が枯れてスカスカになってしまいます。生け垣は、上だけでなく、全体を均一に刈り込むことが大切です。

■② 下を広くする「すそ広がり」の形に

生け垣は、上の面より下の面を少し広くした、台形(すそ広がり、富士山のような形)に刈り込みます。こうすると、下の枝まで太陽の光が届き、下までびっしりと密に茂ります。これが、スカスカを防ぐ最大のコツです。

■③ 刈り込みは春・夏・秋の年三回

レッドロビンの刈り込みは、五月から六月、七月から八月、九月から十月の、年三回が基本です。刈り込んだあとに、あの美しい赤い新芽が吹きます。寒くなる季節の強い刈り込みは、新芽が傷むことがあるので避けましょう。

■④ 切ると枝が増え、密になる

枝の先を切ると、植物は切り口の下から新しい芽を二つ三つ出し、枝分かれします。刈り込むほどに枝の数が増え、生け垣はどんどん密になっていきます。「切る=減らす」ではなく「切る=増やして密にする」と覚えておきましょう。

■⑤ 切れ味のよいハサミを使う

切り口がきれいだと、見た目が美しいだけでなく、病気にも強くなります。切れ味の悪い道具やノコギリで太い枝を乱暴に切ると、切り口がつぶれて、そこから病気が入る原因になります。生け垣の刈り込みには、切れ味のよい「おの義」の刈り込みバサミがおすすめです。良い道具が、良い壁を作ります。

■⑥ 透かし剪定で病気を防ぐ

表面をそろえるだけでなく、内側の枯れ枝、内向きの枝、交差した枝を根元から間引く「透かし剪定」も大切です。風通しを良くすることで、レッドロビンに多い「ごま色斑点病」などの病気を防ぎ、健康で美しい生け垣を長くたもつことができます。

物語のズボ太のように、最初は「めんどくさい」と思うかもしれません。けれど、正しい知識とていねいな手間は、決してあなたを裏切りません。ぜひ、お庭のレッドロビンを、ゾンビも通さない(?)鉄壁の生け垣に育ててあげてください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。