カシノナガキクイムシはブナ科のカシ類に被害を及ぼし枯死させる害虫です。
カシノナガキクイムシってあんまり聞いたことがないかもしれませんが、ここではその生態や被害の原因についてお伝えします。
ナラ類の木が集団で枯れる原因
ナラ類の木が集団で枯れるには何か理由があるはずです。
マツクイムシ病であればマツノマダラカミキリがマツノザイセンチュウという線虫を運んでマツの材を枯らすことは知られています。
ナラ類の場合にはどうなのだろう?
ナラ類の木が集団で枯れる可能性には、土壌の劣化や環境の悪化などがあげられます。
また病害虫や動物等によっても枯れる可能性はありますが、集団で枯れるとなると木に対してとんでもない不具合が発生している可能性が高いです。
そうなると大量の病害虫や強い伝染病などが考えられます。
このナラ枯れの場合には、害虫が運び込む伝染病が考えられます。
ではこの伝染病とはいったい何なのでしょう?
それは「カシノナガキクイムシ」が運び込む菌の伝染病にあるようです。
カシノナガキクイムシの生態
カシノナガキクイムシとはどんな害虫で、どのようにして被害が拡大していくのでしょう?
カシノナガキクイムシは、ブナ科のカシ類に通称「ナラ菌」という菌を運んできて伝染させ、樹木を枯死させる害虫です。
その被害は、マツクイムシ病と匹敵するほどの威力があります。
カシノナガキクイムシは、6月頃からナラ菌をカシ類に運んできますがオスは菌を持っていません。
ナラ菌はオスは運ばずメスだけが持ち運ぶ習性があって、メスの背中にはナラ菌を運ぶための5~10個くらいの孔が開いています。
オスは木に孔を開ける係で、孔を開けた後に菌を持っているメスが入って菌が繁殖していくシステムです。
カシノナガキクイムシは、穿孔して孔に入りますが、その入った先でカシ類の材を食すわけではなく、運んできた菌を材の中で増殖させて、それを食すことで生きていきます。
はじめに樹木に到達したオスのカシノナガキクイムシは仲間をたくさん呼び寄せて、しだいにその材に穿孔した孔の数は増え、被害木として侵されていくことになります。
その被害は、カシノナガキクイムシの数や気象環境、被害木の健康状態などにより、樹木におこる被害の程度が決まってきます。
カシノナガキクイムシは枯死した木にそのまま産卵し、幼虫で越冬し次の年の羽化に備えることになります。
これがカシノナガキクイムシの生態と被害木に与えるサイクルになります。
カシノナガキクイムシによる被害拡大の原因
カシノナガキクイムシにより被害が拡大される原因として、カシノナガキクイムシは気温が20℃を超えると活発に活動する性質があります。
近年の高温の気象条件が続くことが、カシノナガキクイムシによる被害拡大につながっているひとつであると思われます。
また径の太い樹種ほど被害に遭いやすい性質もあり、気象条件に伴い樹種が大きく太く育っていることも被害拡大につながっていると思われます。
カシノナガキクイムシは日中の明るい時に集団で活動し、ナラ類の木の地際から1mくらいの高さの材部に穿孔します。
ナラ菌が材に入り込むと菌が広がり感染するのですが、その際に木が菌に抵抗しようと発生する防御作用剤でその木自身が耐えられなくなり、自滅して枯死してしまうようです。
被害に遭った樹木は、数週間のうちに枯死する可能性が高いです。
併せて被害状況の拡大をみても、防除の遂行の難しさからも被害が拡大する原因のひとつであると思われます。
カシノナガキクイムシによる被害はおさえられるのか?
カシノナガキクイムシの防除はマツクイムシ病と少し似たような方法で行なわれます。
カシノナガキクイムシの被害に遭った樹木は、材の中に幼虫として潜んでいる間に木を伐採してチップや焼却し完全に抹殺しないと、再び他の木に飛散して被害を加えるようになります。
伐採せずにそのまま放置していると、たとえば、1匹でも生存していると、次の年の被害に影響をおよぼします。
この放置を繰り返すことで、どんどん被害が拡大されていく可能性が高くなります。
これはマツクイムシ病と同じです。
カシノナガキクイムシによる被害はマツクイムシ病と比較すると、マツクイムシ病は飛散してくると新葉にとまって葉を食すので、その時に薬剤散布をしないといけませんし、予防の場合でも事前に散布しないといけません。
なので、防除作業は膨大で時間も費用も人件費もかかります。
対してカシノナガキクイムシの場合は、飛散する場合も低空飛行で、樹木の上部が被害に遭うといういうことではないので薬剤散布もほぼなしです。
地面から3mくらいの間に飛んできて、樹木の底部に穿孔して被害を及ぼしますので、その部分に特化した防除策をとればよいわけです。
ただ、穿孔して材に侵入されれば枯死しますので気は抜けないです。
それを防ぐには、やはり被害木からカシノナガキクイムシが成虫になった時に飛散させないことが一番重要になります。
または、被害木を見つけたら穿孔状態などを確認して、伐採、チップ化などをして抹殺する防除法が一番確実だと思われます。
森林中で飛んでくるのを待って防除するというのは、あまりにも非現実的で得策ではないです。