サクラは枯れやすい木だが、もしも天然記念物のサクラの調査や治療を行なう場合にはどんなことに注意したらよいのでしょう?
ここでは土壌に関する調査や治療についてはあまり触れずに、土面よりも上の実際に見える樹木の部分についてお伝えします。
サクラは剪定すると枯れる
サクラの枝が伸びて切ったらなぜか枯れてしまったという経験はありませんか?
剪定時期や剪定方法など何も知らずにサクラを切ってしまった場合、枯らしてしまう可能性は高いと思います。
枯らすといっても枝の1本くらいがほとんどかと思いますが、サクラの木が1本丸ごと枯れた場合は、よほどの太枝を切るような強い剪定をしたか、合わせて樹勢が弱っていたのかもしれません。
なぜサクラは枯れやすいのか?
確かにサクラは腐朽菌が入りやすく枯れやすいです。
腐朽菌は目に見えないような小さな菌ですが、私たちの身の回りにいつも潜んでいます。
サクラは腐朽菌に弱い性質を持っているし、それほど腐朽菌はウヨウヨいるので、枝や幹に傷を負ってしまうとそこから腐朽菌が侵入しやすいのです。
成長期である夏場に枝や幹を傷つけてしまうと、特に腐朽菌がつく傾向が強く枯れやすくなります。
ほとんどの方が、剪定をしたがる時期というのは、葉っぱが生い茂った夏場だと思います。
だからサクラが枯れる可能性も高くなり、枯れに気が付く頻度も多くなるのだと思います。
このようなことから、幹や枝に傷がついただけで腐朽菌がつくサクラの剪定、
特に太枝を伐採するような夏場のサクラの剪定は控えたほうがよいです。
剪定を行なう時期は、枝の状態がすっかり見え作業がしやすい、しかも腐朽菌が発生しにくい、葉っぱが落ちた冬がよいです。
天然記念物のサクラの調査はどんなことをする?
天然記念物のサクラの調査をする時に、腐朽菌や枯れ枝の有無が重要です。
さらに空洞がないかを探し出し、あればその腐朽部の状態を観察し治療時に適切に処置します。
葉が生えている時期の調査も重要で、葉の状態を調べることで木の生育状況や植栽地の土壌の状態、現在の根の状態を知ることができます。
これらのことを調査することによって、適切な治療や処置につながります。
天然記念物のサクラも個人宅のサクラも同じ樹木なので、規模や大きさ、その木が置かれている存在価値や重要度は違うかもしれませんが、調査する事項は同じです。
天然記念物のサクラの治療は何をする?
腐朽菌は木に有害なので、もしも見つかった場合には、腐朽部の処置や枯れ枝の除去は必ず行うべきです。
サクラの治療に当たっては、葉が落ちてからの冬期に行なった方がよいです。
なぜなら、葉が落ちると枝幹部の状況がすっかり見ることができ、腐朽部や枯れ枝の除去など細部にまで治療を施すことができるからです。
枯れ枝は木だけでなく人間にとっても有害で、枯れ枝が折れたりすると人に接触や落下をしたりと人身事故を引き起こし、頭部に落ちてきた場合には死亡事故につながります。
再度お伝えしますが、不要な太い枝も切れる冬期に治療を行なうことをおすすめします。
天然記念物のサクラの調査と治療の注意点
国の天然記念物は文化財保護法、地方公共団体の天然記念物は各々の文化財保護条例等により指定されているので、天然記念物に指定されているサクラは個人の所有であっても、勝手にその形状を変えることはできません。
国や地方公共団体への申請が通って始めて、樹木の治療にあたりその形状を変えることができるのです。
サクラは成長期である夏期は、剪定等で枝幹を傷をつけた部分から腐朽菌が入り込みやすく、枯れを助長するおそれがあるので要注意です。
サクラの天然記念物の調査や治療で、枯れ枝の除去や成長を妨げる枝の除去は、枝幹が枯れる可能性が少なく、葉がないことで樹形内部の詳細がわかりやすく、しかも作業がしやすい冬期に行なうのがよいです。
天然記念物の調査や治療は、葉や土壌の状態を観察し検討するために、長期的に行ない慎重に進めることが大切です。