斑入りとは、葉や花で元の色とは異なった色がまだらに混じっている状態のことを指します。
あまり見かけることがないため、園芸植物や山野草などでは、斑入りの植物は珍しい部類に入り重宝されています。
植物の斑入りがなぜ起こるかについては、わかっていないことが多いといいますが、ここでは解明されている3つの原因について解説します。
遺伝子的原因
斑入りには色々なパターンがあり、「これは斑入りなのか?」「これは伝染病にでもなってまだらに起こっているのか?」と見分けがつかない場合もあります。
このようなことからも斑入りについては、素人が見た場合あいまいなところもあるようです。
さらに花の斑入り、葉の斑入り、また単子葉植物と双子葉植物の斑入りでは原因もパターンも様々のようです。
斑入りを現場ででよく見かけるのはツバキやアオキなどが多いです。
これは「トランスポゾン」という、あるDNA領域から他の領域へ転移できる「動く遺伝子」の作用によって引き起こされることがわかっています。
たとえば、花の色をピンク色にする遺伝子に入っていると、遺伝子の働きが抑えられるため、すべての花弁が白くなります。しかし、もし花弁の発達中にトランスポゾンが別のところに転移すると、不活化されていた遺伝子の働きが回復するため、その部分だけがピンク色になります。
このように色素の合成に関する遺伝子のどれかにトランスポゾンが転移すると、その遺伝子の発現に影響を及ぼし、その影響を受けた部分のみが斑入りになります。
トランスポゾンが原因となるのは、葉や花の斑入り以外にも種子の色や草丈がトランスポゾンによって変わる例もあるようです。
遺伝子と聞くとよくDNAという単語が出てきますが、植物細胞では、細胞質にある葉緑体とミトコンドリアにもDNAが存在します。
一つの細胞の中にはたくさんの葉緑体とミトコンドリアがあるので、通常一個や二個の葉緑体DNAに突然変異があっても、たくさんある正常な葉緑体DNAの働きに妨げられて、変異した形質は出てきません。
ところが多数の葉緑体やミトコンドリアのDNAに突然変異が生じると、細胞分裂を繰り返すあいだに、変異した葉緑体やミトコンドリアだけをもつ細胞群ができることがあります。
このようにして、その変異した細胞群からできている部分が白くなることにより斑入りが発生します。
葉緑体DNAは母親からだけ次の世代に伝わるため、変異した葉緑体DNAによる斑入りは母性遺伝をします。
生理的原因
アオキなどの葉の斑入りの場合は「遺伝子的原因」のほかに葉緑体の発達に関わる遺伝子が欠損して起こる現象の場合もあります。
この場合は、トランスポゾンと違って変異した遺伝子は働きが回復しないので、全ての細胞が何らかの生理的変化を起こします。
その生理的変化が細胞ごとに異なる影響を与える結果、葉の一部の細胞群では葉緑体が発達せず白くなったり、一部の細胞群は葉緑体が発達して緑色になったりします。
原因となる遺伝子は様々で、一般に光合成の機能に関する遺伝子と言われています。
環境に対して、植物が生理的に反応することで起こる斑入りもあります。
たとえば、強い光で育てると、葉が斑入りになることがあります。これは葉の本体の細胞には、強い光に対して弱い所と強い所があり、弱い所の葉緑体が光障害を受けると、そこが白くなるため斑入りになります。
ウイルスなどの感染によって、組織に病斑を作ることもあるんです。
発生的原因
遺伝子や育種学書に書かれている葉の斑入りの型には「周縁キメラ」という、聞きなれない、少し怖ろしくも感じる言葉があります。
「周縁キメラ」とうのは、葉を作る元の組織にある特定の細胞層において、色素の形成や葉緑体の分化に不具合が生じると、葉の周縁部だけが白い斑入りとなる現象です。
このほかにも縦に縞上になるものや、定期的な横縞ができる斑入りもあります。
このように、斑入りによっては一定パターンを示すこともあり、発生学的な原因も多くあるのではないかと考えられているようです。
斑入りには、「遺伝子的原因」「生理的原因」「発生的原因」これらのような3つの原因が考えられ、どれが当てはまるのか解明するのは困難な場合が多いです。
いずれ斑入りの植物は貴重価値が高く珍しいので、もしも見つけたらよく観察して大事に育ててあげてください。