はじめに
こんにちは。岩手で庭師をやっているズボラおやじです。今日は「すかし剪定」についてお話しします。
庭木の管理をしていると、「枝が混みすぎて風通しが悪い」「なんだか木の元気がない」というお悩みをよくいただきます。実はその多くが、すかし剪定をしていないことが原因なのです。
すかし剪定は特別な作業に見えるかもしれませんが、庭木を長く元気に育てるための基本中の基本です。このページでは、すかし剪定とは何かという基礎から、実際の作業手順、時期の見極め方、失敗したときのリカバリー、病害虫対策、道具選びまで、すかし剪定に関する悩みをまるごと解決できるようにまとめました。最後まで読んでいただければ、もう迷わず作業に取りかかれるはずです。
すかし剪定の特徴
■すかし剪定ってなに?
すかし剪定というのは、枝葉が伸びて混みすぎている枝を取り除いたり、樹形を整えながら枝葉を間引くことで、風通しや日照を良くして、枯れや衰弱、病害虫の発生を防ぐことを目的とした作業です。
枝葉が伸びて混みすぎていると日が当たりにくいので光合成を起こしにくくなり、樹勢に響きます。風通しが悪く樹冠内部が密になると病害虫にとって良い住み家となり、病害虫は発生しやすくなり、枝葉が枯れやすい状態になります。
枯れ枝や枯れ葉をそのままにしておいても自然に落ちることはなく、枝葉がだんだんと混みだしてきて、樹勢が悪くなるだけでなく、ここにも病害虫が発生しやすくなります。すかし剪定は、こうした状況を良い方向に導く作業なのです。
■すかし剪定が向いている木・向いていない木
すかし剪定は、松やヒバ、シラカシ、サクラなど、庭木として植えられる多くの樹種で有効です。特に枝葉が密になりやすい常緑樹では、すかし剪定を怠ると内部が真っ暗になり、枯れ枝だらけになってしまうことがよくあります。
一方で、生垣として四角く刈り込むタイプの木は、すかし剪定というよりも表面を刈り込む剪定が中心になります。木の役割によって、すかし剪定の必要度合いも変わってくると覚えておいてください。
■すかし剪定でどう変わるのか
混みすぎている木の樹形内部は光が届かないために薄暗く、樹形内部から上を見上げてもお空が見えないことがあります。すかし剪定での最終的な目標は、お空が見えるくらいに仕上げて、樹形内部にも日が当たるようにすることです。

すかし剪定を行なう時期
すかし剪定はいつ行なうのがよいか気になると思います。どの程度のすかしを行なうかによって、時期が変わってきます。太い枝を切らなければいけない場合には、庭木が枯れないようにするために、剪定時期がとても重要になります。落葉樹と常緑樹でも時期に違いがあります。
■落葉樹のすかし剪定を行なう時期
落葉樹のすかし剪定をするのに一番適している時期は、葉っぱが落ちた後の休眠期である冬期がベストです。
この時期であれば、葉っぱが落ちているので、樹形内部の様子が丸わかりです。

どの枝が混んでいるのか、どの枝が絡み合っているのか、どの枝が樹勢を弱らせるほど伸びているのか、あらゆる細部にまで手が届きますので、この時期を逃すと葉っぱが生えてきてからのすかし剪定は苦労すること間違いなしです。
この時期に作業を終えておくと、夏場の作業は伸びた枝だけを切りそろえたり、軽くすかす程度の作業でよくなります。冬期であれば樹勢に影響することなく、少々太い枝でも切り取ることができます。
落葉樹の冬期のすかし剪定を逃した場合、葉っぱが生えている時期に行なう作業は内部が見えにくいので苦労します。モミジのようにバンバン伸びる木は特に大変で、夏の時期に剪定を行なうと荒く剪定してしまうことになり、本来の美しさが壊れてしまいます。庭師であってもモミジの剪定は難しいと言われるくらいです。
すかし剪定が苦手な方は、落葉樹のすかし剪定は冬期に行なっておくことを強くおすすめします。夏場は伸びた分だけ切り揃えて簡易的にすかしておき、次の冬期にこそ本格的なすかし剪定を行なうのがよいでしょう。
■常緑樹のすかし剪定を行なう時期
常緑樹のすかし剪定をするのに一番適している時期は、地域によって多少の違いはありますが、葉っぱが伸び切ったころの6月から8月頃がベストです。
冬期に剪定を行なってしまうと枯れる可能性がありますので、決して冬期には行いません。冬期に向かい寒くなる頃の晩秋もすかし剪定は避けた方がよいです。ただし、枯れを落とす程度であれば問題ありません。
夏の剪定を怠って年数が経つと枝葉の密度が濃くなり、そこに雪が積もった時に、枝は簡単に折れてしまいます。



すかし剪定の方法
■すかし剪定の手順
はじめに、樹形を乱すように強く伸びている徒長枝を、枝元から切り取っておいた方がよいです。この徒長枝は、周りの枝よりも太くて長く伸び、樹種によっては周りの枝と色が違うので、ひと目見ただけでわかると思います。
基本的に樹形(外側の輪郭)は、伸びた枝葉の分だけ切り揃える感じにして、毎年同じ程度の大きさの樹冠になるように仕上げた方がよいです。

外周が終わったら、樹冠内部を覗いてみましょう。まず気にしてほしいのは、枯れ枝や枯れ葉です。

枯れ葉は茶色くなっているなど、ほかの葉と色が違うのでわかりますが、枯れ枝はわかりにくいかもしれません。その時は、手で枯れていそうな枝を握ってみたり曲げて折ってみたりするとよいです。細かい枝であればバリバリと崩れるように細かく落ちていけば枯れ枝です。
はっきりとわかる枯れ枝であれば、ハサミやノコギリを使って切り取ってやりましょう。枯れ枝や不要な枝を切り取るだけで、混み具合がスッキリする場合が多いです。
■不要な枝の見分け方
幹から出ている新芽(胴ぶき)や根元から伸びる新芽(ひこばえ)は、すべて切り取ります。

そして樹形内部でほかの枝と伸びる向きが違う枝(逆さ枝や立ち枝)や、重なり合っているなど不要な枝を、枝元から切り取ります。

これらをすべて終えると、お空が見えるくらいに仕上げることができて、樹形内部にも日を当てることができます。樹種によっては(イトヒバ)、こんな感じにもなります。


失敗した時のリカバリー
多くの方が剪定サイトを見に来る理由は、「自分で切るのが怖いから」だと思います。ここでは実際に失敗してしまった場合のリカバリー方法をお伝えします。
■切りすぎてスカスカにしてしまった場合
すかし剪定は「間引く」作業ですが、勢い余って切りすぎてしまうことがあります。木の内部が丸見えになるほど葉を減らしすぎた場合は、まずはそれ以上手を加えず、水やりを丁寧に行いながら様子を見てください。多くの木は翌シーズンに新しい枝葉を伸ばして回復していきます。
■間違った時期にすかし剪定をしてしまった場合
常緑樹を冬場に強くすかしてしまった場合など、時期を間違えてしまうことがあります。この場合、追加の剪定は行わず、しばらく木の状態を観察してください。葉の色が悪くなったり落葉が進んだりするようであれば、水やりを控えめにしつつ、直射日光や強風が当たらない環境に整えてあげることが回復の助けになります。
■樹形が乱れて後悔した場合
外周を切り揃えたつもりが、左右非対称になってしまうこともよくあります。この場合、無理にその場で修正しようとせず、翌年伸びてきた枝を見ながら少しずつ形を整えていくのがおすすめです。すかし剪定は毎年繰り返す作業なので、次の機会に調整すれば十分挽回できます。
病害虫対策
すかし剪定と病害虫はセットで考える必要があります。風通しを良くする作業そのものが、病害虫対策になるのです。
■密な樹冠に発生しやすい病気
風通しが悪い樹冠内部では、「テング巣病」のような伝染病が発生しやすくなります。

これはサクラの例ですが、赤丸のところで「テング巣病」が発生しています。何かの巣でも作られているように枝が密集して生え、周りの枝と生え方が違うのがわかります。これは伝染病なので、枝元(赤線)から切り取って、焼却処分してやらないといけません。

■密な樹冠に発生しやすい害虫
風通しの悪い場所は、アブラムシやカイガラムシなどの害虫にとって絶好の住み家になります。これらは枝や葉に張りついて汁を吸い、木を弱らせます。見つけたら、勢いのある水で洗い流すか、家庭用の殺虫剤で対処してください。すかし剪定で日当たりと風通しを確保しておくことが、一番の予防になります。
■早期発見のサイン
・枝の一部だけ異常に密集して生えている
・葉の色が部分的に悪くなっている
・樹冠内部を覗くと虫がびっしりついている
・枝葉の茂りに反して幹や太い枝の元気がない
これらのサインに気づいたら、早めのすかし剪定で対処することが大切です。
おすすめの道具
すかし剪定では、細かい枝を大量に扱うため、道具選びがとても重要になります。
■剪定バサミ
すかし剪定は、樹冠内部の細い枝を一本一本見極めて切っていく作業です。私がおすすめしているのは「おの義(推奨)」の剪定バサミです。刃の噛み合わせが良く、細い枝もスパッと切れるので、作業がはかどりますし、切り口も傷みにくくなります。
■ノコギリ
徒長枝や太めの枝を枝元から切り取る際にはノコギリを使います。すかし剪定では枝の付け根ぎりぎりを切ることが多いので、刃先が細くコントロールしやすいタイプのノコギリを選ぶと作業がスムーズです。
■道具の手入れ
すかし剪定は作業量が多く、刃に樹液や木くずがたっぷり付着します。作業後はそのままにせず、乾いた布で拭き取り、汚れが強い場合は薄めた中性洗剤で洗います。水分が残っているとサビの原因になるので、しっかり乾かしてから椿油などを薄く塗って保管すると長持ちします。切れ味が悪くなった刃で切ると、枝の切り口がギザギザになり、木の回復も遅くなってしまうので、こまめな手入れが本当に大切です。
【忙しい人向け】15分で終わらせるズボラすかし剪定ルート
完璧を求めない方向けに、私がよくやる時短ルートをご紹介します。
①まずは徒長枝と枯れ枝だけを探して切り取る
②次に、幹から出ている胴ぶきとひこばえだけをすべて取り除く
③最後に、樹冠内部を覗いて、明らかに重なっている枝だけをざっくり間引く
この3ステップだけでも、風通しはかなり改善します。すべての枝を細かくチェックする必要はありません。「気になるところだけ」に絞ることで、15分程度でも見た目と風通しがスッキリします。完璧じゃなくて大丈夫です。
プロのホンネ:自分でやる限界と業者に頼む目安
■高さの目安
高さが3メートルを超える木のすかし剪定は、素人には危険です。樹冠内部の作業は特にバランスを崩しやすく、落下事故につながります。命に関わることなので、高い場所の剪定は迷わずプロに依頼してください。
■すぐにプロを呼ぶべき状態
・幹の中心部が腐っている、または空洞になっている
・大きな枝が枯れて落下しそうになっている
・電線や隣家の建物に枝がかかっている
・テング巣病のような伝染病が広範囲に広がっている
こうした状態は、無理に自分で対処しようとせず、早めに植木屋に相談することをおすすめします。
ゴミの処分とマナー
■枝葉の処分方法
すかし剪定は間引く枝の本数が多く、細い枝葉が大量に出やすい作業です。ズボラ流のコツとしては、切った枝をできるだけ自治体指定のサイズ以下に切り分けておくことです。長い枝のままだと収集してもらえないことが多いので、最初から短めに切っておくと後の手間が省けます。
枝を束ねる場合は、太い枝を内側に、細い枝や葉付きの枝を外側にまとめると、紐で縛りやすくなります。
■ご近所トラブルを避けるマナー
すかし剪定によって、これまで茂っていた枝が急にスッキリすることがあります。お隣に面した部分を大きく変える場合は、事前に一声かけておくと安心です。
「風通しを良くするために少し枝を減らしますね」と伝えるだけで、印象は大きく変わります。作業前にシートを敷いておくと、切った葉がお隣の敷地に落ちるのも防げます。
よくある質問Q&A
Q. すかし剪定はどのくらいの頻度で行えばいいですか?
A. 落葉樹であれば毎年冬に、常緑樹であれば毎年夏の時期に行うのが理想です。
Q. すかしすぎるとどうなりますか?
A. 葉を減らしすぎると光合成の量が減り、木が弱ってしまうことがあります。全体の2~3割程度を目安にするのがおすすめです。
Q. 花が咲かないのはすかし剪定のせいですか?
A. 花芽ができる時期に強くすかしてしまうと、花芽ごと切ってしまうことがあります。樹種ごとの花芽ができる時期を確認してから行うと安心です。
Q. お神酒(おみき)をあげてから切るべきですか?
A. 必須ではありませんが、気持ちの問題として行う方もいます。ご自身が安心できるならぜひ行ってください。
Q. すかし剪定と強剪定は同時にやってもいいですか?
A. 同時に行うと木への負担が大きくなるので、太い枝を切る強剪定は別の年に分けて行うことをおすすめします。
Q. 雪が多い地域でもすかし剪定は必要ですか?
A. むしろ雪の多い地域ほど重要です。枝葉が密なままだと雪の重みで枝が折れやすくなります。
Q. すかし剪定した後、すぐに肥料をあげてもいいですか?
A. 剪定直後は木が回復に集中している時期なので、強い肥料は控えめにし、様子を見ながら与えるのがおすすめです。
Q. 剪定バサミとノコギリ、どちらを先に使うべきですか?
A. 太い徒長枝や枯れ枝はノコギリで先に処理し、その後に細かい枝を剪定バサミで整えていくと作業がスムーズです。
以上、すかし剪定について、方法や時期から、道具やゴミの処分まで一通りお話ししました。すかし剪定は地味に見えて、木の健康を守る一番の基本です。ぜひこの記事を参考に、季節ごとにお庭の木と気長に付き合ってあげてください。






