強剪定をすると木は枯れるの?枝や幹はいつどのように切ればよいか

よく強剪定という剪定方法を聞いたことがあると思います。

実際、強剪定と言われてもピンとこない方もいると思いますが、ここでは「強剪定とは何か」そして「強剪定をすると、木がどんなことになるのか」

また、「強剪定」を行なうとしたら「剪定時期はいつ」で、「どのような剪定」をしたらよいのかお伝えします。

強剪定ってなに?

庭に木を植えてある以上、きれいに管理するためには木を小さく切らなければいけない場合がありますよね。

剪定には「太い枝や幹を切る強い剪定(強剪定)」とか「弱い剪定(弱剪定)」のような切り方があります。

では、「強い剪定」や「弱い剪定」は、いったいどんな切り方なのでしょう?

それらは、木に与えるストレスの大きさだと解釈しています。

木を切る程度が強くなるほど、木に大きなストレスを与え樹勢を弱めることで、枯れる可能性が高くなります。強い剪定(強剪定)の場合、太い枝を切りつめたり、太い枝ではなくても相当な量の枝葉を切り取ったりすることで、木に強いストレスを与えることになります。

一番ひどい強剪定は、細い枝を全く残さないで、切り口を見ると太い跡が残っていたり、主幹部分の切り口を太く残して切る「ずん胴切り」のような切り方です。これは街路樹などでもよく見られます。

だいぶスッキリしたいからと頼まれてイヤイヤ切る場合もあります。そんな場合は事前に「枯れる可能性が高い」ことをお伝えしてから作業に入らないと、枯れたから弁償しろと言われかねません。

これが「ずん胴切り」を行なったよい事例で、5m以上あった2本のチャボヒバですが「枯れてもいいから短くして!」と言われたので、承諾を得て作業しましたが、実際に本当に枯れた写真です。

↓ 初夏に「ずん胴切り」してから秋までは葉っぱは緑色をしてましたが、やはり茶色に変色しました。
強剪定

逆に、弱い剪定(弱剪定)というのは、太い枝と比較するともっと細い枝で、ほどよい程度に剪定をすることと解釈しています。この方法は、毎年マメに伸びた枝葉を切って樹形を維持していく剪定で、樹勢にはほとんど影響しない程度です。

どのくらいの太さからが強剪定か

強剪定といっても、どの程度の太さからが強剪定なのか気になると思います。

木によっても固い木とか柔らかい木とかはありますが、私個人としましては、強剪定は剪定ハサミで太刀打ちできない太さ。例えば、剪定バサミで太刀打ちできないほどの太さくらいからが、強剪定の範囲に入るのだと思います。

具体的には、一般的な木の場合で、ノコギリを使用しないと切れない「3cm~5cm」より上の太さが目安かなと思います。

強剪定をするとどうなるのか

どうしても強剪定をしないといけない場合もあると思いますが、では「強剪定をすると木はどうなってしまうのか?」「枯れてしまうのではないか?」と気になると思います。

樹勢がよい木であれば、強剪定を行なったとしても、木にはこの切り口を塞いで枯れるのを防ぐ作用があるのですが、樹勢や切り方によってはこれがうまく働かない場合があります。その場合、枝が1本だけ枯れることで留まればよいのですが、最悪の場合は木全体が枯れることにもなりますので、強剪定はできるだけ避けたい行為です。

そして実は、病原菌に侵されていたり、樹齢が古いなどの原因により、すでに樹勢が弱くなっている木を切ったり、時期を間違って強剪定してしまうと、木に非常に強いストレスを与えてしまうので、枯れる可能性は非常に高くなるんです。特に一気に切り詰める強剪定をしてしまうと、枯れる可能性はだいぶ高くなります。

太い枝を切るという事は、人間に例えると、腕や足の切断、頭部を切開して大きな外科手術をするようなものです。もしかしたら命に関わるかもしれません。

木は物を申さないので、人間に木の気持ちはわかりませんが、強剪定が木に対してどんなによくないのか、少しは感じてもらえると思います。

強剪定はいつ切るのがよいか

強剪定はやらない方がよいと言われても、どうしても強剪定をしないといけない場面が訪れるかもしれません。

では、どうしても強剪定をしなければいけない時、いつの時期なら枯れる可能性が低くなるのか気になりますよね。

それは、

できることなら、

落葉樹であれば、一般的に休眠期である葉っぱが落ちた冬期に行なうと、樹勢への影響が少なくなります。

落葉樹は、夏場は光合成によって作られた炭水化物で「カルス」と呼ばれる組織が作られ、切り口に注がれます。この「カルス」が切り口を塞いで腐朽菌が入らないようにする作用があるのですが、余計な樹勢を切り口に使ってしまいます。

特にカエデやモミジ類、ナナカマドやナツツバキなどは、切り口部が大きいと菌が入って腐れる可能性が高くなりますので、できれば強剪定は冬期のみに留めておくか、強剪定しないようにマメに伸びた枝葉の分を剪定することをおすすめします。

そして、太い枝を切り取ったら、トップジンなどの癒合材(保護剤)を塗っておくことをおすすめします
トップジン

さらに、問題なのは、常緑樹と針葉樹です。

常緑樹や針葉樹の場合は、樹勢に関わらず夏場だろうが冬場だろうが、強剪定をすると高い確率で枯れる可能性が高くなりますので、あまりおすすめはしません。寒くなる頃の秋以降に行なう、通常の剪定も枯れやすいのでやらない方がよいです。

常緑樹や針葉樹の場合は、太い枝を切らなくても枯れる可能性はあるので、一気に強剪定はしないで、少しずつ毎年時間をかけて細い部分から様子を伺いながらだんだんと切り戻して、太い枝に達する前でやめておいた方がよいです。

常緑樹の強剪定は、私も過去に何度か枯らせた経験があるのでおすすめはしないです。

強剪定をしないように、毎年伸びた枝葉だけ切ることを強くおすすめします。

強剪定をするにはどの位置で切るのがよいか

もしも強剪定をするとなった場合の枝を切る位置についてですが、「ブランチカラー」と言われる、例えば幹から枝が出るあたりの位置で、幹から枝に向かう時に膨らみ(太さ)が少ししぼんだと思われる個所(目立たない場合もある)があります。

幹から枝先に少し向かった膨らみが、枝と同じ太さに細くなったその部分(青線)で切るのがよいです。
ブランチカラー

この部分(青線)で枝を切り落とすと、下の写真のように「カルス」による防御で腐朽菌が入りにくくなります。
カルス

カルス

切り口部の枝の長さがちょうどよい長さで切らないと、次の画像のように、防御をするのに都合が良い「カルス」は作られないのです。

ブランチカラー

ブランチカラー

ブランチカラー

また、切り方にも注意点があって、太くて長い枝を切る場合は、一度に切ろうとすると枝の重量があるので、切った枝や樹皮ごと幹まで達して裂けてしまい、そこから腐れが入ってしまうことがあります。

強剪定後の良い事例

強剪定後どうなったのか、成功した良い事例を実際に見てみよう。
太い枝を切ったその外周を「カルス」が覆っていき保護すると成功です。

強剪定シラカシ

強剪定シラカシ

強剪定シラカシ

強剪定シラカシ

強剪定サクラ

強剪定サクラ

強剪定サクラ

強剪定後の悪い事例→場所・切り方

今度は強剪定後どうなったのか、成功しなかった悪い事例を見てみよう。
枝が長すぎるために、太い枝を切ったその外周を「カルス」が巻き込めなかったのです。
その違いを、成功した良い事例と比較してみて下さい。

強剪定シラカシ

強剪定シラカシ

強剪定シラカシ

強剪定シラカシ

強剪定カイズカイブキ

強剪定で太い枝を切る時期の比較事例

暑い夏場に強剪定を行なった場合は、体験上「カルス」を作って木の切り口を細菌から守ろうとします。

逆に、落葉後の冬場に強剪定を行なった場合ですが、「カルス」は葉っぱから光合成として作られた炭水化物なので、落葉後の休眠期が関係して「カルス」ができないようです。

枝を長く残して強剪定を行なった場合で、夏場と冬場(落葉後)の違いを比較してみて下さい。

■暑い夏場に、枝を長く残して強剪定を行なった場合

強剪定シラカシ

強剪定シラカシ

■落葉後の冬場に、枝を長く残して強剪定を行なった場合(カルスが形成されない)

シラカシ カルス

サクラ カルス

シラカシ カルス

強剪定のまとめ

できれば強剪定は行なうことなく、毎年マメに枯れ枝や伸びた分の通常の剪定をしておくことが、大きな枯れを防ぐためには望ましいと思います。

どうしても強剪定をしないといけない場合が訪れた場合に限って助言すると・・・

落葉樹であれば、一般的に休眠期である葉っぱが落ちた冬にやる方がよいです。

落葉樹は夏場は、「カルス」という切り口を塞いで修復する作用がありますが、冬場よりもストレスのかかり方が高いので、できればやらない方はよいです。

そして、常緑樹や針葉樹の場合は、樹勢に関わらず夏場だろうが冬場だろうが、強剪定をすると枯れる可能性が高くなりますのでおすすめしませんし、寒くなる頃の、秋以降の通常の剪定も枯れやすいのでやらない方がよいです。

強剪定をする場合の枝を切る場所は、ブランチカラーと言われる個所で適宜に切るとよいです。