今回は椿の剪定に関して「ほかの椿とは違う個性的な樹形にする仕上げる方法が知りたい!」という、愛知県のH様 にご依頼されたコンサルティングの事例をご紹介します。
椿の基本的な剪定時期はいったいいつなの?
椿の花芽は花が終わった後の6~7月頃に、新梢が伸びた先端や葉腋に作られます。
このことからも、花芽が作られる前後の夏の剪定は花芽に影響する可能性がありますので行わないようにします。
開花時期についてはたくさんの品種があるので多少違うようです。
また、剪定の時期は地域によっても品種によっても花が終わる時期が違いますので、その時期に合わせて花の咲き終わった直後で、だいたい 4~5月頃に行うようになりそうです。
その 4月~5月頃の時期に剪定を終えておくと、剪定後に伸びたその新梢に花芽をつけることになります。
この時期の剪定は特に混んでいる枝葉を間引くような剪定ができますが、椿は落葉樹ではないので坊主になるくらい葉をすっかりなくす剪定はしないでください。
葉っぱはほどほどに残さないと樹勢自体悪くなり枯れますし、太い枝は極力切らない方が良いです。
新梢が伸びた6~7月までの間に伸びが止まるわけですが、さらに入念な手入れを行うために、部分的に伸びた枝葉を軽く切ってあげます。
ただし、この時期にはすでに花芽ができているはずですので、注意して樹形を乱す伸びすぎた枝葉だけを切る程度とします。
これが椿の基本的な剪定と剪定時期です。
ほかの椿とは違う個性的な樹形にする仕上げる方法
今回は究極の剪定方法を図解で説明します。
スペースとバランスの都合でもう少し小さくしたい、また今は丸く仕上がっているという場合でも、個性的な形に仕上げたい方もいると思います。
その場合はどのように仕上げたらよいのか、たとえばこの写真で図解します。

■1.スペースとバランスの都合でもう少し小さくしたいなら
椿は枝が太く葉が意外と大きく、1本の枝を切っただけでだいぶ空間ができてしまい「失敗した!」と思うことがあるので、あまり切り戻さない方がよいと思います。
普通に丸く仕上げるのであれば、見た感じではこの場合はもう限界みたいなので、それほど小さくはできません。
しかし、それは丸く仕立てた場合の通常の話であって・・・
■2.今は丸くしているが個性的な形に仕上げたいのなら
■基本の丸仕立て
椿は落葉樹ではないので、葉をすっかりなくすような坊主剪定は絶対にしないでください。葉が極端に少なくなると樹勢が弱り、最悪の場合は枯れてしまいます。太い枝もできるだけ切らず、混み合った細い枝を間引く程度が基本です。
■個性的な樹形「玉ちらし仕立て」
丸く刈り込むだけの椿は、花はきれいでも木自体はどこにでもあるものに見えてしまいます。そこでおすすめしたいのが「玉ちらし仕立て」です。
これは、幹から伸びる一本一本の枝の先端に、葉をやや丸くまとめるように仕立てる方法です。葉の塊と塊の間に空間を作ることで、幹や枝そのものが見えるようになり、メリハリのある個性的な樹形に仕上がります。
具体的には、残したい枝先の葉のかたまり(玉になる部分)を意識しながら、その間の余計な枝葉を根元から切り落として空間を作っていきます。空間ができることで、見た目の大きさも小さく感じられるようになります。
上の写真の場合は、これ以上小さくはできませんが、小さく見える個性的な形にすることはできます。
それはどのようにするのかというと、次の写真を参考にしてください。
中がどうなっているのかよくわかりませんが、たとえば赤丸のように、幹から伸びるひとつひとつの枝ごとに枝先にやや丸く葉をまとめるように「玉ちらし仕立て」にします。

■玉ちらし仕立てのコツ
作業前に、残したい枝先をひもなどで軽くまとめてみると、完成イメージがつかみやすくなります。そこから、いらない枝を少しずつ切っていき、徐々に仕上げていきます。
刈り込みバサミで一気に刈り込むのではなく、面倒でも1本ずつ剪定バサミで切っていくのがポイントです。椿は1本の枝を切っただけで大きく空間が空いてしまうことがあるので、切りすぎに注意しながら、時々離れて全体を見ることを忘れないでください。枝先には必ず2~3枚の葉を残すようにしましょう。
玉ちらし仕立てのイメージは次の写真
↓

ね、枝先に丸くまとまっているでしょう。
剪定する際にきれいに見せるには、葉の部分だけでなく幹や枝部分を見せるように仕上げるとスッキリとします。
今までのように葉だけ見えるような仕上げ方だとどこにでもあるような椿なので花は目立ちますが、木自体は目立たないと思います。
花をたくさんつけるには面積がある方がよいでしょうから必然的にそうなりますし、丸い方が剪定は楽ですからね。
しかし「個性的」という視点で考えた場合は、どこにでもある丸い形では納得がいかない人もいると思います。
そこでこのような手法を取り入れればきれいに見えますし、他の椿と差別化ができるのではと思います。
やってみないことにはどのように変貌するのかはわかりません。
椿の究極の剪定方法
もしこの方法でやってみたいという方のために、剪定方法を解説しておきます。
剪定する要領は「赤丸を残す」、ということは「赤丸以外に空間ができる」ように切れば良く、空間部分から幹や枝が除くことができればメリハリがついてきれいに見えて良いわけです。
空間ができることで、外観は同じでも小さくなったと感じるはずです。

まず赤丸のあたりを一度ひもなどでまとめてみるとわかりやすくなるかもしれません。
そしていらないようなところから切っていき徐々に仕上げていく。
刈り込みバサミでは刈らず、面倒でしょうが樹形を整える大事な作業なので、1本1本樹形に注意しながら剪定バサミで切っていきます。
葉っぱを落葉樹のように全て切ってしまうと枯れてしまう恐れもありますので、
枝先には必ず2、3枚は葉を残してください。
椿は1本の枝を切るだけでポッカリ穴があいたようになったり、樹形が変わります。
もしかしたら切ってから後悔することもあります。
だからこれを回避するために、一気に仕立てるのではなく、手間はかかりますが理想の樹形に仕上げるにはゆっくりと、内部を見たり、やや遠くから全体を見てみたりする必要があります。
究極の剪定方法、なんとなくお分かりいただけましたでしょうか?
これで椿の剪定方法を終わりますね。
剪定の図解はためになったでしょうか?
失敗した時のリカバリー
多くの方が剪定サイトを見に来る理由は、「自分で切るのが怖いから」だと思います。ここでは実際に失敗してしまった場合の対処法をお伝えします。
■切りすぎてスカスカにしてしまった場合
葉を切りすぎて枝がスカスカになってしまうことはよくあります。椿は常緑樹なので、一度に葉が減りすぎると木への負担が大きくなります。追加で手を加えるのではなく、まずは水切れを起こさないよう水やりを丁寧に行い、木を休ませてあげてください。翌年の新梢が伸びてくれば、少しずつボリュームは戻ってきます。
■花芽ごと切ってしまった場合
夏場にうっかり大きく剪定してしまい、花芽ごと切り落としてしまうこともあります。この場合、翌年の花は諦めるしかありませんが、木自体が枯れるわけではありません。翌々年にはまた花を楽しめますので、焦らず木を休ませてあげましょう。
■樹形が乱れて後悔した場合
玉ちらし仕立てなどに挑戦して、思ったような形にならなかった場合も、無理に一気に修正しようとしないでください。椿は枝を切るだけで大きく印象が変わる木なので、1年かけて新しく伸びた枝を見ながら、少しずつ理想の形に近づけていくのが失敗しないコツです。
病害虫対策
剪定と病害虫はセットで考える必要があります。風通しを良くする剪定は、そのまま病害虫予防にもつながります。
■椿につきやすい害虫
椿で特に注意したいのが「チャドクガ」です。チャドクガの幼虫は葉の裏に群れをつくり、毒針毛を持っているため、触れると強いかゆみやかぶれを引き起こします。作業前には必ず葉の裏を確認し、幼虫がいる場合は薬剤を使って駆除するか、枝ごと切り取って処分してください。素手で触らないことが鉄則です。
■椿がかかりやすい病気
風通しが悪くなると「すす病」や「炭疽病」が発生しやすくなります。すす病は葉の表面が黒くすすで覆われたようになる病気で、アブラムシなどの排せつ物が原因になることが多いです。炭疽病は葉に茶色い斑点ができる病気です。
どちらも、剪定でふところ枝を整理し、風通しを良くしておくことが一番の予防策です。発生してしまった場合は、被害の大きい葉を取り除き、薬剤で広がりを抑えます。
■早期発見のサイン
・葉の裏に毛虫のようなものが群がっている
・葉の表面がすす状に黒くなっている
・葉に茶色い斑点が増えてきた
・新梢の伸びが例年より悪い
これらのサインに気づいたら、早めの対処で被害を最小限に抑えられます。
おすすめの道具
椿の剪定では、道具選びと手入れが仕上がりを大きく左右します。
■剪定バサミ
椿は玉ちらし仕立てのように1本1本丁寧に切る作業が多いため、手になじむ剪定バサミが欠かせません。私がおすすめしているのは「おの義(推奨)」の剪定バサミです。刃の噛み合わせが良く、細かい枝も正確に切れるので、思い通りの樹形を作りやすくなります。
■ノコギリ
太い枝を整理するときはノコギリを使います。椿は太い枝を極力切らない木ではありますが、どうしても必要な場合は、刃が薄く引きやすいタイプのノコギリを選ぶと作業がスムーズです。
■作業後の道具の手入れ
チャドクガがいる木を剪定したあとは、道具にも毒針毛が付着している可能性があります。作業後は手袋をしたまま刃を布で拭き取り、その後しっかり水洗いしてください。素手で刃に触れるのは避けましょう。
椿の樹液は乾くとベタつきやすいので、洗ったあとはしっかり乾かし、椿油などを薄く塗って保管すると長持ちします。
【忙しい人向け】15分で終わらせるズボラ剪定ルート
完璧を求めない方向けに、私がよくやる時短ルートをご紹介します。
①まずは木の外側から見て、明らかに飛び出している枝だけを切る
②次に、葉が密集している場所を見つけて軽く間引く
③最後に、枝先の形を軽く整えるだけで終わりにする
玉ちらし仕立てのような凝った仕上げは時間があるときに挑戦するとして、まずはこの3ステップだけでも十分見た目はスッキリします。完璧でなくて大丈夫です。気になるところから少しずつ手を加えていきましょう。
プロのホンネ:自分でやる限界と業者に頼む目安
■高さの目安
高さが3メートルを超える椿の剪定は、素人には危険です。脚立の上での作業はバランスを崩しやすく、大きな事故につながります。命に関わることですので、高い場所の剪定は迷わずプロに依頼してください。
■すぐにプロを呼ぶべき状態
・幹の中心部が腐っている、または空洞になっている
・大きな枝が枯れて落下しそうになっている
・電線や隣家の建物に枝がかかっている
・チャドクガが大量発生していて手に負えない
こうした状態は、無理に自分で対処しようとせず、早めに植木屋に相談することをおすすめします。
ゴミの処分とマナー
■枝葉の処分方法
椿は葉が厚くて量がかさばりやすいので、切った枝はできるだけ自治体指定のサイズ以下に切り分けておくのがズボラ流のコツです。長い枝のままだと収集してもらえないことが多いので、最初から短めに切っておくと後の手間が省けます。
枝を束ねる際は、太い枝を内側に、細い葉付きの枝を外側にまとめると、紐で縛りやすくなります。
■ご近所トラブルを避けるマナー
椿の枝がお隣の敷地にはみ出している場合、法律上は勝手にお隣が切ることはできません。ですが、実際には事前に一声かけてから剪定するのが一番のトラブル回避策です。
「お隣にはみ出している枝、少し整理させてもらいますね」と伝えるだけで印象は大きく変わります。作業前にシートを敷いておくと、切った葉がお隣の敷地に落ちるのも防げます。
よくある質問Q&A
Q. 花が咲かないのは剪定のせいですか?
A. 剪定の時期が早すぎたり遅すぎたりして花芽を切ってしまった場合、翌年花が咲かないことがあります。時期を守ることが一番の対策です。
Q. お神酒(おみき)をあげてから切るべきですか?
A. 必須ではありませんが、気持ちの問題として行う方もいます。ご自身が安心できるならぜひ行ってください。
Q. 玉ちらし仕立てはどんな椿でもできますか?
A. ある程度枝分かれがはっきりしている木であれば可能ですが、若い木や枝が少ない木では難しい場合があります。まずは少しずつ試してみるのがおすすめです。
Q. 生垣の椿も同じ時期に剪定していいですか?
A. 生垣として刈り込む場合は、花よりも形を優先することが多いので、花後だけでなく年に数回、軽く刈り込んでも大丈夫です。
Q. 剪定後に葉が黄色くなるのは失敗ですか?
A. 剪定直後に古い葉が数枚黄色くなって落ちるのはよくあることで、必ずしも失敗ではありません。新芽が元気に伸びていれば心配いりません。
Q. 鉢植えの椿も同じ剪定方法でいいですか?
A. 基本的な考え方は同じですが、鉢植えは根の量が限られているので、切る量は地植えよりも控えめにするのが安心です。
Q. チャドクガに刺されたらどうすればいいですか?
A. 患部を強くこすらず、粘着テープなどで毒針毛を優しく取り除いてから水で洗い流し、症状がひどい場合は皮膚科を受診してください。
Q. 剪定した枝を挿し木にできますか?
A. 椿は挿し木で増やしやすい木のひとつです。花後に伸びた元気な枝を使うと成功率が上がります。
以上、椿の剪定について、基本の時期や方法から、個性的な玉ちらし仕立て、道具やゴミの処分まで一通りお話ししました。丸く刈り込むだけでなく、少し手をかけて玉ちらし仕立てに挑戦してみると、お庭の椿がぐっと個性的な一本に育ちます。ぜひこの記事を参考に、気長に椿と付き合ってあげてください。


