
椿の花が、確か去年はたくさん咲いたのに・・・今年は一輪しか咲かない!
このように悩まれている方は意外と多く、しかも、その原因のほとんどが同じであるようです。
私も過去に同じようなことを体験したのでよくわかります。
ここでは、なぜ突然、花が咲かなくなったのかその原因と、花を来年咲かせるためには、どのような剪定方法を行なったらよいのかを解説します。
椿は前年に伸びた新梢の先端に花芽をつける花木です。
椿は比較的大きくきれいな花で、咲き続ける期間が長いので、毎年花が咲くのを楽しみにされている方も多いことでしょう。
そのように楽しみにされている方にとって、椿が咲かないなんてことになったら・・・
いち大事です!
「椿の花が咲かないけど、どうにかなりませんか?」・・・と、ご相談される方もいます。
もしかして、椿は剪定さえしておけば、毎年花を咲かせてくれると思ってはいませんか?
実は、剪定をすればするほど花を咲かせる確率は低くなるのです。
花が咲かないことで悩む方が少なくなるように、どんなことに気をつけたらよいのかお伝えします。
椿の剪定は不安だらけ
椿は日本各地で植えられていて、改良された園芸品種は豊富にあり、日本から外国に渡って品種改良された椿も多く、今では1500種類以上もあるそうです。
椿の歴史は以外にも古く、室町時代にはすでに鑑賞目的で栽培されていたといいます。
椿は日照条件の良い場所でたくさんの花を咲かせてくれ、しかも、長い期間花を咲かせてくれるので人気の高い花木です。
その反面、剪定を毎年しっかりと行なってしまうと花はだんだんと咲かなくなっていきます。
なぜそのようなことがおこるのかというと、椿は元々自然に生えている木なので、剪定をするということは、切り口を増やしてしまいます。
樹体全体に回るはずの養分が、切り口を修復するために、その部分に樹勢を注ぎこむようになります。
毎年しっかりとした剪定を行なってしまうと、樹勢が偏ってしまい、だんだんと花が咲かなくなるのです。
そのような剪定作業は、実は、わざわざ木を弱らせて枯れる方向に誘導しているのと同じことになります。
しかし、庭の広さが限られている場所に植えてある椿は、自然に伸ばして大きくすることはできません。
剪定をして大きくならないようにするかもしれませんが、本当は毎年枝葉を切ってしまうと樹勢が弱くなってしまうのです。
ただこれは、椿の剪定に慣れていない方が行なう剪定の話に限ります。
このページを読まれているあなたは、もしかしたら椿の剪定に自信がなく不慣れな方かもしれません。
椿の剪定に不安をもち悩まれていることから、情報を得るためにここに立ち寄っているのであれば、特に気をつけた方がよいです。
ここでは、椿を弱らせずに、花を咲かせるための剪定方法と剪定時期について解説しますので、あなたが実際に行なう剪定作業に取り入れてみて下さい。
新梢が伸びても環境が悪いと花芽がつかない
どんなに剪定を行なってきれいにしても、「ある条件」を満たさなければ花が咲くことはありません。
簡単に言うと、椿の花が咲くためには、前年に伸びた新梢の先端に花芽をつけなければ、次の年の春に花が咲くための準備は整わないのです。
「ある条件」とは、複数個あるので、それらすべてを満たされないと花芽は形成されません。または、花芽がなくなる可能性が高いです。
「ある条件」のひとつ目には、「花芽形成時の環境」の状況が関係しています。
たとえば、花芽が6月に形成される場合、6月の気候が低温で日照不足が続くと、花芽に影響が出る可能性があります。または、長雨や強風が続いた場合にも同じように、花芽の形成に影響が出る可能性があります。
このような、通常とは違う気象条件が続いてしまうと、椿は対応しきれなくなり、花芽に影響が出てしまうことがあり、特に、日陰に植えてあるような椿や、強風にさらされる場所に植えてある椿は、毎年花の数が少ないと思いです。
私の庭に植えてある椿は、大きなサクラの木の下の日陰に植えてあり、しかも強風にさらされる場所です。そのため毎年花の数が少なく、生長もよくないので、比較的小ぶりに育っていますが、その分剪定作業は楽をさせてもらっています。
花芽形成中の剪定は花芽をつけない
「ある条件」の二つ目には、「剪定時期」が関係しています。
何度も言いますが、椿は前年に伸びた新梢の先端に花芽をつけます。
本来、「花芽が形成される時期」にもかかわらず、剪定を行なう時にその先端を切ってしまうと、せっかく花芽をつけようとしていた芽が、葉っぱを作り出す葉芽に変わってしまい、花芽がつかなくなるのです。
花芽形成後の剪定は花芽がなくなる
「ある条件」の三つ目は、「剪定方法」に関する条件です。
花芽形成時にしっかりと花芽がついたとしましょう。
しかしその後、枝葉が思った以上に伸びて、うっとうしくなってきたので剪定をしてしまうと、花の数は減ってしまいます。
なぜなら、せっかく花芽が出来たとしても、花芽は新梢の先端につけるので、刈り込みばさみで一気に刈り込んむ剪定をしてしまうと、花芽をスッカリなくしてしまう可能性が高いからです。
これが花が咲かない原因で悩む方が行なっている「剪定方法」になります。
これは、剪定時期も剪定方法も一番良くないです。
結局、椿の花が突然咲かなくなったその原因は何?
結局、椿の花が突然咲かなくなったその主な原因は何かというと、
1.花芽形成時の気象条件が悪いことで花芽が作れないことがある「花芽形成時の環境」によるもの
2.花芽形成前に剪定を行なうことで、花芽が葉芽に変わる「剪定時期」によるもの
3.花芽が出来上がっていても、その後に深く刈り込む剪定を行なうと、先端につけた花芽を切り落とすことになる「剪定方法」によるもの
この3つが大きな主な原因になります。
一般的に気をつけなければいけないのが、人為的に行なう、上の「2」と「3」の剪定で、これが、椿の花が突然咲かなくなった一番の理由になります。
これらを気をつけるためには、椿がいつ花芽をつけるのか、その時期を知らなければ解決しません。
椿はいつ花芽を形成するのか
椿はいつ花芽をつけるかですが、3月頃に「花が咲き終わる」地域もあれば、4月頃に「花が咲き終わる」地域もあります。
同様に地域によって、「花芽が形成される時期」も変わってきます。
通常であれば、花が咲き終わり暖かくなる頃から、枝葉の先端から葉が伸び、その先端部分に「花芽が形成」されます。
椿の花芽が形成される具体的な時期は、6月頃から8月頃に、前年に伸びた新梢の先端に「花芽を形成」します。
そして、次の年の春にたくさんの花を咲かせます。
なので、花芽を形成の前の剪定や、その後の深く刈り込む剪定は、花芽に影響が出るので控えた方がよいです。
花芽ができる時期はお分かりいただけたと思いますが、次では、椿のベストな剪定時期を解説します。
椿の花を咲かせるためにベストな剪定時期
椿は、花が咲く前の年に花芽が形成される「前年生枝タイプ」なので、花が終わった後の6~7月頃に、新梢が伸びた先端や葉腋に花芽が作られます。
このことから、花芽が作られる前後にあたる夏場の剪定は、花芽に影響する可能性がありますので行わないようにします。
品種により開花時期は多少違うようですが、基本的には夏場に剪定を行なうと、樹勢が弱くなりますので行なわない方がよいです。
地域によって花が終わる時期が違いますが、椿の剪定のベストな時期は、
花の咲き終わった直後で 4~5月頃に行うと良いです。
4~5月頃の時期に剪定を終えておくと、剪定後に伸びたその新梢に花芽をつけることになります。
この時期の剪定は、特に混んでいる枝葉を間引くような剪定ができます。
とは言いましても、椿は落葉樹ではないので、坊主になるくらい葉をすっかりなくす剪定はしないでください。
葉っぱはほどほどに残さないと樹勢自体が悪くなって枯れますし、太い枝は極力切らない方が良いです。
6~7月までの間にさらに枝葉っぱが伸びて、9月から10月ころには伸びが止まるので、さらに樹形を整えるために入念な手入れを行なうには、部分的に突発的に伸びたような枝葉を切ってあげますが、この時期にはすでに花芽ができているので、花芽が確認できれば注意して枝葉を選び、樹形を乱す伸びすぎた枝葉だけを切る程度とします。
刈り込み剪定をする際も、花が終わった後すぐに剪定を行なうのが良いです。
花後に先端を刈り込むことで、葉芽に変わる可能性が高いですが、樹形の内側から伸びてくる古い枝葉の先端に、花芽がつく可能性は高いです。つまり、刈り込み剪定も含めて、次のサイクルのために、花が終わった後すぐに剪定を行なうと良いです。
剪定後に新芽が伸びてた突発的な枝葉は見苦しいので、10月頃に伸びた葉をもう一度整理するとよいです。
次では、椿の花を咲かせるために、一番良い剪定方法について解説します。
これだけで花が咲く!基本的な椿の剪定方法
椿の剪定方法は主に樹勢に影響する徒長枝、混みあった枝、枯れ枝を枝の基部から切り取ります。
その次にする作業は、樹形を整えるために、軽めの刈り込みをすると良いです。
大まかに樹形を整えたあと、内部の枝が少し見える程度にすかすように、ひとつの枝に 3枚くら葉を残すことを目安に葉のつけ根で切ります。
自然樹形で大きくしたい時は、切り詰めることはあまり行わないようにして、伸びた徒長枝だけを切るようにします。
小さく仕立てたい時や鉢植えの場合は、強めに切り詰めたほうが良く、玉仕立てや生け垣にしたものは、秋にも徒長枝を切って整理します。
椿の花がどうしても咲かない時の最終手段
木が古くなり根が活性化されていないと、樹勢が悪くなる可能性があります。
このような場合は、新しく根を発根させる必要があります。
もしも、椿の花が咲かない時には、根切りをしてみると、樹勢が復活して花が咲くようになる場合があります。
花が咲く前の2月から3月頃、小さめの椿の場合(樹高2~3mくらい)、幹の根元から30cmから50cmほど離れた場所にスコップを立てて、グイっと差し込んで根を切ってやります。
すると古くなった根が切れて、そこから新しい根が生えてきて樹勢が回復し、花芽がつくようになる可能性がありますので、どうしても花が咲かなくなった時にはやってみる価値はあると思います。
花を咲かせる椿の剪定方法
一般的な椿の剪定方法は、樹形内部で混み合っている枝葉や枯れ枝を切り取ってから刈り込む作業を行います。
これが椿の基本の剪定作業になりますが、剪定される方によっては色々なタイプがあるようです。
次では、剪定目的によって異なる4つの剪定方法についてまとめてみました。
目的により違うタイプ別の剪定方法
一般的な剪定は時期と方法はこれまで解説してきた通りですが、剪定の目的によっては、剪定時期と剪定方法が変わってきます。
剪定目的によるタイプを「花を咲かせたい」か「花は関係ない」かで、大きく4つに分けましたので各々解説していきます。
『A.花が咲くのは関係ないタイプ』
→A-1.樹形が乱れ形を整えたい
→A-2.樹形は乱れていないが徒長枝が出ている
『B.花を咲かせたいタイプ』
→B-1.樹形が乱れ形を整えたい
→B-2.樹形は乱れていないが徒長枝が出ている
A.花が咲くのは関係ないタイプ
『A.花が咲くのは関係ないタイプ』の場合は、樹形を整えることを第一に考える必要があります。
樹形には、仕立て物や丸く刈り込むタイプなどがあります。
樹形を低くしたい場合なども、花が咲くのは関係なく、樹形優先で整える必要があります。
A-1.樹形が乱れた椿の形を整える
剪定時期も何も考えずに、樹形優先で刈り込む剪定ができます。
樹勢の強い時期の剪定によっては、刈り込んだ以上に葉っぱが生える可能性もあります。
できれば6月ころに1回目の剪定を行ないます。
さらに2回目を10月頃に行なうことで、伸びた枝葉を整理します。
この年2回の剪定を行なうとよいです。
A-2.樹形は乱れていないが徒長枝が出ている
樹形は乱れていないが徒長枝が出る時は、剪定時期はいつでもよく、樹形優先で、突発的に伸びた徒長枝を切り取るだけの作業を行います。
B.花を咲かせたいタイプ
B-1.樹形が乱れた椿の形を整える
このタイプの方が一番たくさんいます。そして、剪定方法も厄介です。
乱れた樹形を整えるには、大きな剪定をしないといけなくなる可能性が高いです。
しかも、花を咲かせたいということですが、この場合、花の数を減らす犠牲を払う必要が出てきます。
無傷では樹形を整えることはできないです。
どのくらいの犠牲を払うのかというのは樹形の乱れ具合によります。
もしかしたら、1年くらいは花が咲くのをあきらめた方がよいくらい、1度バッサリと大きく刈ったり、調整しなければいけないかもしれません。その調整しだいでは、花が咲いてもまばらになったりと、数えるくらい程度に咲くだけになるかもしれません。
いずれ、樹形が乱れている場合の剪定は、花の数が7割以上減ることは覚悟された方がよいです。
そのことを前提としてお話しします。
剪定時期は、できれば6月ころに、樹形優先で刈り込み剪定を行ないます。そして、樹形の内部で枝葉が混み合っていると、いずれ枯れることになりますので、混みすぎていたら間引いて風通しを良く整理しておいた方がよいです。
さらに伸びた枝葉を10月頃に剪定し樹形を整えます。
この年2回行なうとよいです。
これで、樹形は整うはずです。
そして次の年からは、大きな剪定はしないで、剪定時期は特に関係なく、突発的な徒長枝が出てきたら、それを切り取るだけの剪定を行なって下さい。
この作業を行って行けば、だんだんと花の数も回復して増えていくはずです。
B-2.樹形は乱れていないが徒長枝が出ている
樹形は特に乱れていない状態で徒長枝が出る、しかも花を咲かせたい場合は、外観を刈り込みすぎる大きな剪定は行ないません。
剪定時期は特に関係はありませんが、突発的な徒長枝が大きく出て樹形が気になったら、そのつど切り取るだけの剪定を行なって下さい。
時期によっては花芽がわかる場合もありますので、適宜に選んで切り取ってください。
剪定時期によって花が咲かないのか検証
本当に剪定時期によって花が咲かないのか検証するために、11月に結構ガッツリ目に、当時はきれいに丸く仕上げる剪定をしました。
写真の上部の樹形が一部崩れているのは雪の重みに耐えられずに、樹形が割れてしまったためです。(4月22日撮影)
この写真を見てもらうと上半分は花が咲いていない状態です。
これは、樹形を整えるために深く刈り込んだせいです。
下半分はところどころ花が咲いています。
なぜ花が咲いているのかというと、剪定した時にハサミに触れない樹形の内側の位置に、花芽が残っていたために、花芽に影響がなかったからです。