はじめに:枝垂れるシダレザクラの管理をすべてお伝えします
「シダレザクラは美しいが、剪定をどうすればいいのか全くわからない」
「花後に切ればいいと聞いて切ったら、翌年から花が少なくなった」
「放任していたら内部がスカスカになってきた」
シダレザクラの剪定に関するこういった悩みは非常に多いです。
シダレザクラもそうなのですが、枝垂れる木は上から下に向かって枝がたれ下がる習性があることはあなたもご存じのことだと思います。
このページでは、シダレザクラの習性・花後に切ってはいけない理由・正しい剪定時期・具体的な切り方・テコの原理で太い枝を切る方法・脚立の危険性・失敗した時のリカバリー・病害虫対策・道具選び・ゴミの処分まで、シダレザクラに関するすべてをお伝えします。
シダレザクラの特徴:「上に向かう枝が次第に下に落ちる」という独特の習性
■枝垂れる木だけが持つ独特の成長パターン
大体の木は上に向かって枝が伸びるのですが、枝垂れる木の場合は枝が一度上に向かう仕草は見せますが、その後上に伸び続けるのではなく、重力に身を任せるように方向転換をして下に向かって伸びていきます。
これがシダレザクラの最大の特徴であり、この習性を理解しているかどうかで、剪定の良し悪しが大きく変わってきます。
■「上向きの枝を残す」のが習性を生かす唯一の方法
だから、上に向かって伸びる枝を切らないで残しておいても、枝は自然と下に向かって伸びるので、この習性を利用するためには上向きの枝を残す必要があります。
剪定の経験が少ない方は「上に向かっている枝が格好悪いから切ろう」と思いがちですが、それは逆効果です。シダレザクラにとって上向きの枝は、将来下に落ちて美しい枝垂れになる「原材料」のような存在です。
■不要な枝の見分け方:「下向き」と「太い枝の下側」に注目
逆に必要のない枝というのは枝のやや下部分から生え、下に向かって生えている枝や、太い枝であれば真横よりも下側から出ている枝です。これらは必ず下に向かっていきますので不要な枝であり、徒長枝は樹勢にもよくないので伸びる前に見つけ次第全て切り取っておく方がよいです。
シダレザクラの習性と剪定の基本はお分かりいただけましたでしょうか?図で表すと下図のように黄色い線で切れば良いわけです。

■切る位置を間違えると内側に向かう枝だらけになる
下の左図を見てもらうと、基本に則って赤い線で切れば良いのですが、青丸部分内の緑の線で切ってしまうと、下右図のように木の内側に向かって枝が伸びるようになります。

今は1本の枝で解説しているので大したことがないように思えるかもしれませんが、これをすべての枝で行ってしまうと枝が内側に向かっていきますので、樹形全体が細く混雑した感じになってしまいます。
そうすると内部まで日が当たらなくなり、風通しも悪くなり、枯れ枝も増えますし、病害虫が発生しやすくなるので、樹勢が損なわれ結果的に花つきも悪くなります。
■「桜切るバカ、ウメ切らぬバカ」という言葉について
「桜切るバカ、ウメ切らぬバカ」という言葉があるように、桜は切りすぎを避けるべきとされてきました。しかしシダレザクラの場合も剪定をしないと、木が茂り過ぎて花が咲かなかったりします。また生い茂るということは当然日当たりや風通しが悪くなり、害虫の格好の溜まり場となります。
「切り過ぎない」と「全く切らない」は全く違います。適切に、必要な枝だけを選んで切ることが、シダレザクラを美しく保つ唯一の方法です。
■花芽のサイクルを知ることが剪定時期を決める基本
シダレザクラの古い枝には花はつかないということは知っていましたか?今年花が咲いた枝に来年もまた花が咲くのかというと実は咲かないのです。
どういうサイクルで花が咲くのかというと、今年花がついた枝に花が終わる頃に新芽が出始め、その新芽が花後に一斉に伸びます。その年の夏に、この伸びたいわゆる充実した新枝に花芽が付いて、それが翌年の2~3月頃から蕾が膨らんで花が咲くというわけなのです。
シダレザクラの剪定時期:「10月~冬の休眠期」が唯一のベスト
■最もベストな剪定時期:落葉後の冬期(10月~芽吹く前)
シダレザクラの剪定の最適な時期は落葉後の冬期剪定で、梅と同様に10月頃~芽吹く(花芽がわかる)までの間の休眠期が一番良い時期であると思います。
冬期剪定の良い点は、シダレザクラが葉を落として休眠状態になることから、病害虫にも侵されず強い剪定にも耐えられる時期だということです。そして枝の混み具合がよくわかりますので、枝が交差していたり密になっていたりしているところが一目瞭然です。
急いでシダレザクラの剪定をしなくても良いのであれば、葉が落ちてから剪定すると枝の混み具合がわかり効率よく作業できるので、葉が落ちた冬期に剪定するといいですよ。
■花後(春~夏)に切ってはいけない理由
「シダレザクラは花後に切る」と、ほとんどの園芸書には書いてあるかもしれませんが、しかしこれは盆栽や鉢植えの場合です。庭に生えているシダレザクラの木は、できれば花後に切ってはいけないというのがポイントです。
シダレザクラの花芽が確定するのは7~8月頃で、花芽は翌年春に蕾となって花が咲き、葉芽はその後新芽となります。始めのうちは新芽に花芽も葉芽もないので、あまり早すぎる剪定をしてしまうと、花芽よりも葉芽に樹勢が取られてしまうので花芽がつきにくくなり、翌春には花をつけにくくなるようです。
庭に植えてあるシダレザクラは木の勢いが強いので、切られたことで「これは大変だ!もっと新しい枝を伸ばさなければいけない」と思い込み、花芽が葉芽に変わってしまうわけなのです。
■夏の剪定はどうしてもやむを得ない場合のみ
「でも冬期剪定まで待てない!」という場合は、全体を見て気になる枝先を間引き形だけを整えるように、突発的に伸びたような枝先、幹や枝から生える徒長枝を取り除きます。この時期の剪定は内部に日を当てて風通しを良くすることが目的なので、ガッツリ強い剪定をすると樹勢を弱めたり花芽がつかなくなるので避けてください。
この作業を葉が付いている夏期にするとなると、内部状況がよくわかりづらいことがあります。余計な葉に養分を取られ樹勢を弱くしてしまい花が咲かなくなることがあります。できるだけ10月以降の冬期剪定をした方がよいです。
シダレザクラの剪定方法:「ふところに空間を作る」が仕上がりの決め手
■基本の考え方:下向き枝を切り、上向き枝を残す
シダレザクラは下に枝が伸びていくので、枝の上側の芽を残して伸ばし、上から落ちていくような枝ぶりを作ってやるとよいです。
具体的には、下に向かって伸びている枝は全て切ります。そして真っ直ぐに伸びる枝を切って、上に向かって伸びて下に落ちる枝を生かします。

このように切ることで樹形内部に空間ができますし、今は上に向かっていく残った枝も次第に下にたれるように伸びていきますので、見栄えも大分変わってきます。
■不要枝の種類と切り方
不要枝を外すだけでも随分木の形が整うので、形を崩す立ち枝・見切り枝・下り枝・重なっている枝などの不要枝は付け根から切ります。
特に木の内側を向いて伸びた枝は、思い切ってきれいさっぱり取り除くとよいです。
シダレザクラの木の剪定のコツは懐(ふところ)を大きく作ると枝垂れる状態がきれいになります。 懐というのは幹に近い内部の空間のことです。ここに光と空気が通るようにしてあげることが、美しいシダレザクラを作る最大のポイントです。
■テコの原理で太い枝を簡単に切る方法
剪定に不慣れな方は太い枝や硬い枝を切る時に切れなくて苦労されているのではないでしょうか。でもこれから教える方法を使うと太くて硬いシダレザクラの枝でもビックリするくらい簡単に切れちゃいます。
太い枝をハサミで簡単に切る方法ですが、はじめに「ハサミで切る位置」にハサミをセットして、枝をハサミで切ると同時に、片方の手で下に向かって枝を下げて力を与えます。そうするとテコの原理で硬い枝でも簡単に切れてしまいます。場合によって、力のかけ具合によっては切れる前にスパッと折れてしまうこともあります。
力のない女性の方には重宝すると思いますし、慣れれば細い枝でもこれを必ずするようになります。

■放任すると起こる問題
もしもシダレザクラを剪定しないで放任していると枝数がどんどん増え、その枝からその後もどんどん伸びて増えるので、樹冠の中には光が入らない状態になるので枝は枯れ貧弱になり、しだいに花芽がつきにくくなります。アブラムシなどの病害虫も多く発生することになります。そこで冬場には必ず剪定をすると樹冠の中に光がよく入るので花がたくさんつくようになります。
■【忙しい方向け】15分でできるズボラ流シダレザクラ管理
完璧な管理ができなくても、これだけ守ってください。10月以降(葉が落ちた冬)に、内側に向かう枝・下向きに最初から伸びている枝を根元から切り取ります。上向きに伸びている枝は残します。これだけで懐が空いて日当たり・風通しが改善します。夏の強剪定はしません。この3点だけで「花が咲かなくなる」という最悪の失敗を防げます。
失敗した時のリカバリー:「やってしまった!」時の対処法
■花後(春~夏)に深く剪定してしまった場合
花後に深く剪定してしまった場合、翌年の花は少なくなる可能性があります。しかし木が枯れるわけではありません。これ以上の追加剪定は止めてください。来年の10月から冬期の正しい管理に切り替えることで、翌々年から花が戻ります。
■内側に向かう枝が増えすぎてしまった場合
切る位置を間違え続けて内側に向かう枝が増えてしまった場合、懐に空間を作ることが回復の第一歩です。冬期(10月~)に内側に向かっている枝を根元から思い切って取り除いてください。一度でスッキリさせることで、残った枝に光が当たりやすくなり、新しい上向きの枝が育ちやすくなります。
■放任して花が全く咲かなくなってしまった場合
長年放任して内部が混雑し花が全く咲かなくなってしまった場合、まず冬期に内側に向かう枝・下向き枝・重なり枝を大胆に取り除いて懐を作ることが最優先です。樹冠内に光が入るようになれば、翌年から花芽が形成されやすくなります。
病害虫対策:シダレザクラにかかりやすい病害虫と対処法
■①アブラムシ:春の新梢に群がる害虫
シダレザクラで多く発生する害虫がアブラムシです。放任して枝が混雑していると発生しやすくなります。スミチオン乳剤1,000~1,500倍液を散布して駆除します。冬の透かし剪定で風通しを確保することが最大の予防です。
■②てんぐ巣病:桜類に多い病気
枝が異常に細かく密集して伸びる「てんぐ巣病」が桜類では発生することがあります。発病した部位は根元から切り取って処分します。
■③木材腐朽菌・キノコ:切り口から侵入
太い枝を切った後の大きな切り口に木材腐朽菌が侵入することがあります。切り口には必ず癒合剤を塗って保護することをおすすめします。
おすすめの道具:プロが実際に使うおの義の道具と安全管理
■おの義の剪定ばさみ(シダレザクラ管理の主役)
シダレザクラの管理で最もよく使う道具が剪定ばさみです。細い枝・徒長枝の切り取りから太い枝の切除まで幅広く活躍します。シダレザクラの枝は意外と硬いため、切れ味が良く耐久性のある剪定ばさみが必要です。
おの義(おのよし)の剪定ばさみは刃の切れ味・耐久性ともに優れており、現場での長年の使用に耐えます。テコの原理を使えば太い枝でもスパッと切れます。
お手入れ: 使用後は刃に付いた樹液をウエスで拭き取り、薄く油を塗ります。おの義は研ぎ直しサービスにも対応していますので、長く使い続けることができます。
■剪定ノコギリ(太い枝の切除に)
剪定バサミで太刀打ちできない場合は、ノコギリが必要になります。
■脚立の選び方と命を守る最重要注意事項
シダレザクラの剪定では高い場所の作業が発生することがあります。ここで絶対に覚えていただきたいことがあります。
4本足の脚立は絶対に使わないでください。 4本足の脚立は平らな場所では威力を発揮しますが、足が4本であるため不整地ではバランスが悪くなり、一瞬でもグラッとすると対応できずに落ちることになっています。
実際に何十人と脚立から落ちて、命を亡くした人、半身不随や脳障害を起こした人たちを知っていますし、実際に見てきました。木1本のために命を落とすなんて悲惨な人生だと思います。
必ず3脚(三脚)を使ってください! お年寄りになればなるほど「俺は大丈夫!」と思いがちですが、3脚がない場合は剪定作業をしないか業者に頼むなどで対応してください。お金と命とどちらが大切か、一度考えることです。
ゴミの処分とマナー:後片付けと近所への配慮
■切った枝で足を刺さないための注意
切った枝を地面に置きっぱなしでいると注意が必要です。太めの枝から出ている先の尖った短い枝が意外と厄介です。この枝を知らないで底の薄い靴などで踏んでしまうと簡単に貫通してしまい足につき刺さることがあります。何度も痛い思いをしました。気をつけているつもりでも意外とトゲのあるところを歩いてしまうものです。
作業前にシートを敷いておくと、切った枝の踏み込み事故を防げますし、後片付けも格段に楽になります。
■剪定ゴミの処分
自治体の燃えるゴミに出せることが多いですが、量・袋の指定・長さの制限は自治体によって異なります。太い枝はノコギリで短く切り揃えてから処分すると搬出しやすくなります。
よくある質問Q&A
Q. シダレザクラの花が咲かなくなりました。なぜですか?
A. 最も多い原因が剪定のタイミングです。花後~夏(7~8月の花芽形成期)に深く剪定していた場合、花芽が葉芽に変わってしまっている可能性が高いです。10月以降の冬期剪定に切り替えてください。
Q. 上に向かっている枝を切った方がいいですか?
A. 残してください。シダレザクラは上に向かう枝が次第に重力に従って下に落ちていく性質があります。上向きの枝を残すことが、将来の美しい枝垂れにつながります。
Q. 内側に向かっている枝はどうすればいいですか?
A. 思い切って根元から取り除いてください。内側に向かう枝は懐を狭くして日当たり・風通しを悪化させます。「懐を大きく作る」ことが美しいシダレザクラの樹形を保つコツです。
Q. 太い枝が剪定バサミで切れません。どうすればいいですか?
A. テコの原理を使った切り方を試してください。ハサミをセットして枝を切ると同時に、もう片方の手で枝を下に押し下げると、硬い枝でも簡単に切れます。それでも切れない太い枝はノコギリを使ってください。
シダレザクラは「下向きに伸びている枝は根元から切る」「上向きに伸びている枝は残す」「10月~葉が落ちた冬に剪定する」「懐(ふところ)に空間を作る」という4つのポイントを守ることで、毎年美しい枝垂れの花を楽しめます。そして何より、高所作業の安全(三脚の使用)は命に関わる最重要事項です。このページがシダレザクラとの長いお付き合いの参考になれば幸いです。


