サルスベリの剪定時期と剪定方法

はじめに:「サルスベリはいつ剪定すればいいの?」その答えはシンプルです

「サルスベリが大きくなりすぎて困っている」「夏に枝を切ったら翌年の花が少なくなった気がする」「どこで切ればいいかわからない」サルスベリに関するこういった悩みは非常に多いです。

サルスベリは幹の美しい肌、個性的な枝ぶり、そして真夏に3ヶ月間も咲き続ける鮮やかな花で、庭木として1年中楽しめる非常に魅力的な木です。でもその魅力を引き出すためには、剪定の時期と方法を正しく知ることが欠かせません。

このページでは、サルスベリの花が咲く仕組みから、正しい剪定時期・2つの剪定方法・失敗した時のリカバリー・すす病など病害虫対策・道具選び・ゴミの処分まで、サルスベリに関するすべてをお伝えします。

サルスベリの特徴:まず「どんな木か」を知っておこう

■「百日紅(ヒャクジツコウ)」の名前の由来

サルスベリは中国原産の落葉中高木です。別名は百日紅(ヒャクジツコウ)と言い、花が7月から9月の真夏にかけて約3ヶ月も咲き続けることから百日咲き続けるために名づけられました。

ただし、1つの花が100日間も咲き続けるわけではありません。次々に新しい花が咲くために、ずっと咲き続いているように見えるだけで、実際はひとつの花の寿命は1日程度しかないそうです。「次の花が次の花を繋いでいく」という仕組みが、あの長い開花を実現しています。

■「サルスベリ」の名前の由来

サルスベリは、幹が太くなるにつれだんだんと古い樹皮が剥がれ落ちていきます。古い樹皮が剥がれ落ちると、猿が登っても滑るようなすべすべした美しくて新しい樹皮になるので「サルスベリ」という名がつけられたといいます。実際には、猿は滑らずにスルスルと上っていってしまうのですが、名前としてはそのまま定着しました。このすべすべした幹の美しさも、サルスベリを庭木として人気にしている理由のひとつです。

■「その年の春に伸びた枝の先に花芽がつく」これが剪定時期を決める核心

サルスベリを管理する上で絶対に知っておくべき知識がここです。その年の春から伸びた枝の先に花芽がつき、夏ころから順に花が咲きます。

この「今年伸びた新しい枝に花芽がつく」という性質は、他の多くの花木と異なる重要なポイントです。これを知ることで、「なぜ冬に切っても翌年花が咲くのか」「なぜ夏に切ると花が減るのか」がすっきり理解できます。

古い枝には花芽がつかず、剪定後に伸びた新しい枝に花芽がつきます。ですから冬に古い枝を切り戻しても、春に新しい枝が出てきてそこに花芽がついて夏に花が咲くのです。

■剪定の3つの目的

サルスベリの剪定には明確な目的があります。ただうっとうしいから切るのではなく、以下の目的を意識して行うことが大切です。

古い枝・枯れ枝の除去が第一の目的です。樹形の内側が混み合わないようにすることで風通しが良くなり、病害虫が発生しにくくなります。

樹形を整えることが第二の目的です。バランスの良い形を保つことで見た目が美しくなり、花がきれいに咲き誇って見えます。

花をたくさん美しく咲かせることが第三の目的です。新しい枝に花が咲くので、古い枝を適切に剪定することで花つきがよくなります。古い枝を放っておくと花芽がつきにくくなり花が咲かなくなります。逆に枝を強く切りすぎると枝先にだけ花が咲きすぎ、見栄えが悪くなります。

サルスベリの剪定時期:「冬(12月~2月)」が絶対のベスト

■なぜ冬の剪定がベストなのか

サルスベリの剪定時期は、冬(12月~2月)が最適です。この時期は休眠期にあたり、樹木に与えるダメージが最小限になります。特に花芽は新しい枝にできるので、古い枝を切っても翌年の花に問題はありません。

具体的に言うと、地域によって幅がありますが、葉っぱが落ち切った11月頃から、新芽が出る前の4月頃までの間には済ませておきたいです。花を咲かせたい場合の剪定時期に最もベストなのが12月~2月です。

■夏(6月前後)に切ると花が減る理由

よくサルスベリの枝葉が良く伸びた6月前後にうっとうしくなって、伸びた枝先の方を切られる方が多いようです。しかしそんなことをしたら、その年の花は少なくなる可能性が高いです。

なぜなら、6月以降はすでに春に伸びた新梢に花芽が形成されてきているからです。その花芽がついた枝を切り落とすことで、その年の花の数が激減します。

さらに、芽が伸びる前の状態まで切り戻す(枝元から枝自体をすっかり切り取る)と、花は見ることができません。

■花を見ることが目的でない場合

ちなみに花を見ることが目的でない場合には、樹体にダメージを与えないように行えば、基本的に1年のうちいつ剪定を行ってもよいです。ただし夏場の強い日差しの下での深い剪定は木へのストレスになりますので、できれば避けた方が無難です。

■4月でも間に合うか?

冬(12~2月)の適期を逃しても、新芽が出る前の4月頃までであれば剪定は可能です。ただし4月に近づくほど新芽が動き始めており、花数が少し減る可能性があります。「遅れたとしても4月までには必ず終える」という意識が大切です。

サルスベリの剪定方法:2つの方法を状況で使い分ける

■剪定前に知っておくべきこと

サルスベリは剪定時期が良くても、枝をすっかり切る強い剪定をしてしまうと、春に新芽が出てから葉っぱが落ちるまでに1mくらい長く伸びる枝が出ることもあります。平均すると50cmくらいは伸びるようです。

これは強く切ったことで木が「もっと枝を伸ばそう」と頑張るためです。切り方が強すぎると、せっかく剪定しても夏にはまた大きくなっているということが起きやすいです。

■剪定方法①:枝元ですっかり切る(すす病などの最終手段)

サルスベリの剪定方法のひとつが、枝の太いところの最終地点で、今年伸びた枝を枝元でばっさり切る方法です。

この方法は毎年同じところで切り続けると、その箇所がだんだんとコブのようになっていきます。「次回どこで切ればいいかわからなくなったら、この握りこぶし状のコブを目印にして、そこで切る」という方法です。

ただしこれは、すす病などにかかり枝が黒くなってしまった場合に行う最終手段です。切った後の切り残された枝の部分が長いと見栄えが悪くなりますので、結構短めにすっきり剪定します。剪定と同時に、すす病用の薬剤を散布しておくことをおすすめします。

年々花が咲かなくなってきたというお客様のサルスベリ(樹高3.5m・日当たりばっちりだが剪定未経験でずっと放置・すす病感染)をこの方法で葉っぱが落ちた11月に剪定したところ、翌年は結構たくさん花が咲いてくれました。この実例からも、「たとえ枝元でばっさり切っても、正しい時期(冬期)に行えば翌年の花は咲く」ということがわかります。

■剪定方法②:枝を10~20cm残して切る(おすすめの方法)

もうひとつのサルスベリの剪定方法が、枝の太いところの最終地点から今年伸びた枝を10cm~20cm程度残して剪定する方法です。

①と違うのは、枝元からすっかり切るのではなく枝を適度の長さで残すということです。次の年は一段階細い枝先で同じように10cm程度残して切っていくと、自然な樹形を得られるようになります。

この方法がおすすめの理由は2つあります。ひとつは枝元でバッサリ切るよりも木への負担が少ないこと、もうひとつは年数をかけながら自然な樹形に整っていくことです。毎年少しずつ、一段階ずつ整えていくイメージです。

■どちらの方法を選ぶべきか

まとめると、すす病などで枝が傷んでいる場合は①の枝元でばっさり切る方法を選びます。健全な木で自然な樹形を維持したい場合は②の10~20cm残して切る方法がおすすめです。

■【忙しい方向け】15分でできるズボラ流サルスベリ剪定

時間がない方はこれだけ守ってください。

葉が落ちた冬(11~2月中)に、細い枝先を10~20cm残して切り戻します。枯れ枝と内部の混んでいる枝を数本取り除きます。夏(6月以降)は花芽がついているので太い枝には手を入れません。この3点を守るだけで、「夏に切って花を消してしまう」という最大の失敗を防げます。

失敗した時のリカバリー:「やってしまった!」時の対処法

■夏(6月以降)に深く刈り込んでしまった場合

花芽がついてきた6月以降に深く刈り込んでしまった場合、その年の花は大幅に減る可能性があります。しかし木が枯れるわけではありませんので、以下の対処をしてください。

これ以上の追加剪定は止めてください。残っているわずかな花芽まで失うことになります。翌年の花を確保するために、次の冬(11~2月)に正しいタイミングで剪定を再スタートしてください。

■枝元でバッサリ切りすぎてスカスカになった場合

強く切りすぎてスカスカになってしまった場合でも、サルスベリは萌芽力が強いので春になると勢いよく新しい枝を出してきます。その新しい枝に花芽がついて夏に花が咲きますので、追加の剪定は行わずにそのまま様子を見てください。

ただし問題は、強く切りすぎた後に出る新梢が1m近くまで伸びることがあることです。そのまま放置すると翌年また大きくなりすぎます。次の冬に②の「10~20cm残す方法」で整えることで徐々に樹形が安定してきます。

■何年も剪定せずに放置して大きくなりすぎた場合

長年放置してすす病になったり、花が咲かなくなってしまった場合は、冬期(11~2月)に①の「枝元でばっさり切る方法」で一度リセットすることをおすすめします。翌年からは②の「10~20cm残す方法」に切り替えて、自然な樹形に仕立てていきましょう。

実際の事例でも、長年放置してすす病になったサルスベリを11月に枝元でバッサリ切ったところ、翌年結構たくさんの花が咲きました。諦めずに正しい時期に剪定することが大切です。

■花が全く咲かなくなった場合

何年も花が咲かなくなった場合、考えられる原因は剪定時期のズレ・すす病・アブラムシなどの害虫による樹勢の低下・日照不足などです。まず冬期に剪定を見直して、すす病や害虫の有無を確認してください。日照不足が原因の場合は、周囲の木を整理して日当たりを確保することが必要です。

病害虫対策:サルスベリにつく代表的な病害虫と対処法

■①すす病:サルスベリ最大の病気の敵

サルスベリで最も問題になる病気がすす病です。葉や枝が真っ黒な煤(すす)で覆われたように見えるカビの病気で、見た目が非常に悪くなります。放置すると光合成が妨げられ、樹勢が大幅に低下して花が咲かなくなります。

実際に、長年放置してすす病にかかったサルスベリが「年々花が咲かなくなってきた」という状態になった事例を経験しています。

すす病の直接の原因はアブラムシやカイガラムシの排泄物(甘露)にカビが繁殖することです。つまりすす病を防ぐには、先にアブラムシやカイガラムシを駆除することが先決です。

対処法として、枝が黒くなってしまった場合は、冬期に①の「枝元でばっさり切る方法」で感染枝を切り除きます。同時にスミチオン乳剤などを散布してアブラムシやカイガラムシを駆除します。切り除いた黒い枝葉は必ず袋に密封して処分し、地面に放置しないでください。

予防策として、定期的な冬期剪定で風通しを確保することが最大のすす病予防です。

■②アブラムシ:すす病を引き起こす元凶

春の新梢に大量のアブラムシが群がります。放置するとすす病を引き起こすため、早期発見・早期駆除が重要です。アリが幹を頻繁に上り下りしていたらアブラムシを疑ってください。

少数発生なら水を勢いよくかけて洗い流します。大量発生ではスミチオン乳剤1,000~1,500倍液を葉全体(特に裏側)に散布して駆除します。4~5月の発生初期に予防散布を行うと効果的です。

■③カイガラムシ:吸汁してすす病を誘発する害虫

枝や幹に白い粉状または貝殻状の突起がついている場合はカイガラムシです。アブラムシと同様にすす病の原因になります。少量なら古い歯ブラシでこすり落とします。多い場合は冬の休眠期に石灰硫黄合剤を散布して防除します。

■④うどんこ病:葉が白い粉に覆われる病気

葉の表面が白い粉状のもので覆われている場合はうどんこ病です。梅雨時期の高温多湿で発生しやすいです。発病した葉は取り除いて処分し、サプロール乳剤やトップジンM水和剤を散布して対処します。風通しを確保することが最大の予防策です。

病害虫共通の予防策: 定期的な冬期剪定で枝葉の密度を適切に保ち、風通しと日当たりを確保することです。

おすすめの道具:プロが実際に使うものと選び方

■剪定ばさみ(細い枝・10~20cm残す剪定に)

サルスベリの「10~20cm残す剪定方法」(方法②)では、剪定ばさみが主役になります。切れ味の良いものを選ぶことが重要で、切れ味が悪いと切り口が潰れて回復が遅くなります。アルス・岡恒などの国産メーカーの3,000~8,000円程度のものが信頼できます。

お手入れ: 使用後は刃に付いた樹液をウエスで拭き取り、アルコールで消毒してから薄く油を塗ります。すす病の枝を切った後は必ず消毒してから次の枝に使ってください。

■剪定ノコギリ(太い枝の枝元切りに)

「枝元でばっさり切る方法」(方法①)で太い枝を切る際にはノコギリが必要です。折りたたみ式の剪定ノコギリがコンパクトで持ち運びやすいです。

■高枝切りバサミ(高い部分の細い枝に)

サルスベリが3m以上になると、上部の細い枝が手の届かない高さになることがあります。高枝切りバサミ(ポールプルーナー)を使うと三脚を出さずに上部の枝を整理できます。

■三脚(高い枝の本格的な作業に)

3m以上のサルスベリの太い枝の作業には3本足の剪定三脚が必要です。4本脚の脚立は不安定で転倒リスクがあります。

■養生シート(後片付けを楽にする)

サルスベリの冬期剪定では大量の枝が出ます。作業前に根元と周囲に養生シートを敷いておくと片付けが格段に楽になります。

ゴミの処分とマナー:後片付けと近所への配慮

■すす病の枝葉は必ず分けて処分

すす病にかかった黒い枝葉は、健全な枝葉と一緒にせず密封して燃えるゴミに出してください。地面に放置するとカビが広がります。

■通常の剪定ゴミの処分方法

健全な枝葉は自治体の燃えるゴミに出せることが多いです。枝は50cm程度に切り揃えてひもで束ねると収集に出しやすくなります。量が多い場合は造園業者に引き取りを依頼することも検討してください。

■ご近所への配慮

サルスベリは枝が横に広がりやすく、お隣の敷地の上空に越境していることがあります。剪定前に一声かけることがご近所トラブルを防ぐ基本マナーです。

プロのホンネ:自分でやる限界と業者に頼む目安

木の高さが3mを超えている場合: 太い枝の作業は転落リスクが大きくなります。3mを超えたら上部の本格的な剪定は専門業者に依頼してください。

すす病が木全体に広がっている場合: 薬剤散布と剪定を組み合わせた対処が必要で、自分での対処には限界があることがあります。造園業者に相談してください。

長年放置して大木になりすぎた場合: どこをどう切るか判断が難しくなります。プロに一度リセットしてもらい、その後の維持管理を自分で行う方法が最善です。

よくある質問Q&A

Q. 花が咲かないのは剪定のせいですか?

A. 最も多い原因が剪定のタイミングです。6月以降(花芽がつき始める時期)に深く刈り込んでいた場合、花芽を切り落としている可能性が高いです。次の冬(11~2月)に正しい剪定に切り替えてください。またすす病にかかっている場合も花が咲きにくくなりますので、病害虫のチェックも合わせて行ってください。

Q. 毎年同じ場所で切っていいですか?

A. 問題ありません。毎年同じ場所で切り続けると、その部分がコブ(握りこぶし状)になっていきます。これがむしろ「次回どこで切ればいいかの目印」になりますので、覚えておくと便利です。ただしコブが大きくなりすぎると見栄えが悪くなるため、おすすめの②(10~20cm残す方法)に切り替えることで自然な樹形になります。

Q. サルスベリの葉が黒くなっています。病気ですか?

A. すす病の可能性が高いです。アブラムシやカイガラムシの排泄物にカビが繁殖して葉や枝が黒くなります。まずスミチオン乳剤を散布してアブラムシ・カイガラムシを駆除してください。ひどい場合は冬期に感染枝を枝元から切除して処分します。

Q. 冬に強く切りすぎて枝がスカスカになりました。大丈夫ですか?

A. 大丈夫です。サルスベリは萌芽力が強いので、春になると勢いよく新しい枝を出してきます。その新しい枝に花芽がついて夏に花が咲きます。ただし強く切ると伸びる枝が長くなりやすいので、次の冬は②の「10~20cm残す方法」で整えてください。

Q. 冬に全部の枝を切り落としたら花は咲きますか?

A. 春に新しい枝が出てくれば、その枝先に花芽がついて夏に花は咲きます。ただし芽が伸びる前の状態まで完全に切り戻してしまうと、新梢の伸びが遅れて花の数が少なくなる場合があります。完全に枝元から切り戻すのは、すす病などで枝が傷んでいる時の最終手段として使ってください。

Q. サルスベリの肥料はいつ、何を与えればいいですか?

A. 花後(9~10月)にリン酸・カリウムが多い肥料を少量与えると翌年の花芽形成を助けます。また冬(12~2月)に緩効性の有機肥料(骨粉・油粕)を根元に置き肥することで翌年の樹勢を支えます。肥料の与えすぎは徒長を招くので少量ずつ様子を見てください。

サルスベリは「葉が落ちた11~2月に剪定する」「10~20cm枝を残して切る(おすすめ方法②)」「夏は花芽がついているので太い枝に手を入れない」という3つのポイントを守れば、毎年夏に美しい花を楽しめます。真夏の3ヶ月間も庭を彩り続けるサルスベリを、ぜひ正しい管理で長く楽しんでください。このページがその参考になれば幸いです。

サルスベリはどこで切ったら良いか図解で実践検証編

サルスベリ(百日紅)に発生する病害虫