シキミってどんな木?シキミの剪定時期と剪定方法

はじめに|シキミの剪定で迷っていませんか

シキミの剪定は、「丈夫で刈り込みに強い」という性質を知っておけば、初心者の方でもつやのある美しい緑を保てる木です。ただし、木全体に毒があるので、扱いには少しだけ注意が必要です。

なぜ最初にこの2つをお伝えするかというと、シキミは手入れ自体はやさしい木である一方、植物の中ではめずらしく「全体に毒を持つ」という、知っておくべき大切な特徴があるからです。たとえるなら、扱いやすくて頼りになるけれど、ひとつだけ守るべきお約束がある木、というイメージです。このお約束さえ知っていれば、何も怖がる必要はありません。

具体的にお話しすると、シキミは、お墓やお仏壇(ぶつだん)にお供えする、あの緑の枝としてよく知られています。お墓参りに行くと、花立てに緑の枝が供えられているのを見たことがあるはずです。あの枝の多くが、シキミです。古くから仏事(ぶつじ=仏様のお祭りごと)に欠かせない木として、日本人の暮らしと深く結びついてきました。葉や枝に独特のよい香りがあり、その香りが「邪気(じゃき=悪いもの)を払う」とされたことや、毒があるために動物が墓を荒らすのを防いだことから、墓前に供えられるようになったといわれます。

ところで、シキミは神棚に供える「サカキ」とよく混同されます。どちらも仏事・神事に使う緑の枝ですが、シキミは仏事(お墓・お仏壇)、サカキは神事(神棚)と、使われる場面が違います。この違いもこの記事でしっかりお伝えします。

この記事では、シキミとはどんな木かという特徴や、花・実・香り、サカキとの違い、そして必ず知っておきたい毒性のこと、剪定の時期と方法、挿し木での増やし方、グンバイムシなどの害虫対策まで、シキミに関する知りたいことをまるごとお伝えします。この1本を読んでいただければ、シキミの剪定や手入れの悩みは、ほとんど解決するはずです。どうぞ最後までお付き合いください。

シキミ(樒)ってどんな木?特徴を詳しく知りましょう

シキミは、つやのある葉とよい香りを持つ常緑樹で、仏事に使われる一方、木全体に毒を持つことで知られる、特徴的な木です。

このことを最初に知っておくと、剪定や手入れのコツ、そして注意点がぐっとわかりやすくなります。シキミには知っておくべき大切な特徴がいくつもありますので、ここでは特に詳しくお伝えします。

■つやのある葉と、独特のよい香り

シキミの葉は、厚みがあって表面につやがあり、深い緑色をしています。ふちはなめらかで、少し波打っているものもあります。この葉や枝を折ると、独特の、お線香のようなさわやかな香りがします。

実はこの香りこそ、シキミが仏事に使われる大きな理由のひとつです。お線香の原料にシキミの葉や樹皮の粉が使われることもあり、「香りの木」として古くから利用されてきました。

■春に咲く、淡い黄白色の花

シキミは、春(3月~4月ごろ)に、淡い黄白色(おうはくしょく=うすい黄色がかった白)の、細い花びらをたくさん持つ花を咲かせます。花の形は、ヒトデのような、菊のような、独特の細い花びらが特徴です。

地味ですが、よく見るとなかなか趣(おもむき)のある花です。常緑のつやのある葉の中に、淡い花が咲く様子は、静かな美しさがあります。

■星形の実と、その危険性

花が終わると、秋にかけて、独特の形をした実をつけます。この実は、平たい星形、または小さな車輪のような形をしていて、中華料理の香辛料「八角(はっかく=スターアニス)」にとてもよく似ています。

ここが、シキミで最も注意すべき点です。八角は食べられる香辛料ですが、シキミの実はよく似ていても、強い毒を持っていて、絶対に食べてはいけません。形が似ているための誤食(ごしょく=間違えて食べること)事故が、実際に起きています。この実の毒については、のちほど詳しくお伝えします。

■シキミとサカキ、ヒサカキ(ビシャコ)の違い

シキミは、神棚に使う「サカキ」や「ヒサカキ(地域によりビシャコとも呼ばれます)」と、よく混同されます。違いを整理しましょう。

まず、使う場面が違います。シキミは仏事(お墓・お仏壇)、サカキ・ヒサカキは神事(神棚)に使います。

次に、葉が違います。シキミの葉は厚くて少し波打ち、折るとお線香のような香りがします。サカキの葉はふちがなめらか、ヒサカキの葉はふちがギザギザしています。そして、シキミには毒がありますが、サカキ・ヒサカキに強い毒はありません。「仏様にはシキミ、神様にはサカキ」と覚えると、わかりやすいです。
https://art-sentei.com/8972.html

■シキミの樹高と利用

シキミは、放っておくと高さ2~5メートルほどになる木です。剪定で大きさをおさえれば、家庭でも扱いやすく保てます。利用としては、前にお伝えしたように、仏事のお供え(仏花の代わり)、お線香やお香の原料、そして香りによる虫よけなどに使われてきました。花言葉には「援助」「甘い誘惑」などがあります。

■「庭に植えてはいけない」と言われる理由

シキミは「庭に植えてはいけない」と言われることがあります。その最大の理由が、これまでお伝えしてきた「毒性」です。小さなお子さんやペットがいるご家庭では、実や葉を誤って口にする心配があるため、避けたほうがよいとされるのです。また、仏事に使う木なので、縁起を気にする方が庭木を避けることもあります。ただ、毒のことを正しく理解し、誤食に気をつければ、お墓用・仏壇用に育てるなど、有用に活用できる木でもあります。

必ず知っておきたい|シキミの毒性

シキミは、葉・枝・花・実・種など、木全体に毒を持っており、特に実が危険なので、誤って口にしないことが何より大切です。

なぜこれを独立して、しっかりお伝えするかというと、シキミの毒は植物の中でも特に強く、安全に付き合うために絶対に知っておくべきことだからです。剪定や手入れをするうえでも、この知識は欠かせません。正しく知れば、過度に怖がる必要はありません。

■毒の成分と、危険性

シキミの毒の主な成分は「アニサチン」という物質です。この毒は、特に実と種に多く含まれます。誤って口にすると、吐き気やおう吐、おなかの痛み、ひどい場合にはけいれん(体が硬直して震える発作)などの中毒症状を起こします。シキミの実は、植物としては日本でただひとつ、法律で「劇物(げきぶつ=取り扱いに注意が必要な毒物)」に指定されているほど、危険なものです。それほど強い毒だと知っておいてください。

■八角との間違いに特に注意

最も注意したいのが、前にもお伝えした、中華料理の香辛料「八角」との間違いです。シキミの実は八角にそっくりですが、毒があります。「庭のシキミの実を、八角だと思って料理に使ってしまった」というような誤食は、絶対に避けなければなりません。シキミの実は、香辛料としては絶対に使えない、と強く心にとめてください。

■手入れのときの注意点

「木全体に毒があるなら、触っても危ないの」と心配になるかもしれませんが、剪定で枝葉に触れる程度では、すぐに害が出るわけではありません。ただ、念のため、作業のときは手袋をし、作業後は手をよく洗いましょう。また、切った枝葉を、子どもやペットが口にしないよう、放置せずきちんと処分することが大切です。誤食さえ防げば、安全に手入れできます。

■万が一のときは

もし誤って口にしてしまった場合は、すぐに口から出させ、ためらわず医療機関に連絡・受診してください。何をどのくらい口にしたかを伝えられると、処置がスムーズです。家庭で無理に対処しようとせず、専門家に任せるのが、いちばん安全です。

シキミの剪定に適した時期

シキミの剪定に最も適しているのは、新芽が動き出す前の「春(3月~4月)」と、暑さが落ち着いた「秋(9月~10月)」です。

なぜこの2つの時期がよいのかというと、シキミは常緑樹なので、寒すぎる真冬や暑すぎる真夏に強く切ると木が弱りやすく、気候のおだやかな春と秋が木に負担をかけにくいからです。人間でいえば、過ごしやすい季節にゆっくり手入れをしてあげるイメージです。

■春(3月~4月)が一番のおすすめ

最もおすすめなのが、新芽が動き出す前後の春です。この時期に形を整えておくと、そのあとに出てくる新芽がきれいに茂り、初夏には青々とした美しい姿になります。本格的に形を整える剪定は、この春先におこなうのが理想的です。花も春に咲くので、花を楽しみたい場合は、花が終わってから整えるとよいでしょう。

■秋(9月~10月)に整え直す

夏の間に伸びて少し乱れた形を、暑さが落ち着いた秋に整え直すと、きれいな姿で冬を迎えられます。年に2回、春と秋に手入れすると、一年を通して整った美しい状態を保て、仏事用のつやのよい枝も採りやすくなります。

■仏事用の枝を採るとき

シキミをお墓・お仏壇用に育てている場合、枝を採るのは、お供えが必要なときに随時で大丈夫です。つやのよいきれいな枝を採るためにも、木自体は春と秋にきちんと剪定して、健康に保っておくのがおすすめです。

■真夏と真冬は避ける

避けていただきたいのは、真夏の暑い盛り(7月~8月)と、凍るような真冬(12月~2月)です。真夏に強く切ると、急に日が当たって葉が傷みます。真冬に切ると、切り口や新芽が寒さでダメージを受けやすくなります。

まとめますと、シキミの剪定は「春が本番、秋に整え直す、真夏と真冬は避ける」と覚えていただければ間違いありません。

シキミの剪定方法|つやのある姿を保つコツ

シキミの剪定は、「込み合った枝を間引いて風と光を通し、自然な姿を活かす」のが基本です。

その理由は、シキミは葉が密に茂りやすく、放っておくと内側まで日が届かず風通しが悪くなって、害虫や病気が出やすくなるからです。間引いて明るくしてあげることが、つやのある美しい緑と、木の健康を保つコツです。

■まず込み合った枝を間引く

優先して切る枝は、枯れている枝、内側に向かう枝、交差してこすれる枝、真上に勢いよく伸びた枝です。これらを付け根から間引くと、株全体に光と風が通り、風通しがよくなります。シキミは葉が密になりやすいので、この間引きが特に大切です。風通しがよくなると、のちほどお伝えするグンバイムシなどの害虫も予防できます。

■枝を切るときの基本のコツ

枝を切るときは、枝の付け根、幹から少しふくらんだ部分のすぐ外側で切ります。幹にぴったりつけて切りすぎると傷が大きくなり、逆に切り口を長く残しすぎると、その部分が枯れこんで病気の入り口になります。仏事用に形よく整えたい場合は、自然な丸みを意識して、飛び出した枝を切りそろえます。

■大きくしすぎない

シキミは放っておくと数メートルになります。お墓・お仏壇用や鑑賞用として家庭で楽しむなら、手の届く高さ(2メートル前後)に保つのがおすすめです。高く伸びた枝は途中で切り戻し、収穫(枝採り)や手入れが、地面に立ったまま安全にできる大きさにまとめましょう。

■切る量は控えめに、手袋を忘れずに

シキミは丈夫ですが、一度に切る量は全体の3割くらいまでにとどめるのが安心です。そして、毒のある木ですので、作業のときは手袋をし、作業後は手を洗うことを忘れないでください。切った枝葉も、子どもやペットが触れないよう、きちんと片づけましょう。

切りすぎた・失敗したときのリカバリー方法

もし切りすぎてしまっても、シキミは丈夫で芽吹く力があるので、あわてず見守れば、多くの場合きちんと回復しますので安心してください。

なぜなら、シキミは常緑樹の中でも丈夫で、葉の残った枝から新しい芽を出す力を持っているからです。多少切りすぎても、枯れることはまれです。大切なのは、失敗したあとの正しい対応です。

■切りすぎてスカスカにしてしまった場合

刈りすぎて葉が少なくなり、スカスカになってしまったときは、まずあわてず見守ってください。シキミは、葉の残っている枝から新しい芽を出してきます。このとき大切なのは、「肥料をたくさんあげて早く茂らせよう」とあわてないことです。弱った木に急に肥料をあげると、かえって根が傷んでしまうことがあります。胃腸が弱っているときに、いきなりたくさん食べさせるとお腹をこわすのと同じです。まずは水やりだけきちんとして、木が自分の力で芽を出すのを待ちましょう。新芽が出てきたら、混み合った部分を少し間引きながら、ゆっくり茂らせていきます。

■葉のない古枝まで切りすぎた場合

ひとつ注意点があります。葉が一枚も残らないほど、内側の茶色い古枝だけにしてしまった部分は、そこから芽が出にくいことがあります。その場合は、周りの元気な部分が伸びてくるのを待ち、数年かけて穴を埋めていくつもりで向き合ってください。

■間違った時期(真夏)に切ってしまった場合

「うっかり真夏に強く切ってしまった」という場合は、切り口や残った葉が直射日光で焼けないように、寒冷紗(かんれいしゃ)などで一時的に日陰を作ってあげると安心です。土が乾いていたら、朝夕の涼しい時間に水をあげてください。シキミは丈夫なので、一度の失敗で枯れることはまれです。

シキミの病害虫対策|グンバイムシとタマバエに注意

シキミの病害虫は、剪定で風通しを良くしておくことが何よりの予防になり、特に「グンバイムシ」と「タマバエ(虫こぶ)」に注意が必要です。

その理由は、シキミにつきやすい虫が、葉が密に茂って風の通らない環境を好むことに加え、シキミ特有の害虫がいるからです。剪定で風を通し、葉の様子をこまめに見ることが、シキミを健康に保つカギになります。

■特に注意|グンバイムシ

シキミで特に多いのが、グンバイムシという小さな虫です。これは、相撲の行司(ぎょうじ)が持つ軍配(ぐんばい)のような形をした、数ミリの小さな虫で、葉の裏について汁を吸います。被害を受けると、葉の表が白っぽく、かすれたように色が抜けて(かすり状に)、見た目が悪くなります。葉の裏を見ると、小さな黒いフンの点々や、虫本体がいます。グンバイムシは乾燥して風通しの悪い環境で増えやすいので、剪定で風を通すことが予防になります。見つけたら、葉裏に薬をかけて駆除します。葉の裏につくので、薬は葉裏を狙ってかけるのがコツです。

■シキミ特有|タマバエによる虫こぶ

シキミには、タマバエという小さな虫が原因の「虫こぶ(虫えい)」ができることがあります。これは、タマバエが葉や芽に卵を産みつけることで、その部分がコブのようにふくれる現象です。見た目は気になりますが、木がすぐ枯れるような大きな害ではありません。気になる場合は、虫こぶのついた葉や部分を見つけしだい切り取って処分します。ひどい場合は、専用の農薬で防除(ぼうじょ=防ぎ除くこと)します。早めに虫こぶを取り除くことで、翌年の発生を減らせます。

■そのほかの害虫・病気

シキミには、カイガラムシがつくこともあります。白っぽいロウのようなものをかぶった虫で、こすり落とすか薬で駆除します。フンから「すす病」というカビが出て葉が黒く汚れることもあります。これらも、風通しをよくする剪定が予防になります。

■剪定をサボると出る不調のサイン

剪定をせずに放っておくと、風通しの悪さから不調が出やすくなります。早期発見のサインは、「葉の表が白っぽくかすれる(グンバイムシ)」「葉や芽がコブのようにふくれる(タマバエの虫こぶ)」「枝葉に白いロウ状のものがつく(カイガラムシ)」「葉が黒くすすける(すす病)」といった変化です。気づいたら、込み合った枝を間引いて風を通し、虫や虫こぶを取り除き、ひどい場合は薬を使いましょう。早めの対応が肝心です。

シキミの剪定におすすめの道具

シキミの剪定では、「剪定バサミ」が一本あれば、ほとんどの作業に対応できます。込み合った枝の間引きが中心になるからです。

道具にこだわる理由は、切れ味の悪い道具で切ると、切り口がつぶれてギザギザになり、そこから木が傷んだり病気が入ったりしやすくなるからです。よく切れる道具でスパッと切った切り口は治りが早く、木にやさしいのです。料理で、よく切れる包丁を使うと食材が傷まないのと同じ理屈です。

■主役は剪定バサミ

シキミの剪定は、込み合った枝を付け根から間引いたり、仏事用の枝を採ったりする作業が中心なので、剪定バサミが主役です。切れ味のよいものだと、枝の切り口がきれいで、つやのよい枝を傷めずに採れます。私が長年使っていて自信を持っておすすめできるのは「おの義」の剪定バサミです。切れ味がよく丈夫で、長く使えますので、一本良いものを持っておくと、シキミだけでなくお庭のさまざまな手入れに役立ちます。

■生垣状に刈るなら刈り込みバサミ

シキミを生垣のように仕立てて、表面を刈りそろえたい場合は、刈り込みバサミを使います。広い面を一気に切れて便利です。この場合も「おの義」の刈り込みバサミなら、切れ味がよく作業がはかどります。ただ、シキミは自然な姿を活かす間引き剪定が基本なので、刈り込みバサミの出番は、生垣にする場合に限られます。シキミは太い幹を切ることは少ないので、ノコギリの出番もほとんどありません。

■作業後の道具と手の手入れを忘れずに

道具は使ったあとの手入れが、長持ちさせる秘訣です。剪定バサミは、使い終わったら樹液や汚れを布でふき取り、薄く油を塗っておきます。樹液をつけたまま放っておくとサビや切れ味の低下の原因になります。シキミは毒のある木なので、樹液のついた刃を扱ったあとや作業後は、手をよく洗いましょう。また、病気の木を切ったハサミを別の木に使うときは、消毒用アルコールで刃をふいてからにすると安心です。

切った枝の処分とご近所マナー

剪定で出た枝葉は、短く切って束ねれば、多くの自治体で燃えるゴミとして安く処分できます。ただし、シキミは毒があるので、子どもやペットが触れないよう、特に注意して処分します。

なぜこの話をするかというと、シキミは毒のある木なので、切った枝葉の扱いに、ほかの木以上の配慮が必要だからです。安全に処分するコツを知っておきましょう。

■ラクに安く、安全に処分するコツ

枝葉を自治体のゴミに出すときは、まず指定の長さ(多くは50センチ程度)に切りそろえ、ビニールひもで十文字にギュッと縛ります。葉や細かいものは、自治体指定のゴミ袋に詰めます。ここで大切なのは、切った枝葉、特に実を、庭や道に放置しないことです。シキミの実は毒が強いので、子どもやペットが拾って口にしないよう、必ず集めて袋に入れ、口を閉じて処分してください。作業中・処分中は手袋をし、終わったら手を洗いましょう。お住まいの地域でゴミの出し方のルールが違いますので、一度確認しておくと安心です。

■お隣にはみ出した枝の扱い

シキミは、お隣との境界に植えると枝葉がはみ出すことがあります。毒のある木なので、はみ出した枝の実などをお隣のお子さんやペットが口にする心配もあり、特に気をつけてこまめに切っておく必要があります。

もしすでにはみ出している場合は、勝手に切る前に、まずお隣に一声かけるのがマナーです。「枝がはみ出してご迷惑をおかけしています、切らせていただきます」とひと言伝えるだけで、相手の印象はまったく違います。毒のある木であることを考えると、はみ出しには特に早めの対応を心がけ、安全に配慮しましょう。

自分でやる限界と、業者に頼む目安

シキミは手の届く範囲なら自分で手入れできますが、高さ3メートルを超える作業や、大きな木の伐採はプロに頼むのが安全です。

なぜこうお伝えするかというと、剪定作業で最も多い事故が「高所からの転落」だからです。安全に届かない高さでの作業は、三脚(さんきゃく)を使っても危険が伴います。一本の枝のために大けがをしては、何のための手入れかわかりません。命にかかわることですので、ここは正直にお伝えします。なお、高い場所での作業には、ぐらつきにくい三脚を使うのが基本で、四本脚の脚立は園地では不安定になりやすいので避けましょう。

■こうなったらプロを呼びましょう

具体的に、次のような場合は業者に頼むことをおすすめします。木の高さが3メートルを超えていて、三脚でも安全に届かないとき。大きく育ったシキミを、低く仕立て直したり、伐採(切り倒して処分)したりしたいとき。シキミは毒があるので、大量の枝葉や幹の処分も、安全面を考えるとプロに任せると安心です。また、グンバイムシやタマバエが大発生して、ご自分での防除が難しいときも、プロや専門業者に相談するとよいでしょう。

■引き際を知るのもプロの知恵

「全部自分でやらなければ」と気負う必要はありません。地面から安全に届く範囲は自分で手入れし、高いところや危ない作業、毒のある大量の処分はプロに任せる。この線引きができる方こそ、安全に木と付き合える方です。一度プロに手に負える大きさに整えてもらえば、そのあとの維持はご自分でもできるようになります。

【忙しい人向け】15分で終わるズボラ剪定

「完璧じゃなくていいから、とにかく手早く整えたい」という方は、手袋をして、表面から飛び出した枝と枯れ枝を切るだけで、15分ほどで十分すっきりします。

その理由は、シキミは葉が密に茂っているため、全体を刈り直さなくても、飛び出した枝を整えるだけで「手入れされた木」に見えるからです。完璧を求めず、ポイントだけ押さえるのがズボラ剪定のコツです。

具体的な手順はこうです。まず手袋をします(毒のある木なので、これは省かないでください)。次に2~3歩離れて、表面から「ピョン」と飛び出している枝を見つけ、剪定バサミで切りそろえます。最後に、明らかに枯れている枝や、葉が白っぽくかすれた(グンバイムシの)枝があれば取り除きます。これだけで、こんもりと整った印象に戻ります。

大切なのは、手袋を忘れないことと、切った枝葉を放置せずに片づけることです。この2つさえ守れば、忙しい方でも安全に、15分で手入れができます。シキミはこの軽い手入れを年に1~2回するだけでも、つやのある美しい姿を保てますので、ぜひ気軽に試してみてください。

シキミの育て方と挿し木での増やし方

シキミは、半日陰の湿り気のある場所を好み、丈夫に育ち、「挿し木」で増やすこともできます。

なぜこの話をするかというと、育て方の基本と増やし方を知っておくと、シキミをもっと上手に育てられるからです。お墓・お仏壇用に何本か欲しい場合、自分で増やせると便利です。

■育て方の基本

シキミは、もともと山の林の中に育つ木なので、強い直射日光がガンガン当たる場所より、半日陰のしっとりした場所を好みます。乾燥しすぎる場所は苦手なので、土が極端に乾かないようにしてあげましょう。土は、水もちと水はけのバランスのよい土が向いています。丈夫な木なので、環境さえ合えば、それほど手をかけなくても育ちます。肥料は控えめで十分です。

■挿し木での増やし方

シキミは挿し木で増やせます。適した時期は、新芽が固まった初夏(6月~7月ごろ)です。剪定で切った元気な枝を、10~15センチほどの長さに切り分けます。下のほうの葉を取り除き、切り口を少し水につけてから、湿らせた清潔な土にさします。明るい日陰に置き、土が乾かないように管理すると、しばらくして根が出てきます。シキミは発根にやや時間がかかることがありますが、気長に待てば根づきます。なお、挿し木で扱う枝も毒があるので、作業後は手を洗いましょう。

よくある質問Q&A

最後に、シキミについてよくいただく質問にお答えします。

Q. シキミとサカキの違いは何ですか?
A. 使う場面と葉が違います。シキミは仏事(お墓・お仏壇)に、サカキは神事(神棚)に使います。シキミの葉は厚く、折るとお線香のような香りがし、毒があります。サカキの葉はなめらかで、強い毒はありません。「仏様にはシキミ、神様にはサカキ」と覚えましょう。

Q. シキミには本当に毒があるのですか?
A. あります。葉・枝・花・実・種など木全体に毒があり、特に実は強い毒(アニサチン)を持ち、法律で劇物に指定されています。誤って口にすると、おう吐やけいれんなどの中毒症状を起こすので、絶対に食べてはいけません。

Q. シキミの実が八角に似ていますが、料理に使えますか?
A. 絶対に使えません。シキミの実は八角にそっくりですが、強い毒があります。形が似ているための誤食事故が実際に起きています。香辛料としては決して使わないでください。

Q. 子どもやペットがいますが、庭に植えても大丈夫ですか?
A. おすすめはしません。シキミは毒があるため、お子さんやペットが実や葉を口にする心配があります。これが「庭に植えてはいけない」と言われる理由です。植える場合は、手の届かない場所にするなど、十分な注意が必要です。

Q. 花が咲かないのは剪定のせいですか?
A. 花の時期(春)の前に強く切ると、花芽を切ってしまうことがあります。ただ、シキミは仏事用の葉や、つやのある緑を楽しむ木なので、花にこだわらず、葉の美しさを保つ手入れを優先して大丈夫です。

Q. 葉の表が白っぽくかすれてきました。原因は何ですか?
A. グンバイムシという小さな虫が、葉の裏について汁を吸っている可能性が高いです。葉裏を確認し、薬を葉の裏に向けてかけて駆除してください。風通しをよくする剪定も予防になります。

Q. 葉や芽にコブのようなふくらみができています。
A. タマバエという虫が原因の「虫こぶ」の可能性があります。木がすぐ枯れる害ではありませんが、気になる場合は、コブのついた部分を切り取って処分してください。早めに取ると翌年の発生を減らせます。

Q. 挿し木で増やせますか?
A. 増やせます。初夏に、元気な枝を10~15センチほどに切り、下の葉を取って湿った土にさし、明るい日陰で管理すると根が出ます。発根に時間がかかることがありますが、気長に待ちましょう。毒のある木なので、作業後は手を洗ってください。

シキミは、つやのある美しい葉とよい香りを持ち、仏事と深く結びついた、日本人にとって大切な木です。丈夫で手入れはやさしい一方、木全体に毒を持つという、知っておくべき特徴があります。「仏様にはシキミ」「実は八角に似ているが毒があり食べられない」「手入れのときは手袋を」という点さえ押さえれば、初心者の方でも安全に手入れを楽しめます。この記事を参考に、ぜひシキミと上手に付き合ってください。木と向き合う時間は、きっと心地よいものになるはずです。