「今年はカキの実がたくさん生った!」
「今年はあんまり生らなかった!」
・・・なんてことをよく聞かれます。
剪定ミスなのでは?
考えられないこともないわけではないですが、本当のところはどうなのでしょう?
カキだけが1年ごとに豊作と不作を繰り返す現象がある!本当か?ウソか?
カキは実がなる年と生らない年が交互に来るとされる代表的な木のひとつです。
では、カキだけが実がなる年と生らない年が交互に来るのでしょうか?
実はカキだけではなく、そのほかにもミカンやリンゴなども同じように、交互に実が生ったり生らなかったりする年が来ます。
ナラやカシなどのどんぐりの類では、数年おきにそのような状況が来る木もあります。
どんぐり類はクマが好んで食べますが、実が生らない年というのは食べるためのどんぐりが山になく、クマは里にまで下りてきて民家や人を襲うという被害が目立つようになります。
近年では、病院内や街の中にまで出没するようになってきており、よくニュースで取り上げられます。
カキなどの果樹が1年ごとに豊作と不作を繰り返す現象を「隔年結果」といわれます。
豊作の年は「なり年」不作の年を「不なり年(裏作)」と言われるようです。
「なり年」と「不なり年」が交互に訪れるのはなぜか?
「隔年結果」は、受粉から果実の成熟までの期間が長く、果実の生長中に翌年の花芽形成がおきる果樹によく見られる現象です。
一般的に果樹では、ある枝の果実が生長をはじめると、同じ枝につく翌年の花芽の形成が抑制される傾向があります。そのため、ある年にたくさんの果実がつくと、翌年の花芽の形成が抑えられてしまい、収穫が減るとされています。
そのような原因がおこる理由としてはいくつかあるようです。
ひとつは、養分がどの時期にどこに使われるのかという問題です。
光合成で作られた養分は、果実の生長や翌年の花芽形成に使われます。果実がたくさんつきすぎると、養分は果実の生長に多く使われてしまい、翌年の花芽形成のための養分が足りなくなって、花芽形成が抑えられるという仕組みがあります。
もうひとつは、植物ホルモンが関わっていることです。
果実の成長に伴い、種子には花芽の形成に影響する、ジベレリンやアブシシン酸という植物ホルモンが蓄積してきます。種子に多量に蓄積した植物ホルモンは、やがて枝に移っていきます。たくさんの果実がつくと枝の植物ホルモンの濃度バランスが変わるため花芽形成に影響するのです。
このようなことがおこるので、毎年コンスタントに果実がつくように栽培農家が行なっていることは、摘果と言って果実が幼い時点で間引いたり、枝を切り取る剪定などの手入れを行なっているのです。
「隔年結果」が広範囲でおこることもあるの?
「隔年結果」は個人宅などの小さな範囲で起こる場合と、その地域全体で広範囲で起こる場合があります。
小さな範囲だと、先ほどの説明のような、養分の問題や植物ホルモンの関係で起こることも考えられます。
でも実際は、広範囲で起こることも多くあります。
たとえば、もしも個々の果樹の「隔年結果」がランダムに起きるのであれば平均化されるので、果樹園全体、地域全体、地方全体としては安定した収穫が得られるはずです。
それであれば、摘果や剪定の手間が少なくてみますが、実際の「隔年結果」は果樹園全体で、さらにはかなり広い地域、地方全体でもおこります。
なぜ個々の果樹の「生り年」は同じ時期に広い範囲で同時発生するのでしょう。
この同じ時期に同時発生する現象には、環境の影響が考えられます。
ある年の花芽形成時期や開花時期に、異常な高温や低温、乾燥、日照不足などがおきたためとすれば説明できます。
たとえば花芽が寒さで生長が止まってしまったり、花がせっかく咲いても同じ時期に天候不順で受粉がうまくいかなければ、結実量が減ると予想つきます。
果実が実のらないと、それだけ養分を使う量が減るので、翌年の花の数や果実の量は増えることが考えられ、逆に、結実量が増えた次の年は果樹も疲れているので、花の数や果実の量が減ってしまう事が考えられます。
そしてもうひとつ、植物が花を咲かせるのは花粉の交換が目的なので、植物が積極的に同じ時期に同時発生させているとも考えられます。
たくさんの木がたくさんの花を咲かせるほど花粉の交換が上手くいく確率が高くなるので、花が多い年と少ない年があるのなら、自分も周りに合わせた方がよいという仕組みが備わっているのでしょうね。
今までの話に付け加えると、
全くの個人宅で剪定する場合、
当然ですが、枝をだいぶ切りすぎた場合は、次の年、またはその次の年もカキの実はならないと思った方がよいでしょう。