カリン(花梨)の実を成らせる剪定時期と剪定方法

カリンはバラ科の落葉高木で、樹高が6mにもなる木です。

薬用植物として中国から渡ってきましたが、そのカリンの効能は、喉の炎症を和らげたり、咳を止めたり、利尿作用、疲労回復、生活習慣病の予防、美肌効果まどがあります。

用途としては、カリンの果実は固く渋みも強いため生食はできず、砂糖漬けやカリン酒、ジャムなどに使われます。

ここでは、カリン(花梨)の実を成らせる剪定方法と剪定時期について解説します。

カリンの特徴

カリンは 4月下旬頃に淡紅色の美しい花が咲きます。

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芳香性がある実で、カリン酒など色々な使い方がある黄色い大きな実も楽しめます。

幹にも特徴があり、夏にうろこ状にはがれ、幹がまだら模様のようになります。

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カリンは花・実・樹形の3つを楽しめる木になりますが、その趣のある姿を楽しむ観賞用の庭木として扱われています。

カリンは雄花と雌花の区別はないのですが、受精して果実となる花のめしべの、下の端のふくらんでいる部分(子房)の大きい方が、実も大きくなるようです。開花時に子房が大きいほうへ、別のカリンの花粉をつけてやると結実がよくなります。

カリンは、食物繊維、糖質、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、βカロテン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン、リンゴ酸、クエン酸、アミグダリン、タンニンなど、こんなにたくさんの成分が含まれている優れた薬用植物です。

果実の成分が咳や痰、のどの炎症に良いとされていて、漢方では果実を乾燥させたものを、鎮痛や咳止めなどに用いています。

また抗酸化作用のあるビタミンC、サポニン、タンニンは生活習慣病を予防し、クエン酸は疲労回復に役立ちます。

カリンの花が咲き実が成るまでの過程

カリン(花梨)は、美しい花と香り高い果実が楽しめる樹木です。

ここでは、花が咲く時期、花芽の形成時期、実が成る時期の過程について説明します。

花が咲く時期

カリンの花が咲く時期は、地域や気候によって多少異なりますが、4月中旬~5月中旬頃です。
カリンの花は、春の新芽が展開する頃に咲き、淡いピンク色または薄紅色の花を枝先に咲かせ、丸みのある愛らしい形をしています。
1本の枝に複数の花が咲くことがありますが、すべてが結実するわけではありません。

花芽の形成時期

花芽形成の時期ですが、前年に新しく伸びて成長が充実した枝に、7月~9月頃に花芽が形成されます。
そのため、この時期にカリンが十分な日光を浴びて健康に成長することが、翌年の花付きや実付きに影響します。
花芽形成を促す剪定のタイミングは、夏に軽い整枝を行い、枝が混み合わないようにすることで、花芽形成を助けます。
栄養管理は、夏から秋にかけて適切な肥料を与えると、花芽の充実度が増します。

実が成る時期

6月~9月頃が果実の成長期で、夏頃から果実が実り始め、実が大きく成り収穫できる時期は、10月~11月頃になります。
花が咲いて受粉すると小さな果実が形成され、これが夏の間に成長を続け、秋に黄色く熟して芳香を放つ実となります。

実が成るための条件

■カリンは自家受粉しにくいため、近くに別のカリンの木があると実付きが良くなります。
 また、昆虫の活動によっても受粉します。
■前年に伸びた枝が充実していることが、花芽形成と果実の成長に重要なので剪定作業は重要になります。

カリンの剪定時期

カリンの花芽は「前年生枝タイプ」なので、前年に伸びた充実した新梢に花芽がつきます。

7月頃から花芽が育ち始め、翌年の春に開花しますが、花となる芽は充実したごく短い枝にだけつくため、短い枝をすべて切り捨ててしまうと花は咲きません。自然樹形が乱れてしまうので、短い枝を残すことを心がけます。

カリンの剪定は、芽の活動が早く始まることから、11月~2月頃の葉っぱが落ちた冬期の時期に行なうとよいです。
この時期の剪定は、徒長枝を間引いたり、ふところ枝、胴ぶき、ヤゴ、枯れ枝、からみ枝など樹形を乱す枝を、枝のつけ根から間引きます。

剪定時期のまとめ

カリンの剪定は、次の2つの時期に行なうのが理想的です。

冬期剪定時期は、12月~2月頃がベストです。
冬期剪定の目的は、枯れ枝や不要な枝等を取り除き、樹形を整えることです。
冬の間、カリンは休眠期に入るため、樹木に与えるストレスが少なく、強い剪定を行うのに適しています。

夏期剪定の時期は、6月~7月頃です。
夏期剪定の目的は、混み合った枝を間引き、風通しと日当たりを良くすることです。
夏場は成長が活発な時期なので、大規模な剪定は避け、軽い整枝に留めます。

カリンの剪定方法

カリンは立ち枝が出やすいことが特徴なので、横に広がって伸びるような枝になるように仕上げます。
ほどよく四方に枝が配分されるように、自然樹形を崩さず、大きく育ちすぎないように剪定を行うのがよいです。

カリンの剪定方法ですが、まず枯れ枝や病害虫の被害に遭った枝を切り取ります。
次に徒長枝やふところ枝、胴ぶき、からみ枝など樹形を乱す枝を枝のつけ根から全て切ります。
樹勢が強い長い枝は元から切除し、立ち枝は切除して横枝から出た横に伸びる枝を多く残すようにして間引きます。
これらに注意して剪定を行うと、四方に万遍なく枝が配られた横に伸びる自然に近い枝ぶりになります。

また立ち枝を残す場合は、枝の先端を3分の1くらいで切り詰めて、横向きになるようにひもなどで下枝や地面方向に引っ張っておきます。

とにかく立ち枝が出やすいので、枝先の切り詰め作業は横に伸びる枝づくりを気にして行うようにするといでしょう。
この場合、必ず外芽を残し、外芽のすぐ上で芽の伸びる方向を見ながら切りますが、内側の芽で切りつめると、強い立ち枝になり樹形を乱します。

十分に成長した木になると、剪定をしなくても花や実を楽しむことができます。

剪定方法のまとめ

カリンの剪定では、次のような不要な枝を見極めて、剪定する枝を選んで作業を行ないます。
具体的には、
■枯れ枝や病害虫の被害に遭った枝は、早めに取り除いて、樹木全体の健康を保ちます。
■交差している枝や逆さ枝、枝が重なっていたり、内側に向かって伸びている枝は取り除きます。
■勢いよく伸びた徒長枝は、枝元から切り詰めます。
■カリンは一本の主幹から広がる形が理想的なので、主幹がしっかりしているか確認し、不要な分枝や競合する枝を間引きます。
■枝分かれの付け根や芽の少し上を切り、芽を残すことで、そこから新しい枝が出やすくなります。
■枝が密集している部分を間引き、日当たりや風通しを改善します。
■枝先が外向きになるように剪定すると、樹形が広がり、日が当たりやすくなり果実が成りやすいです。

剪定時の注意点

■一度に切りすぎると、ストレスを与えて成長が弱ることがあります。
■カリンの果実は、日当たりの良い枝に多く実ります。剪定によって日当たりを良くすると、果実の質と量が向上します。
■果実は結構な重量になることがあります。重すぎる枝は折れる恐れがあるので、剪定によって調整して枝にかかる負担を減らしてあげます。