
しだれ(枝垂れ)梅の花が咲かないと悩んでいる方が多いようです。
悩んでいる方というのは、毎年剪定を怠っていない場合が多く、
逆に、花が咲くお宅は剪定も何もしていない場合が多いようです。
なぜこのように、真逆のようなことがおこるのでしょう?
ここではその理由と、来年もしだれ梅の花を咲かせるための剪定時期と剪定方法について解説します。
枝垂れ梅の生き方
枝垂れる木は、普通の木とは違って一度上に伸びたとしても木の性質上下に向かって落ちてくる特徴的な木です。
しだれ梅もこの特徴的な木の種類と同じで、上から下に向かって枝が垂れてきます。
しかもたくさんの花が咲くので、とても人気がある木です。
しかし、しだれ梅は剪定をすると花が咲かずに整理をすると花が咲くようになる木です。
どうしてそのようなことがおこるのでしょう?
花が咲く木はモテはやされる
ウメでもサクラでも、しだれ梅やその他のきれいな花が咲く木はけっこう人気がある木で、たくさんのお宅のお庭に植えられています。
我が家にも、サクラ(ソメイヨシノ)とウメが植えてあります。
冬の間、何もなかった枝に花が咲くと、やっぱりうれしくなりワクワクするものです。
花が咲くのと同時に、花見やお祭りなどの行事が各地で催されて賑わうほど、花が咲くということは、人の心を和やかにさせてくれる魅力があります。
たとえばですが、サクラやウメは南から北に向かって順に移動して行くので、時間とお金と行動力さえあれば、サクラを追いかけていくと、数か月間サクラとともに生活できることになります。
サクラやウメ好きの方は、数ヶ月の間ずっとワクワクできるので、やってみる価値はあると思います。
それは、極端な例ですが、それほど花は人の心を高揚させ、行動的にさせてくれるという事です。
ただ、花が終わってしまうと、何もなかったようにほかのことに興味が移ってしまうのが人間の良くない所です。
花が終わると厄介者のしだれ梅
しだれ梅は花が咲いているうちはきれいで見事なのですが、花が終わってしまうと、枝づたいに葉っぱで覆い尽くされてしまうので上から下までうっとうしく感じられます。
庭に植えてあるしだれ梅は、病害虫の発生が多いので、剪定や防除などの管理をしないといけなく、面倒くさい方にとっては厄介者の木に変わってしまいます。
人によっては、その状況をうっとうしく感じ憂鬱になり病的になることがあるかもしれません。
そして、うっとうしく感じはじめると、今度はスッキリとしたくなり、バッサバッサと枝葉を切り取っていきます。
そうすると、花が咲かないという状況がおこり、せっかく花が咲いた年があっても、それは一時的なようです。
庭のしだれ梅は花が咲きにくい
お庭に植えてあるしだれ梅の管理は難しく感じ、意外と花が咲きにくいと思われているようです。
毎年しっかり剪定してスッキリしているのに、なぜか花が咲かなかったり、花数が少ないと悩まれている方も多いです。
たとえば、あなたは自然の山などで育っていて、大きくなって手が付けられないしだれ梅は、毎年花が咲くことに気づいていましたか?
自然と生えているものなので誰かが管理しているわけではないですが、毎年自然にまかせて花は咲いてくれます。
意外と思うかもしれませんが、本当は、剪定を行なわないほうが、しだれ梅は花が咲くのです。
庭に植えてある場合は、樹形の大きさを維持し、庭を素敵な姿に見せるために剪定を行ないます。また、病害虫の被害に遭わないようにするために、わざわざ剪定などの管理を行なっているのです。
だから、花を咲かせるには、庭が大きければ剪定をする必要はないのですが、ほとんどのお宅は庭の広さが限られているので、管理をしなければいけないのです。
剪定しないほうが花が咲く
ではなぜ、しだれ梅は「剪定を行なわないほうが花が咲く」のかというと、剪定を行なうと、花芽も切り取ることになるので、花数は減り、樹勢も弱くなります。
たとえば、剪定は人間でいうと手術のようなものです。髪を切るのとはわけが違います。
剪定を行なうと切り口は病気に侵されて枯れることもあります。
極端なことを言えば、老木で元気がなく樹勢が悪いのにもかかわらず、太い枝を切ってしまうと、枯れて死んでしまう可能性もあります。
しだれ梅は本当は自然に生きていたい木なのですが、小さな庭に植えられたために、剪定という手術を行なわなければいけなくなります。
剪定と同時に樹勢を弱められて、本来花芽になるはずの花芽が葉芽に変わり、葉っぱに勢力を奪われて花数を減らします。
つまり、剪定も何もしないで、花芽も減らさずに樹勢も弱らせない、自然でいることのほうが花が咲くのです。
しだれ梅の花芽形成の時期
しだれ梅の来年の花の数が決まる一番重要な時期というのがあります。
しだれ梅の花芽が形成される時期は、7月~8月ころの一番暑いころです。
しだれ梅の花を咲かせるためには、この花芽が形成される時期を知っておいたほうが良いです。
特にこの時期の剪定は気をつけなければいけません。この時期は、来年に咲く花の数が決まる大事な時なので、花を咲かせたいのであれば、くれぐれも剪定を行なわないでください。
もしもこの時期に剪定を行なってしまうと、花の数は減ってしまいます。
剪定のやり方次第では、花が全く咲かなくなることもあります。
環境や気象条件によっては、花芽形成に悪い影響がでることもあり、必ず花芽がつくという事ではなく、多少の数の増減もあります。
しだれ梅の花が咲かない原因
剪定を行なうと、しだれ梅の花が咲かないというか、花芽の数が減る原因にもなります。
ただし、剪定を行なえば、花が咲かないという事に直接つながるわけではないことを強く言っておきます。
具体的な、しだれ梅の花が咲かない原因ですが、時期を間違って剪定を行なうと花芽が形成されなくなり、花が咲きません。
しだれ梅の花芽が形成される時期は、7月~8月ころの一番暑い頃です。
この頃は勢いよく枝が伸び葉っぱも生い茂るので、誰もがうっとうしいと感じる時期です。
この花芽が形成されている真っ最中に、枝葉をスッキリさせてしまうことは、来年の花芽を根こそぎもぎ取ってしまうことになります。
それだったら「花が終わった後の花芽が形成される前に剪定してしまえばよいのでは?」と思われるかもしれません。
しかしそれもおすすめしません。
なぜなら、花芽が形成される、たとえば6月ころにスッキリと剪定すると、花芽になろうとしていた芽が、葉っぱになる葉芽に変わってしまうからです。
そのため、花芽は形成されずに、葉っぱだけが増えることになります。
意外と剪定時期があることを知らずに、葉っぱがはえてうっとうしくなった時に、ギャンブル的に時期も何も考えず剪定をしている方が多いです。
その場合、花芽が形成されるかされないかの境界線の時期に剪定している事が多く、今年は花が咲いた、今年は花が咲かないということがおこるのです。
しだれ梅のベストな剪定時期
何度も言いますが、しだれ梅の花芽が形成される時期は、7月~8月ころの一番暑い頃です。
この時期に剪定は行なわない方がよいとお伝えしました。
では、剪定をするならいつが良いのでしょう。
9月~10月頃になれば花芽の形成も終え、花芽と葉芽がわかる可能性もあります。
夏に剪定を行なうと、切った以上に葉っぱが生えてくることが多いですが、この時期の剪定はほとんど葉っぱが伸びることがありません。
なので、花芽の形成も終えた9月~10月頃からが、剪定を行なうのがよいです。
とはいっても、バッサバッサと刈るとそれこそ花芽ごと切り取ってしまいますので、慎重に枝葉を選んで切る必要があります。。
この時期よりももう少し待つと、葉っぱが落ちる時期なので、樹形の内部がはっきりとわかります。
それまで待てるのであれば、その時期に剪定を行なった方が、理想的かつ効率的な作業ができます。
しだれ梅の剪定の時期は、私の経験上、葉っぱが落ちた落葉後の冬期剪定がよく、普通の梅と同様の10月頃~芽吹く直前(花芽がわかる頃)までの間の休眠期が良い時期です。
冬期剪定はしだれ梅が葉を落として休眠状態になるので、枝の混み具合を確認しながら剪定できる時期です。
葉が付いている時に剪定を行なうと、樹勢を落とし枯れる恐れもあるので、おすすめはやはり冬期剪定です。
一般の人達はどうしても、葉っぱが生い茂り、うっとうしくなった夏場に剪定をするもんだと思っています。
でもそれって、来年の花芽の数も減らしますし、切った後にそこからさらに強い枝葉が伸びようとします。
結果的に、切ったその部分から葉芽を出そうと集中して栄養がいってしまい、花芽の数も減らす結果になってしまうので良いことはないです。
花後に切ってはいけない理由
しだれ梅の古い枝には花はつきにくいんです。
どういうことかというと、今年花が咲いた枝に来年もまた花が咲くのかというと咲かないんです。
どういうサイクルで花が咲くのかといいますと、今年花がついた枝に花が終わる頃に新芽が出始め、その新芽が花後に一斉に伸びます。
この伸びた新枝にその年の夏に花芽が付いて、それが翌年の2月、3月頃から蕾が膨らんで花が咲くんです。
花後に切ってはいけない理由は、花芽が確定する時期に関係しているんです。
しだれ梅は、花芽は翌年春に蕾となって花が咲き、葉芽はその後新芽となります。
この花芽が確定するのは7月から8月ころなんです。
だからこのことからも、しだれ梅の剪定は花芽が確定した後にしないと、来年の花芽の数を減らす可能性が高いです。
花芽が確定する前に切ってしまうと、折角花芽になりかかっていたのも全部葉芽に変わってしまうんです。
庭に植えてあるしだれ梅は木の勢いが強いので、切られたことで
「これは大変だ!」
「もっと新しい枝葉を伸ばさなければいけない」
と思い込み、花芽が葉芽に変わってしまうわけなんです。
【結論】
剪定は花芽が確定した後、余裕を見て、10月ころからつぼみが膨らみ始めるまでの間に行うといいです。
もしも10月頃にしだれ梅の剪定をしようと思っていても、まだ葉が茂っていてなかなか樹形も見定めにくいと思います。
急いでしだれ梅の剪定をしなくても良いのであれば、葉が落ちてから剪定すると枝の混み具合が分かるので、葉が落ちた冬期に剪定するといいですよ
夏期剪定のポイント
以上の理由から、しだれ梅の木は冬期にするのがおすすめですが、最悪の場合、夏に剪定してもかまいません。
全体を見て形だけを整えるように、突発的に伸びたような枝を、幹や太い枝から間引くように剪定しています。
これだけでもかなり空間ができるし形も整うと思います。
ここでの剪定は、バッサバッサと切ることではなく、風通しを良くして日陰にならないようにするのが目的です。
しだれ梅の枝垂れる習性について
一般的な木は上に向かって枝が伸びるのですが、しだれ梅のような枝垂れる木は、枝が一度上に向かい、重力に任せるように下に向かって伸びていきます。
実際は枝の内部構造によって枝垂れます。
上に向かう枝を切らずに残しておいても、枝は自然と下に向かって伸びてきます。
このしだれる木の習性を利用するためにも、剪定時に上向きの枝を残す必要があります。
これが枝垂れ梅の習性と剪定の基本になりますが、図で表すと下図のように「黄色い線」で切れば良いです。
枝垂れる木は枝の切る位置により枝の向きが変わってきますので、樹形にも影響してきます。
下の左図を見てもらうと、基本に則って「赤い線」で切れば良いです。
しかし「青丸部分内」の「緑の線」で切ってしまうと、下右図のように木の内側に向かって枝が伸びるようになります。
今は1本の枝で解説しているので大したことがないように思えるかもしれません。
これをすべての枝で考えた場合枝が内側に向かっていき、樹形全体が細く混雑した感じになってしまいます。
そうすると樹形の内部に枝が密集するようになり、樹形内部には日が当たらなくなり、風通しも悪くなって枯れ枝も増えることになります。
病害虫が発生しやすくなると、樹勢に影響するので花つきも悪くなります。
しだれ梅の花を咲かせる剪定方法
「桜切るバカ、ウメ切らぬバカ」という言葉を聞いたことがあるかは多いことでしょう。
この言葉はしだれ梅にも当てはまり、剪定をしないと木が茂り過ぎて花が咲かなかったりします。
ただ、この言葉を信じすぎたあまり、時期を考えずに剪定を行なって、花が咲かないと悩んだ方も多いことでしょう。
また、剪定をしないで葉っぱが生い茂ると日当たりや風通しが悪くなり、病害虫が発生しやすくなります。
これはしだれ梅の樹勢にも関わることなので避けなければいけません。
そのためにも混み入った樹形内部を間引いてやる必要があります。
しだれ梅の剪定方法ですが、10月頃から混み入った枝葉を間引いたり、外芽の上で切ることを気にしながら不要な枝を切ったりするとよいです。
不要な枝を切るだけでも木はスッキリして樹形もよくなります。
樹形を崩す立ち枝や、重なっている枝などの不要な枝や徒長枝は付け根から切ってしまいます。
特に木の内側に向かって伸びる枝は、思い切って取り除いたほうがよいです。
しだれ梅の剪定は、懐を広く作るようにするとしだれ具合がきれいになります。
もしも枝垂れ梅を剪定しないで放任していると枝数がどんどん増え、樹冠の中には光が入らない状態になり、樹形内部の枝は枯れて花芽がつきにくくなり、病害虫も発生しやすくなります。
しだれ梅の剪定方法のポイント
枝垂れ梅は下に枝が伸びていくので、枝の上側の芽を残して伸ばし、上から落ちていくような枝ぶりを作ってやるとよいです。
1.下に向かって伸びている枝は全て切る
2.真っ直ぐに伸びる枝を切って(下図赤線)、上に向かって伸びて
下に落ちる枝を生かす
このように切ることで、樹形内部に空間ができてスッキリます。
上に向かっていく残った枝もだんだんと下に垂れていき見栄えもだいぶ変わるでしょう。
幹に近い部分に空間を持たせるような、枝を作る剪定をするとよいです。
剪定に必要な道具とケガの可能性について
しだれ梅を剪定する時の道具は、のこぎりと剪定ばさみが必要です。
枝は結構硬いので、細くても剪定バサミで切れない場合もあります。
切った枝を地面に置きっぱなしでいる時に注意が必要ですが、太めの枝から出ている先の尖った短い枝があるので、それを知らないで踏むと、底の薄い靴などは貫通してしまい足に付き刺さることがあります。私は何度も痛い思いをしました。
あと、よく脚立を使って作業する方がいますが、足が4本なのでバランスが悪くよく落ちるんです。
私は大丈夫と思わずに、4脚ではなく、絶対に3本足の「三脚」を使ってください。
人生を早く終わらせたくなければ、三脚がない場合は作業をしないか、業者に頼むことです。
しだれ梅を剪定しないとどうなる?
しだれ梅を剪定をしないで放任していると枝数がどんどん増え、その枝からその後もどんどん伸びて増えるので、樹冠の中には光が入りませんので花がつきにくくなります。
アブラムシなどの害虫も多く発生します。
そこで冬場には必ず剪定をすると樹冠の中に光がよく入るので花がたくさんつくようになります。