
びわ(枇杷)はバラ科の常緑高木で、放任すると樹高が 8mにもなる木です。葉が大きく萌芽力も強いので、狭い庭に植えているとうっとうしくなり、すぐに枝葉を切りたくなるような木です。
でも、びわの実って甘くておいしいんですよね。剪定を頼まれたお宅で、初めて食べたびわは、今まで味わったことがない美味だったので、今でも忘れられません。
けっこうたくさんのお宅で良く植えられているのですが、よく見ると実がついてないことが多いです。実を成らせたくて植えたのに、大きな葉っぱだけがたくさんついてしまうのには、ストレスがたまってしまいますよね。
では、どのようにしたら実がたくさん成るようにできるのでしょう。
ここでは実がならないといつも嘆いている方に、意外とわかりにくいびわの剪定方法と剪定時期について解説します。
びわの特徴
びわは果実を実らせて収穫することが目的の庭木です。
びわは放任すると8mくらいにまで育ちますので、一般家庭で庭に植える場合は、3mくらいより小さく制限して育てた方が、実を取るときに苦労しないです。
うまくたくさんの実を実らせることができれば、実をつけた姿を見る楽しさ、実を取る時の楽しさ、実を食べる時の楽しさを味わうことができす。
しかし、実を取って食べる楽しさがあるのは良いのですが、どんどん葉っぱが大きくなるのには困ると思うので、狭い庭には植えない方がよいと思っています。
でも、将来的にどのように大きくなるのかわからないけど、びわの実を成らせたくて植えてしまうんですよね。びわにはそのような魅力があります。
でもやっぱり、葉っぱだけが大きくなるのは許せないと思います。そこで、びわの実を成らせるためにはどのようにしたらよいのかこれから解説していきます。
びわ(枇杷)の開花時期と花芽形成時期について
びわは冬に花を咲かせる珍しい果樹です。
美味しい果実を実らせるためには、花が咲く時期や花芽が形成されるタイミングを理解し、剪定等で適切な管理をすることが重要です。
花が咲く時期
びわの花が咲く時期は、10月~1月頃です。
品種や環境によって多少の違いはありますが、早生品種は10月頃から咲き、晩生品種は 12月~1月頃まで花が咲いていることがあります。一般的に、11月が最盛期となることが多く、花は白やクリーム色で、ほのかに甘い香りを放ちます。
その年の10月から1月頃にかけて小さな花を咲かせます。
びわの受粉について
びわは、1本の木でも実がなる「自家受粉」ですが、昆虫が少ない冬期の開花となるため、風媒や人工授粉を行うことで結実率を高められます。
花芽が形成される時期
びわの花芽が形成される時期は、6月~8月頃です。
当年の春から伸びた新梢の枝の先端に花芽が作られます。
6月頃から花芽の分化が始まり、8月頃から花芽が確認できるようになります。
その後、秋になり気温が下がるにつれて花芽が成熟し、早くて10月頃から開花が始まります。
びわの実ができるまでのサイクル
よくお客様に「びわの実がならない!」と言われることがあり、よくよく聞くと、時期に関係なく、枝葉が伸びた時にスッキリと切ることがほとんどのようです。
大きくなりすぎた場合は強剪定で小さくできますが、柿みたいに切った枝には2年くらい実がつかないことからこのようなことがおこります。
びわが実をつけて収穫するための剪定は、びわが実をつけるまでのサイクルに気をつけるとよいです。
下の図解を参考にしてみて下さい。
まず花芽は春から伸びた枝の先端に、6月ころから夏の間につき始めます。
花が終わった後、翌年の4月頃になると果実が確認でき、5月頃から8月頃に実が熟してきます。
びわの剪定時期
ここでちょっと考えてほしいのですが、花芽が形成されている間に、剪定でその形成途中の花芽の枝葉を切ったら、花も実もつかなくなります。なので、花芽が形成されている間の、6月頃から夏の間の剪定は行なうことができません。
これは、なんとなくわかるかと思います。でも、ほとんどの方がこの枝葉が伸びるこの時期に剪定を行なってしまい、実が成らないと悩んでいるのです。
もう一度サイクルを確認してみてください。
それなら、花芽が形成され終わった後なら良いのではと思うかもしれません。めでたく花芽が形成されたとしても、もしも剪定で、その花芽のついた枝葉を切ったら花も実もなくなります。
どこに花芽ができたのかわかれば良いのでしょうが、花が咲くまでわからないことが多いです。なので、花芽が形成され終わった後から花が咲き始める間の、だいたい、8月~11月頃の剪定も危険です。
それでは、花が咲き終わった後ならどうでしょう。花が終わればそれが実になりますので、その花の部分を切らなければ実が成りそうですね。なので、花が終わった後の時期であれば、一番実が成ることに影響がなさそうです。
花が咲き終わるのがだいたい2月頃なので、その後の剪定をおすすめします。ただ、あまり長い期間で設定すると、今度は花芽の形成に影響が出てきます。なので剪定できる期間は、2月頃から6月頃の間で行ない、その間の3月以降~花芽の形成が始まる6月頃までは、間引くだけの剪定に留めておきたです。
間引くだけなら果実がついている時に切れば、今年の果実の数は減らすことなく剪定ができます。この場合、果実を傷めないようにハサミを深く入れて、枝の分岐点で1、2本の枝を残して切るとよいです。
びわの実は3月ころから成り始め、5~8月に収穫できますが、特に3月中旬以降の剪定は、次の年の実のことを考えると、できるだけ強い剪定は避けた方がよいということになります。
これらから、びわの剪定時期はいつが良いのかまとめますと、
びわの剪定時期は、花が咲き終わった後の2月頃から実が成る頃までがよいです。
実がなり始めてから6月頃までは、実に気をつけて間引くだけの剪定なら大丈夫です。
剪定時期のまとめ
■最適な剪定時期は、2月~6月頃なので、花が終わった後に剪定を行い、その後伸びる新梢を充実させます。
■剪定を避ける時期は、6月~8月頃で、この時期は花芽が形成されるため、この時期の剪定はしないほうが良いです。
■秋以降の剪定は花芽を切らないように注意して、花芽がある枝を残して不要な枝だけ整理するように切ります。
びわの剪定方法
剪定作業は上から下に向かって進めていくと作業効率が良いです。枯れ枝や、大きく伸びた幹や混みあった枝を間引き、切り戻しで小さくしていく剪定を行ないます。
びわは年に3回新しい芽を出すほど萌芽力が旺盛です。新芽を3回出しますが、毎回剪定を行なっていたのでは、実は確実になりませんので気をつけて下さい。
その3回の時期の内訳は、
■1回目に新芽を出すのは、3月上旬頃でこの時期が一番萌芽力が強く、この時期なら強い剪定にも耐えられ、春に向かい活発な活動を始めるので、枝枯れの心配は少ないです。
■2回目に新芽を出すのは、5月中旬頃です。
■3回目は、8月頃に新梢(新芽)を出します。
これを参考に、2月頃から6月頃までの適期(1回目と2回目のあたり)にだけ剪定を行なうようにしてください。
花が咲き終わった後の「2月中旬頃から実が成る頃まで」の剪定は、開花した枝を気にしながら、通常の剪定ができます。びわの通常の剪定というのは、不要な枝を切り詰めたり、枝元から間引くような強く切って樹形を小さくする剪定です。
図解で見ると、赤線で切っている箇所です。
実がなり始めてから6月頃までは、実に気をつけて間引くだけの剪定を行なえます。
3年くらいの若木の場合は放任のままでもよいのですが、4年以上経つと樹高が高くなり始め、枝幅が広がってくる傾向があり、間引きや切り詰め剪定が必要になってきます。
びわの木の仕立て方は幹を直上していく方法と、幹の途中で切って枝を横へ伸ばしていく方法があります。
庭に植える時に狭い場所では真っ直ぐ上に伸ばし、広い場所では横に広がる樹形に仕立てるとよいですが、剪定は希望の樹形に仕立ててから行うようにした方がよいです。
花をたくさん咲かせるコツ
びわの花をたくさん咲かせるコツは、
■4月~5月頃に剪定して、新梢を充実させます。
■7月~8月頃の花芽形成期には剪定しないようにします。
■適切な肥料を与えると花芽の発育を助けるので、3月頃に窒素系の肥料を施します。6月~7月頃は、花芽の形成を助けるためにリン酸・カリ肥料を与えます。
■開花時期に人工授粉を行うことで、結実率を高められます。