モチノキとクロガネモチの剪定時期と剪定方法

モチノキは花や実もつきますが、それよりも光沢のある葉が美しく、枝葉も密生しますので樹形と葉の緑を中心に観賞する木です。

モチノキ(黐の木)とクロガネモチ(黒鉄黐)は、どちらもモチノキ科モチノキ属の常緑高木で、見た目がよく似ていて、剪定時期と剪定方法も同じです。

ここでは「モチノキ」と「クロガネモチ」の剪定時期と剪定方法について解説します。

モチノキの特徴

モチノキはモチノキ科の常緑高木で、基本的に暖地性の樹木なので寒さを嫌いますが、萌芽力が強く日陰でも育つ木なので、家の目隠しとしても利用できます。

モチノキは、雌雄異株で雄(オス)と雌(メス)があり、基本的にオスの木には花は咲いても実はならないで、メスの木も近くにオスの木がないと結実しないようです。

放置したままでも樹形は乱れにくいですが、大きなものでは 10mにも育つので、庭に植える場合は、庭の広さに合わせて大きさを仕立てて育てます。また萌芽力は強く大気汚染にも丈夫なために、列植して生垣にもできます。

モチノキは花が咲いたり、実が成るの?

モチノキ(黐の木)は、花を咲かせ、赤い実をつける常緑樹です。特に秋から冬にかけて見られる赤い実が特徴的で、庭木や生垣として人気があります。

ここからは、花が咲く時期と花芽形成時期、実が成る時期についてお伝えします。

花が咲く時期

モチノキの花が咲く時期は、5月~6月頃です。
小さく目立ちにくい花を咲かせます。

■花の特徴は、雄株と雌株が別々に存在する「雌雄異株(しゆういしゅ)」です。
花の色は、淡黄色~黄緑色です。
花の形は、直径4~5mm程度の小さな花です。
雄花は束になって咲き、雌花は葉の付け根に1~3個ずつ咲きます。
雌花には花粉を受粉するための柱頭(ちゅうとう)があり、雄花には雄しべが多数あります。

花芽の形成時期

花芽ができるのは前年の7月~9月頃です。

花芽は当年に伸びた新枝の葉の付け根(葉腋)に形成されます。
翌春の5月~6月頃になると、うまく生育できた花芽が開花します。
秋~冬に強剪定してしまうと、花芽を切り落としてしまい、翌年花が咲かなくなるので注意します。

実が成る時期

■実ができる条件は、雄株は花粉を出すだけで実はならないので、雌株にだけに実がつきます。
近くに雄株がないと受粉ができず、実がなりません。この場合、昆虫や風による自然受粉が必要となります。
赤い実をつける雌株を育てている場合、花が咲く5月~6月頃に剪定しすぎると実がならなくなるため、剪定は最小限にとどめます。

■実の成る時期は、果実の形成が、6月~8月頃に受粉後、青い実が成長します。
果実が赤く熟す時期は、10月~12月頃です。
秋になると青い実が赤く色づき、冬には完全に熟します。
赤い実は長期間枝についたままで、冬の庭を彩ります。

花と実に影響が出る剪定時期について

■花芽形成は、7月~9月頃で、この時期に剪定すると翌年の花が咲かなくなります。
■開花期は、5月~6月頃で、花の時期に剪定すると受粉がうまくいかず、実がつかなくなります。
■結実期は、10月~12月頃で、実を楽しみたい場合は剪定を控えます。

花と実についてのまとめ

モチノキは5月~6月に花を咲かせて、10月~12月に赤い実をつけます。
花芽は前年の7月~9月頃に形成されるため、剪定時期に注意が必要です。
実を楽しみたい場合は、秋や冬に強剪定を避けることが重要です。
雌株だけでは実がならず、雄株が近くにないと受粉できません。
モチノキにはハマキムシやカイガラムシがつきやすく、樹勢を弱めて花芽に影響が出るので、剪定後に消毒すると効果的です。

モチノキの剪定時期

花の咲く時期は4月頃で、花芽の形成時期は、花が咲き終わってすぐの 6月頃に前年枝の葉腋につきます。

開花後に冬を越した2年枝に結実します。

最適な剪定の時期

モチノキ(黐の木)は、光沢のある葉と赤い実が特徴の常緑高木で、生垣や庭木として人気があります。剪定を適切に行なうことで美しい樹形を維持できます。

モチノキの剪定は、以下の2つの時期が適しています。

■12月~2月頃
育ちすぎた木を小さくする強い剪定は、春の芽ぶき前の12月~2月頃であれば、回復が早く良い時期です。
落葉樹のように休眠期がないものの、成長が緩やかになるため、大きく切り詰める強剪定を行うのに適しています。
樹形を高くしたくない場合は、この時期に剪定を行います。

■5月~7月頃
モチノキの剪定時期の適期は、新葉が伸びきった5~7月頃がよく、伸びた枝葉を切りそろえて樹形を整えていきます。
生育が活発な時期なので、軽い剪定や刈り込みが可能です。
伸びすぎた枝を整える「軽剪定」を行い、風通しを良くすると害虫の発生を防げます。

剪定を避けるべき時期

■8月頃の真夏は、暑さで樹木が弱るため、大きな剪定は避けます。
■9月~11月頃に剪定すると新しい芽が出てきて、寒さで傷んでしまうことがあるため注意が必要です。

モチノキの剪定方法

モチノキは芽吹きがよく、剪定にも耐える木なので、主木の場合は散らし玉仕立てにすると風格が出ます。3~5mで芯を止めて円錐形や円筒形に仕立てるのにも向いていて、ずんどう仕立てや列植して生垣にすることも可能です。

若木の頃の剪定は、枝が上向きに発生する傾向がありますので、強い剪定を控え、徒長枝や混み枝を間引く程度にし、仕立て始めるのは樹高2mくらいになり枝が横方向に張り出してからにします。

モチノキは枝葉が密に出るので、混みあった樹形内部の日当たりや風通しを良くする透かすような剪定を心がけ、不要な徒長枝や胴吹き枝を切り取り樹冠内の小枝を間引き、2~3芽新梢を残して切り詰めると小枝が密生しますので、秋にこれを切り樹形を整えていきます。

伸びすぎた枝や混みあった枝を切り取り樹形内部の枝葉を透かしていきますが、枝の切り詰めには注意が必要です。モチノキはどこで切ってもよく芽吹きますが、必ず小枝のあるところで小枝を生かして先端部分を切り捨てます。

大枝を途中でぶつ切りした場合は、切り口周辺から多く出る小枝を生かしますが、たくさん小枝が出たら、伸びが止まったところで3本くらい残してほかは間引きます。そうすることで再び枝先に枝葉が密生し良い姿に整います。

強剪定

「強剪定」の時期は12月~2月頃で、樹形を低くしたり小さくしたい場合に行ないます。その際、樹形を整えるために、枯れ枝や不要な枝を枝元から切ります。

・内向きの枝は、樹冠内が混み合う原因になります。
・交差する枝は、他の枝とこすれ、傷みやすいです。
・長く伸びた徒長枝は、樹形を乱す原因になります。
・枯れ枝や病害虫がついた枝は、樹勢を保つために除去します。
・モチノキは成長が遅めの樹木なので、強剪定は慎重に行ないます。
・一度に切りすぎると、回復に時間がかかるため、毎年少しずつ整えます。
・切り口の径が大きい場合、病気を防ぐために「トップジンMペースト」などの癒合剤を塗布します。

軽剪定

「軽剪定」は、5月~7月頃に行ない、自然な樹形を維持するために行ないます。
伸びすぎた枝や外に飛び出した枝を切り、透かすことで樹形を整えられます。
剪定バサミで、不要な部分を枝の付け根から切ります。
丸い樹形を維持する場合、全体的にバランスを見ながら整えます。

刈り込み剪定

生垣として整えたい場合は、5月~7月頃と9月頃の、年2回ほど刈り込むのが理想です。
刈り込みバサミを使い、全体的に均一な形に仕上げます。
下の部分を広くし、上部をやや狭めにすると、日光が均一に当たりやすくなります。

クロガネモチとモチノキの違い

クロガネモチ(黒鉄黐)とモチノキ(黐の木)は、どちらもモチノキ科モチノキ属の常緑高木で、見た目がよく似ていますが、いくつかの違いがあるので、わかりやすく比較しながら解説します。

樹皮の違い

■クロガネモチ
樹皮の色は、灰褐色でなめらかです。

■モチノキ
樹皮の色は、やや灰色がかり、ザラつきがあります。

クロガネモチは滑らかな樹皮、モチノキは少しザラザラした質感です。

花の違い

■クロガネモチ
開花時期は、5月~6月頃
花の色は、黄白色でやや目立つ
花のつき方は、小さな花がまとまって咲く

クロガネモチの雄花

クロガネモチの雌花

■モチノキ
開花時期は、5月~6月頃
花の色は、黄緑色で目立ちにくい
花のつき方は、小さな花が葉の付け根に咲く

どちらも花は目立たないですが、クロガネモチの花はやや黄白色で見つけやすいです。

葉の違い

■クロガネモチ
葉の形は、楕円形でやや丸みがあり厚みがある
葉の色は、濃い緑色で光沢が強い
葉のつき方は、「対生」(2枚ずつ向かい合って生える)

■モチノキ
葉の形は、やや細長く、薄い
葉の色は、明るい緑色で光沢は少ない
葉のつき方は、「互生」(交互に生える)

・クロガネモチの葉は分厚く光沢が強く、「対生」するのが特徴です。
・モチノキの葉は薄めで光沢が少なく、「互生」します。

実の違い

■クロガネモチ
実の色は、鮮やかな赤色
実の大きさは、約6~8mmとやや大きめ
実のつき方は、密集して多くつく

■モチノキ
実の色は、赤色でややくすんだ色合い
実の大きさは、約4~6mmとやや小さめ
実のつき方は、まばらにつく

クロガネモチの実は少し大きく、たくさん密集してつき、モチノキの実はやや小さく、比較的まばらにつきます。

名前の由来と特徴

■クロガネモチ
「クロガネ(黒鉄)」=葉が鉄のような光沢を持つことが由来とされます。
福を「モチ」帰るとして縁起の良い木とされます。
街路樹や庭木として人気があります。

■モチノキ
樹皮や葉から「鳥黐(とりもち)」という粘着物質を採ることができるため、「モチノキ」の名前がついたとされます。
クロガネモチより成長が遅く、大きくなりすぎないため、生垣にも向いています。

クロガネモチとモチノキの見分け方

■クロガネモチ
葉の付き方は、向かい合う「対生」です。
葉の光沢は、濃い緑でツヤツヤです。
実のつき方は、密集してたくさんつきます。
実の大きさは、6~8mmとやや大きめです。

■モチノキ
葉の付き方は、交互に生える「互生」です。
葉の光沢は、やや明るい緑でツヤ控えめです。
実のつき方は、まばらにつきます。
実の大きさは、4~6mmと小さめです。

・葉が向かい合って生えていてツヤツヤなら「クロガネモチ」で、
・葉が交互に生えていてツヤが控えめなら「モチノキ」です。

どちらも赤い実が美しく、縁起の良い木として人気があります。
実のつき方や葉の形を比較すると見分けられるかもしれません。