はじめに
こんにちは。岩手で庭師をやっているズボラおやじです。今日は「強剪定」についてお話しします。
「庭木が大きくなりすぎたから、思い切って小さくしたい」というご相談は本当に多いです。ですが、この「思い切って」の部分が実は一番危険なところなのです。
強剪定という言葉を聞いたことはあっても、「実際どのくらい切ると強剪定になるのか」「本当に木は枯れてしまうのか」を知らないまま切ってしまい、後で後悔する方をたくさん見てきました。
このページでは、強剪定とは何かという基本から、実際に木が枯れてしまった写真、逆に成功した事例、そして失敗したときのリカバリー方法まで、強剪定に関する悩みをまるごと解決できるようにまとめました。最後まで読んでいただければ、強剪定に対する不安がぐっと減るはずです。
強剪定の特徴を知っておこう
■強剪定ってなに?
庭に木を植えてある以上、きれいに管理するためには木を小さく切らなければいけない場合がありますよね。
剪定には「太い枝や幹を切る強い剪定(強剪定)」と「弱い剪定(弱剪定)」のような切り方があります。
これは、木に与えるストレスの大きさの違いだと私は解釈しています。木を切る程度が強くなるほど、木に大きなストレスを与えて樹勢を弱め、枯れる可能性が高くなります。強剪定の場合、太い枝を切りつめたり、太い枝でなくても相当な量の枝葉を切り取ったりすることで、木に強いストレスを与えることになります。
一番厳しい強剪定は、細い枝を全く残さずに、切り口を見ると太い跡が残る「ずん胴切り」のような切り方です。街路樹などでもよく見られます。
これが「ずん胴切り」を行なった事例で、5m以上あった2本のチャボヒバですが、「枯れてもいいから短くして!」とご依頼があり、承諾を得て作業しましたが、実際に枯れてしまった写真です。
初夏に「ずん胴切り」してから秋までは葉っぱは緑色をしていましたが、やはり茶色に変色しました。
逆に、弱剪定というのは、太い枝と比較するともっと細い枝を、ほどよい程度に剪定することです。毎年マメに伸びた枝葉を切って樹形を維持していく剪定で、樹勢にはほとんど影響しません。
■どのくらいの太さから強剪定になるのか
強剪定といっても、どの程度の太さからが強剪定なのか気になると思います。木によって固さは違いますが、私個人の感覚では、剪定バサミで太刀打ちできない太さ、つまりノコギリを使わないと切れない「3cm~5cm」より太い部分を切ることが、強剪定の範囲に入ると考えています。
■強剪定をするとどうなるのか
樹勢がよい木であれば、強剪定を行なったとしても、切り口を塞いで枯れを防ぐ作用が働きます。しかし樹勢や切り方によっては、これがうまく働かない場合があります。その場合、枝が1本だけ枯れて済めばよいのですが、最悪の場合は木全体が枯れてしまいます。
すでに病原菌に侵されていたり、樹齢が古くて樹勢が弱っている木を切ったり、時期を間違って強剪定してしまうと、木に非常に強いストレスを与えてしまい、枯れる可能性は非常に高くなります。特に一気に切り詰める強剪定は、枯れる可能性がだいぶ高くなります。
太い枝を切るということは、人間に例えると腕や足の切断、大きな外科手術をするようなものです。木は物を申しませんが、それだけ大きな負担がかかっていることを知っておいてください。
強剪定の時期
■落葉樹の場合
落葉樹であれば、一般的に休眠期である葉っぱが落ちた冬期に行なうと、樹勢への影響が少なくなります。
落葉樹は夏場、光合成によって作られた炭水化物で「カルス」と呼ばれる組織が作られ、切り口に注がれます。この「カルス」が切り口を塞いで腐朽菌が入らないようにする作用がありますが、余計な樹勢を切り口に使ってしまいます。
特にカエデやモミジ類、ナナカマドやナツツバキなどは、切り口が大きいと菌が入って腐る可能性が高くなりますので、できれば強剪定は冬期のみに留めておくか、強剪定しないようにマメに伸びた枝葉の分を剪定することをおすすめします。
太い枝を切り取ったら、癒合材(保護剤)を塗っておくことをおすすめします。
■常緑樹・針葉樹の場合
常緑樹や針葉樹の場合は、樹勢に関わらず夏場だろうが冬場だろうが、強剪定をすると高い確率で枯れる可能性が高くなりますので、あまりおすすめはしません。寒くなる頃の秋以降に行なう通常の剪定も枯れやすいのでやらない方がよいです。
常緑樹や針葉樹の場合は、太い枝を切らなくても枯れる可能性はあるので、一気に強剪定はせず、少しずつ毎年時間をかけて細い部分から様子をうかがいながらだんだんと切り戻し、太い枝に達する前でやめておいた方がよいです。私も過去に何度か常緑樹の強剪定で枯らせた経験があるので、おすすめはできません。
強剪定の方法
■切る位置(ブランチカラー)
もし強剪定をするとなった場合の枝を切る位置ですが、「ブランチカラー」と言われる、幹から枝が出るあたりで、幹から枝先に向かって膨らみ(太さ)が少ししぼんだと思われる箇所(目立たない場合もあります)があります。
幹から枝先に少し向かった膨らみが、枝と同じ太さに細くなったその部分(青線)で切るのがよいです。
この部分(青線)で枝を切り落とすと、下の写真のように「カルス」による防御で腐朽菌が入りにくくなります。
切り口部の枝の長さがちょうどよい長さで切らないと、次の画像のように、防御をするのに都合が良い「カルス」は作られないのです。
また、太くて長い枝を切る場合は、一度に切ろうとすると枝の重量があるので、切った枝や樹皮ごと幹まで達して裂けてしまい、そこから腐れが入ってしまうことがあります。太い枝は一度に切り落とさず、少し離れた場所で軽くしてから、最後にブランチカラーの位置で仕上げるようにしてください。
■強剪定後の良い事例
強剪定後どうなったのか、成功した良い事例を見てみましょう。太い枝を切ったその外周を「カルス」が覆っていき、保護できていれば成功です。
■強剪定後の悪い事例(場所・切り方)
今度は成功しなかった悪い事例を見てみましょう。枝が長すぎるために、太い枝を切ったその外周を「カルス」が巻き込めなかったのです。先ほどの良い事例と比較してみてください。
■時期による違いの比較事例
暑い夏場に強剪定を行なった場合、体験上「カルス」を作って木の切り口を細菌から守ろうとします。逆に、落葉後の冬場に強剪定を行なった場合、「カルス」は葉っぱから光合成として作られた炭水化物なので、落葉後の休眠期にはできにくいようです。
枝を長く残して強剪定を行なった場合の、夏場と冬場(落葉後)の違いを比較してみてください。
■暑い夏場に、枝を長く残して強剪定を行なった場合
■落葉後の冬場に、枝を長く残して強剪定を行なった場合(カルスが形成されない)
失敗した時のリカバリー
多くの方が強剪定のサイトを見る理由は、「切ってしまってから不安になったから」だと思います。ここでは実際に失敗したときの対処法をお伝えします。
■ずん胴切りをしてしまい、葉が茶色くなってきた場合
先ほどの写真のように、初夏は緑色でも秋にかけて茶色く変色してくることがあります。ここまで進行してしまうと、残念ながら元に戻すのは難しいです。ただし、木全体がすぐに枯れるとは限りません。まずは水やりを絶やさず、肥料を控えて木の体力を温存させ、翌春に新芽が出てくるかどうかを見守ってください。新芽が出れば、そこから樹形を作り直すことができます。
■太い枝を切ったところから腐れが入ってきた場合
切り口の周りが黒っぽく変色したり、木くずのようなものが出てきた場合は、腐朽菌が入り込んでいるサインです。この場合、無理に削ったり薬剤を厚く塗ったりせず、まずは切り口を乾燥させることを優先してください。腐れの範囲が広がっているようであれば、その枝から先を思い切って切り落とし、健康な部分を守ることを優先しましょう。
■時期を間違って強剪定してしまった場合
「夏に太い枝を切ってしまった」「常緑樹なのに強く切ってしまった」という場合は、すぐに追加の剪定はせず、しばらく木の様子を見てください。葉の色や新芽の伸び方に異常がなければ心配いりませんが、葉が急に落ちてきたり、幹の色が変わってきたりした場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
病害虫対策
強剪定と病害虫は切っても切れない関係にあります。太い枝の切り口は、虫や菌にとって「入り口」になりやすいからです。
■切り口から入り込みやすい害虫
太い枝の切り口は、カミキリムシなどが卵を産みつける場所になりやすいです。切り口付近におがくずのようなものが出ていたら、内部に幼虫が入り込んでいるサインです。見つけた場合は専用の薬剤を注入して駆除します。
■強剪定後にかかりやすい病気
切り口から腐朽菌が入ると「腐朽病」が進み、木の内部がスカスカになってしまうことがあります。これは外から見ただけではわかりにくいため、切り口の状態を定期的にチェックすることが大切です。癒合材をきちんと塗っておくことが、一番の予防策になります。
■早期発見のサイン
・切り口の周りが黒く変色している
・切り口付近から樹液がにじみ出ている
・幹に穴やおがくずが見られる
・葉の茂りが例年より明らかに少ない
これらのサインに気づいたら、早めに対処することで被害を最小限に抑えられます。
おすすめの道具
強剪定では、太い枝を切るための道具選びがとても重要になります。
■剪定バサミ
強剪定の前段階で、細い枝を整理する際には切れ味の良い剪定バサミが欠かせません。私がおすすめしているのは「おの義(推奨)」の剪定バサミです。刃の噛み合わせが良く、細い枝もスパッと切れるので、余計な負担を木に与えずに済みます。
■ノコギリ
太い枝を切る強剪定では、ノコギリが主役になります。太さや樹種に合わせて、目の粗さが違うノコギリを使い分けるのがプロのやり方です。太い枝には目の粗いタイプ、細かい仕上げには目の細かいタイプを使うと、切り口がきれいに仕上がります。
■道具の手入れ
強剪定では樹液や木くずが刃にたっぷり付着します。作業後はそのままにせず、乾いた布で拭き取り、汚れがひどい場合は薄めた中性洗剤で洗います。水分が残っているとサビの原因になるので、しっかり乾かしてから、椿油などを薄く塗って保管すると長持ちします。切れ味の悪い刃で太い枝を切ると、切り口が荒れて腐れの原因になりますので、こまめな手入れが本当に大切です。
【忙しい人向け】15分でできるズボラ強剪定チェック
強剪定は本来じっくり時間をかけるべき作業ですが、「まず様子を見たい」という方向けに、私がよくやる時短チェックをご紹介します。
①明らかに枯れている枝、折れそうな枝だけを先に切る
②建物や電線にかかっている枝だけを優先して切る
③それ以外の太い枝は、この日は切らずに「切る場所」に印をつけるだけにしておく
強剪定は一気にやろうとせず、まずは危険な枝の処理と計画づくりだけでもOKです。太い枝を切る作業は、時間と気持ちに余裕があるときにゆっくり取り組むのがズボラなりのコツです。
プロのホンネ:自分でやる限界と業者に頼む目安
■高さの目安
高さが3メートルを超える木の強剪定は、素人には非常に危険です。太い枝を切る作業は、脚立の上でのバランスも悪く、枝の落下による事故も起きやすいです。命に関わることですので、高い場所や太い枝の剪定は迷わずプロに依頼してください。
■すぐにプロを呼ぶべき状態
・幹の中心部が腐っている、または空洞になっている
・大きな枝が枯れて落下しそうになっている
・電線や隣家の建物に太い枝がかかっている
・すでに一度失敗していて、木全体が弱っている
こうした状態は、見た目以上に木の内部が深刻なダメージを受けている可能性があります。無理に自分で対処しようとせず、早めに植木屋に相談することをおすすめします。
ゴミの処分とマナー
■太い枝の処分方法
強剪定では、普段の剪定よりもずっと太くて重い枝が大量に出ます。自治体によっては、一定の太さ以上の枝は「粗大ゴミ」扱いになることもあるので、事前に自治体のルールを確認しておくことが大切です。
ズボラ流のコツとしては、太い枝はノコギリでできるだけ短く輪切りにしておくことです。長いままだと収集してもらえないことが多いですし、運ぶのも大変になります。細い枝葉は指定サイズに合わせて束ね、太い枝とは分けて出すとスムーズです。
■ご近所トラブルを避けるマナー
強剪定は普段の剪定よりも見た目の変化が大きいため、事前にご近所へ一声かけておくことをおすすめします。「少し大きく切りますので、音や枝の落下にご注意ください」と伝えるだけで、印象は大きく変わります。
作業前にシートを敷いておくと、切った枝葉がお隣の敷地に落ちるのも防げますし、大きな音が出る作業は、できるだけ日中の早い時間帯に済ませるよう心がけると、トラブルを避けやすくなります。
よくある質問Q&A
Q. 強剪定をすると必ず木は枯れますか?
A. 必ず枯れるわけではありませんが、樹種や時期、切り方によって枯れるリスクが大きく変わります。特に常緑樹や針葉樹は枯れやすいので注意が必要です。
Q. 強剪定はどのくらいの頻度でやってもいいですか?
A. 強剪定は木への負担が大きいため、毎年行うものではありません。数年に一度、様子を見ながら行うのが基本です。
Q. 太い枝を切った後、癒合材は必ず塗るべきですか?
A. 必須ではありませんが、腐朽菌の侵入を防ぐ効果が期待できるので、太い切り口には塗っておくことをおすすめします。
Q. 強剪定した年は花や実がならなくなりますか?
A. 花や実をつける木の場合、強剪定をした年は木がエネルギーを回復に使うため、花付きや実付きが悪くなることがあります。
Q. 一度に全部切らず、数年かけて切ってもいいですか?
A. むしろその方がおすすめです。木への負担を分散させながら理想の樹形に近づけることができます。
Q. 切った枝の太さはどうやって測ればいいですか?
A. 専用のメジャーがなくても、身近な物と見比べる方法で十分です。ペットボトルのキャップくらいの太さか、それより太いかを目安にすると判断しやすいです。
Q. お神酒(おみき)をあげてから切るべきですか?
A. 必須ではありませんが、気持ちの問題として行う方もいます。ご自身が安心できるならぜひ行ってください。
Q. 強剪定した後、木が弱っているかどうかはどこで見分ければいいですか?
A. 翌年の新芽の量や伸び方、葉の色を観察してください。例年と比べて明らかに少なかったり、色が悪かったりする場合は注意が必要です。
以上、強剪定について、木がどうなるのか、いつどこで切ればよいのかを一通りお話ししました。強剪定はできるだけ避け、毎年マメに手入れをしておくことが、木を元気に長く育てる一番の近道です。もしどうしても強剪定が必要になった場合は、この記事を参考に、時期と切る位置に気をつけて挑戦してみてください。

