はじめに
こんにちは。岩手で庭師をやっているズボラおやじです。今日は「剪定作業中に中断したほうがよいこと」についてお話しします。
剪定というと、どこをどう切るかという技術面ばかりに目がいきがちですが、実は現場で一番大事なのは「危険を感じたらすぐに作業をやめる判断力」です。剪定中は自然現象や生き物との予期せぬ遭遇が本当によく起こります。それを予測して自分の命を守ることも、剪定作業のうちのひとつだと私は考えています。
このページでは、私が22年以上の現場経験の中で「これは危ない、中断すべきだ」と実感してきたベスト3を中心に、それぞれの具体的な対処法、失敗してしまった場合のリカバリー、道具の選び方まで、まるごとお伝えします。最後まで読んでいただければ、安全に剪定を楽しめるようになるはずです。
剪定作業を中断すべき危険の特徴
■なぜ「中断する判断力」が必要なのか
剪定は木を美しく整える作業ですが、屋外での作業である以上、天候や生き物といった自分ではコントロールできない要素が必ず絡んできます。多くの方は「せっかく始めたのだから最後までやりたい」という気持ちが先立ち、多少の異変があっても作業を続けてしまいがちです。
ですが、剪定作業中に起こる危険は、命に関わるものが少なくありません。三脚から落ちて頭を強打したり、骨を折って動けなくなってしまったりする方は、決まって「自分は大丈夫」と思い込んで危険サインを無視した方が多いのです。
■危険度で見る3つのタイプ
私が現場で気にしている危険は、大きく分けると「自然現象」「飛来する生き物」「木に住む生き物」の3タイプです。それぞれ危険の性質が違うので、対処法も変わってきます。自然現象は予測しづらく突然襲ってくるタイプ、飛来する生き物は事前の確認で防げるタイプ、木に住む生き物は倫理的な配慮も含めて判断すべきタイプ、という違いを知っておくと、現場での判断がスムーズになります。
中断すべき危険・第1位:カミナリ
■アルミ三脚と雷の危険な関係
私が剪定作業をしている時に一番怖いと感じているのは「カミナリ」です。
高木の剪定ではアルミ三脚を使うことが多いのですが、このアルミ、実はめちゃくちゃ電気を通します。アルミニウムは通電性の面で優れた特性を持つ金属です。銅と比較すると電気伝導率自体は銅の方が優れていますが、銅と同じ重量のアルミに電気を流した場合、銅の2倍の電流を通すことができます。つまり、重さあたりで見れば銅の2倍の通電性があるということになります。
私が昔、測量の仕事をしていたころ、アルミスタッフというものを使っていました。
線路沿いで作業している時に「絶対にレールにスタッフを立てるな」と言われ、慎重に作業していたことがあります。それはなぜかというと、詳しい原理はわかりませんが、通電性の関係で電車が止まってしまうからです。
それを考えると、アルミ三脚を使って高木の作業をしている時に「カミナリ」が鳴ったら、特にカミナリが近づいてきたら、絶対にやめた方がいいです。それに、剪定バサミも金属ですから、もしかしたらダブルで恐ろしい目に遭う可能性だってあります。
■雷が鳴ったらどうするか
カミナリは自然現象で起こりますが、大気の状態が不安定になることが多い年には頻繁に起こりますし、全く起こらない年もあります。もし作業中に遠くで雷鳴が聞こえたら、それだけで作業を中断する合図だと思ってください。近づいてくるかどうかを見極めようとせず、聞こえた時点で三脚から降り、金属製の道具からも離れることが大切です。
雷が近づいてきたと感じたら、できるだけ早く建物の中に避難してください。木の下で雨宿りをするのも、実は落雷の危険があるため避けるべき行動です。死にたくなかったら、作業を止めて様子を見た方がよいですよ。
中断すべき危険・第2位:ハチ類
■暑い夏は特に注意が必要
剪定作業時に恐ろしい事の第2位は、暑い夏に特に注意しなければいけない、飛んでくる害虫、ハチ類です。
アシナガバチやスズメバチ類は、絶対にいるものだと覚悟して剪定に入ることが基本です。そのために、長い棒や長いほうきなどで枝葉を「ちょんちょん」と軽く払ったりして存在を確認しながら先に進む作業が必要です。何もしないで枝葉密集地帯にいきなり入ることは無謀です。
■一度払っただけでは安心できない理由
たまにあるのですが、一回払って、いないと確認したとしましょう。でも、ハチはいつも巣にいるとは限らず、餌探しなどで外出中のことがあるので、再び同じ場所を通る場合でも安心はできません。だから一回払ったくらいでは足りないのです。
その場所を通る時には、毎回払いながら通る習慣をつけた方がよいです。私は22年間のうちで1回しか刺されませんでしたが、その一度とは、払い方を1回怠った時なんです。この方法は意外とスズメバチの存在にも気づけますし、私はこの方法でスズメバチに3回出会って、すべて対処しています。スズメバチは意外なところにも巣を作りますから、行動に気を付けながら巣がどこにあるのか調べて、数が増えないうちに対処した方がよいです。
■ハチ対策の具体的な方法
作業前には、長袖・長ズボンを着用し、肌の露出をできるだけ減らしておくことが基本です。黒っぽい服はハチを刺激しやすいと言われているので、明るい色の作業着を選ぶこともおすすめします。整髪料や香水など強いにおいのするものも、ハチを引き寄せる原因になるので避けてください。
巣を発見した場合、小規模で自分で対処できそうなものであれば、市販のハチ用殺虫スプレーを離れた場所から噴射して駆除する方法があります。ただし、スズメバチの巣が大きい場合や、高い場所にある場合は、無理をせず専門の駆除業者に依頼することを強くおすすめします。
中断すべき危険・第3位:鳥の巣
■作業中に鳥の巣を見つけたら
剪定時にこれに遭遇する可能性は低いかもしれませんが、私は年に1回はあります。それは、木の枝葉の中に鳥が巣を作っていることです。雛がいる時もあります。
観察していると「自然だなぁ」と思ったり、小さかった雛が数日経つと大きくなっていて巣の中に窮屈に収まっていたり、木から降りて巣立つまでの成長を見れるのも面白いものです。
そんな鳥の巣を発見した時は、私は剪定作業を中断して三脚を降り、様子を見ます。だって、どんな鳥なのかわからないじゃないですか。
■親鳥の警戒心と危険性
小型の鳥だとかなり警戒しているので、親鳥が近くにいたとしても、どこかでこちらの様子をうかがってなかなか巣には近づいてきません。大型の鳥に出くわしたことはありませんが、大型の場合でも一度は警戒するかもしれません。場合によっては襲ってくるかもしれませんが、あのとんがった口ばしで突っつかれたらたまったものではありません。それだったら、襲われるかもしれないことを想定して、一度様子を見ることをおすすめします。
中断するというより、鳥のことを思える人間であれば、雛が巣立ったり、すっかり鳥が来なくなるまで、その木の剪定はやめた方がよいと思います。巣を振り落とすとか落とさないは、その人しだいということになります。
遭遇してしまった時のリカバリー
多くの方が心配しているのは、「もし危険なものに遭遇してしまったら、どう対処すればいいのか」だと思います。ここでは実際に遭遇してしまった場合の対処法をお伝えします。
■ハチに刺されてしまった場合
もしハチに刺されてしまったら、まずは落ち着いてその場から静かに離れてください。慌てて振り払ったり大声を出したりすると、他のハチを刺激してしまう可能性があります。刺された箇所は毒を絞り出すように水で洗い流し、冷やしてください。
特にスズメバチに刺された場合、2度目以降の被害でアナフィラキシーショックという重い症状が出ることがあります。呼吸が苦しい、じんましんが広がる、めまいがするなどの症状が出た場合は、様子を見ずにすぐに救急車を呼んでください。
■雷が近づいてきて逃げ遅れた場合
もし作業中に急に雷が近づいてきてしまった場合は、すぐに三脚や金属製の道具から離れ、できるだけ姿勢を低くして、建物や車の中に避難してください。木のそばにいる場合は、木からも4メートル以上離れることが推奨されています。
■三脚から落ちてしまった場合
万が一三脚から落下してしまった場合、頭を打った、意識がもうろうとする、体のどこかが動かせないといった症状があれば、無理に立ち上がろうとせず、その場で安静にして誰かに助けを呼んでください。骨折の疑いがある場合、無理に動かすとかえって悪化させることがあります。
ハチ対策の道具
■剪定バサミ
ハチの存在を確認する際、長い柄のついた道具があると安全に作業できます。剪定作業自体で使う剪定バサミは、私がおすすめしているのは「おの義(推奨)」の剪定バサミです。刃の噛み合わせが良く、細い枝もスパッと切れるので、ハチの巣がある場所を素早く安全に処理する際にも役立ちます。
■ノコギリ
ハチの巣がついた太い枝を切り落とす必要がある場合はノコギリを使います。作業は必ずハチがいないことを確認してから、できるだけ短時間で終わらせるようにしてください。
■ハチ払い用の長い棒とほうき
枝葉の中にハチがいないか確認するための長い棒や長いほうきも、実質的な必需品です。柄が長ければ長いほど、自分とハチの巣との距離を保てるので安全性が高まります。専用品でなくても、家にある古いほうきの柄などで代用できます。
■道具の手入れ
剪定バサミやノコギリは、使ったらそのままにせず、必ず手入れをしてください。作業後は刃を乾いた布で拭き、汚れが強い場合は薄めた中性洗剤で洗います。水分が残っているとサビの原因になるので、洗った後はしっかり乾かし、椿油などを薄く塗って保管すると長持ちします。
【忙しい人向け】15分でできるズボラ安全チェック
完璧な安全対策を毎回するのは大変だという方向けに、私がよくやる時短チェックをご紹介します。
①作業を始める前に空を見上げて、雲の様子と天気予報を確認する
②木に近づく前に、長い棒で外側の枝を軽く払ってハチの気配を確認する
③枝葉の中を覗いて、鳥の巣らしきものがないかざっと目視する
この3ステップだけでも、危険を大きく減らすことができます。特に天気の確認と最初のハチ払いは、どんなに忙しくても省略しないことをおすすめします。
プロのホンネ:自分でやる限界と業者に頼む目安
■高さの目安
高さが3メートルを超える木の剪定は、素人には危険です。特に高所での作業中に雷やハチに遭遇すると、慌てて降りようとして転落する事故が起きやすくなります。命に関わることなので、高い場所の剪定は迷わずプロに依頼してください。
■すぐにプロを呼ぶべき状況
・スズメバチの巣が大きく、自分では手に負えない
・木の高い場所に鳥の巣があり、剪定自体を延期できない事情がある
・過去にハチに刺されてアレルギー症状が出たことがある
・雷が多い地域で、安全に作業できる時間帯が限られている
こうした状況は、無理に自分で対処しようとせず、早めに植木屋や駆除業者に相談することをおすすめします。
作業後の片付けとご近所への配慮
■ハチの巣を駆除した場合の処分
駆除したハチの巣は、そのまま放置せず、しっかり密閉できる袋に入れて処分してください。中に生き残ったハチがいることもあるので、袋の口はしっかり縛ることが大切です。自治体によって処分方法が異なる場合があるので、事前に確認しておくと安心です。
■ご近所への配慮
ハチの巣を見つけた場合、自分の敷地内だけでなく、お隣の敷地に近い場所にも巣がないか気を配ることをおすすめします。もしお隣の木にもハチが飛んでいるようであれば、「うちでハチの巣を見つけたので、念のためお伝えしておきますね」と一声かけておくと、トラブルを未然に防ぐことができます。
よくある質問Q&A
Q. 曇り空でも雷は来ますか~
A. 積乱雲が発達しやすい夏場は、晴れていても急に雷雲が近づいてくることがあります。空の色や風の変化に敏感になっておくことをおすすめします。
Q. アルミ三脚は本当に雷が落ちやすくなりますか~
A. 金属は電気を通しやすい性質があるため、雷が鳴っている状況での使用は避けるべきです。雷が近づいたらすぐに作業を中断してください。
Q. ハチに刺されないための服装のコツはありますか~
A. 長袖・長ズボンで肌の露出を減らし、明るい色の服を選ぶことがおすすめです。黒っぽい服や香りの強いものは避けてください。
Q. 鳥の巣を見つけたら必ず剪定をやめるべきですか~
A. 絶対ではありませんが、雛がいる場合は巣立つまで剪定を控えることをおすすめします。親鳥のストレスや、思わぬ攻撃を避けるためです。
Q. お神酒(おみき)をあげてから切るべきですか~
A. 必須ではありませんが、気持ちの問題として行う方もいます。ご自身が安心できるならぜひ行ってください。
Q. スズメバチとアシナガバチ、どちらが危険ですか~
A. 一般的にスズメバチの方が攻撃性が高く、毒性も強いとされています。どちらも刺されると危険なので、見つけたら慎重に対応してください。
Q. 剪定は何人で行うのが安全ですか~
A. 高所作業を伴う場合は、できれば一人ではなく二人以上で行い、地上で見守る人がいると安全性が高まります。
Q. 熱中症も中断の対象になりますか~
A. もちろんです。おなかが減った時や気分が悪くなった時も、無理せず作業を中断することが大切です。
以上、剪定作業中に中断したほうがよいことについて、雷・ハチ・鳥という3つの危険と、その対処法を一通りお話ししました。剪定は技術も大事ですが、それ以上に「危険を感じたらすぐにやめる」という判断力が命を守ります。ぜひこの記事を参考に、安全第一で剪定作業に取り組んでみてください。

